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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H24.05.29東京地裁判決

2013年6月18日 公開

平成23年(ワ)第38990号、第41357号損害賠償請求事件、不当利得返還等反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 井出弘隆

【事案の概要】
 行政書士への在留資格に関する申請書類の作成等の委任契約を解除したことによる報酬の返還請求。いったん納入された料金については理由の如何を問わず返還しない旨の特約が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、一部について返還を命じた。
① 本件不返還条項は、委任者が本件委任契約を解除した場合における損害賠償の予定又は違約金を定める趣旨のものと解することができ、9条1号にあたる。
② 本件における「平均的な損害」とは、本件事務と同種の書類作成等の事務を行政書士に委任した依頼者がこれを解除することによって当該行政書士に一般的、客観的に生ずると認められる損害をいう。
③ 本件では、既払い報酬10万5000円のうち、平均的損害は1万円を超えないとして、9万5000円の返還請求を認めた。
④ なお、10条と9条1号の関係について、9条1号によって無効とならない部分が、10条にいう「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しないことは明らかであり、同条適用の要件を欠くものというべきとした。

◆ H24.08.27東京地裁判決

2013年6月15日 公開

平成22年(ワ)38688号損害賠償等請求反訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前澤功

【事案の概要】
 建物賃貸借契約についての敷金返還等請求。契約終了日までに明け渡さない場合、終了日の翌日から明渡完了の日まで賃料等相当額の倍額を支払うとの合意が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 建物の貸主に生ずべき平均的な損害の額は賃料の限度と推認でき、これを超える損害が生じることを窺わせる特別な事情も見当たらないから、合意のうち月額40万円(1カ月の賃料)を超える部分は9条1号により無効であるとして、敷金から控除する金額の一部を否定し返還請求を認めた。

◆ H24.09.18東京地裁判決

2013年6月7日 公開

平成24年(レ)第547号キャンセル料請求差止め請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 三村晶子、大嶋洋志、行川雄一郎

【事案の概要】
 会社の従業員(控訴人)が、会社が締結している福利厚生サービス会社(被控訴人)が提供する、提携ホテル割引サービスを利用して、提携ホテルの宿泊予約をしたが、宿泊予定日の7日前にキャンセルしたところ、被控訴人からキャンセル料として宿泊料金の50%を請求されたもの。9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、9条1号にはあたらないとして、キャンセル料の請求を認めた。
① 本件キャンセル料の契約当事者は控訴人と福利厚生サービス会社(被控訴人)であり、ホテルではない。事業者が消費者契約法の適用を免れる目的で消費者との間に形式的第三者を介在させたというような特段の事情があれば格別、単に事業者が広く顧客を獲得するために他の事業者と提携をしたというだけでは、その両者を一体として消費者契約法上の事業者にあたると解することはできない。
② 福利厚生サービス会社(被控訴人)とホテルとの間でのキャンセル料の取り決めがあり(これ自体は消費者契約法の適用はない)、控訴人が被控訴人に支払うとされるキャンセル料とは連動しており、ことさらに被控訴人独自に高額のキャンセル料を定めたものではないから、そのまま平均的損害と認められる。
③ なお、本件ホテルが隣接するテーマパークの知名度や人気の高さから、宿泊予定日の7日前にキャンセルがされたとしても宿泊予定日までに新たな宿泊予約が行われる可能性が高いこと、他の著名なホテルでは2日前より前にはキャンセル料の支払い義務の定めがないことからは、ホテルに生じる平均的損害の額については50%を相当程度下回るのではないかとの疑念があり、直接ホテルと宿泊予約をした場合には9条1項の関係で問題となる余地がないではない。しかし、控訴人はホテルと直接契約をしたものではなく、ホテルと被控訴人との契約は消費者契約ではないからホテルと被控訴人との間のキャンセル料特約は消費者契約法によって無効となることはないし、他にこれが無効であることを伺わせる事情はない。そして、本件宿泊予約にかかる契約の当事者が控訴人と被控訴人で有り、被控訴人がホテルに本件キャンセルにかかるキャンセル料の支払義務を負う以上、本件キャンセル料規程が9条1号により無効ということはできない。

◆ H24.10.16東京地裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ワ)第15640号売掛金請求事件
ウェストロー・ジャパン
裁判官 杉山順一

【事案の概要】
 ホストクラブ経営者から顧客への飲食代金請求。原告が飲食等の提供にあたり独身である旨の虚偽の事実を告知し被告との間で性的関係を持ち、これにより被告が来店し顧客となることが原告との交際に有意義であることを誤信させたことが不実告知にあたるとして契約を取り消すなどと争われた。

【判断の内容】
 ホストクラブは女性の遊戯場的な飲食店であり,その営業内容からして,ホストと客が真剣に交際することや結婚するに至ることが予定されているものでないことは明らかであるから,本件飲食等提供契約において,ホストである被告が独身か否かはそもそも重要事項に当たると認めることはできないとして、不実告知による取消を否定した。

◆ H24.08.08半田簡裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ハ)第313号損害賠償等請求事件
名古屋消費者信用問題研究会HP同HP(PDF)
裁判官 鈴木章夫

【事案の概要】
 建物賃貸借契約(「資金礼金ゼロ」物件)につき、「敷金礼金」は不要であったものの「内装工事費負担金」名目で、入居時に金員を徴収した。「内装工事負担金」は、入居時に賃借人に内装工事費を負担させるものであったが、退去時にも賃借人は原状回復費用を支払わされた。内装工事費負担金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、内装工事負担金から原状回復費用(一部)を差し引いた残額について返還請求を認めた。
① 本件内装工事費特約は、賃借人が本件建物に入居するにあたって施工された内装工事に要した費用の一部を賃借人に負担させるものである。
② 本件賃貸借契約では、賃貸借契約終了による本件建物明け渡し時、賃借人の故意又は重過失による原状回復費用があれば、賃貸人は賃借人に対しその原状回復費用を請求することができるとされており、内装工事費負担金をもって清算することは予定されていない。
③ とすれば、本件内装工事費特約は、賃貸借契約の目的物である建物を使用収益させる義務を負っている賃貸人が負担すべき費用の一部を賃借人に負担させるものであり、消費者の義務を加重し、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであって、10条により無効と解するのが相当である。

◆ H24.08.22神戸地裁判決

2013年6月1日 公開

平成22年(レ)第275号、平成23年(レ)第385号敷金返還請求控訴同附帯控訴事件
消費者法ニュース94号362頁
裁判官 工藤涼二、末永雅之、今野智紀
第1審 神戸簡裁平成21年(ハ)第13822号

【事案の概要】
 アパート(賃料月8万円)の賃借人が、明け渡し後、賃貸人に対して、敷金80万円の返還請求をしたところ、50万円の敷引特約があること等を理由としてその支払いを拒んだ事案。

【判断の内容】
 本件敷引特約が10条により無効であるとして、返還請求を認容した原判決を維持した。
① 居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、契約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。本件敷引特約はそうであり、10条前段要件を満たす。
② 後段要件については、平成23年7月12日最高裁判決と同様の判断基準を示しつつ、本件では、(1)敷引額が賃料月額8万円の6.25倍であること、(2)賃借人退去後の補修費用は9万8175円であること、(3)賃貸期間は2年半あまりであること、(4)賃料が近傍同種の物件の賃料相場と比較して大幅に低額といった事情はないことから、本件敷引特約は、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって10条により向こうと解するのが相当。

◆ H24.05.17福岡地裁八女支部判決

2013年6月1日 公開

平成22年(ワ)第137号、平成23年(ワ)第89号損害賠償請求事件
消費者法ニュース94号357頁
裁判官 秋本昌彦

【事案の概要】
 興信所と調査委任契約を締結した原告から興信所に対する不法行為による損害賠償請求。
 原告が興信所との調査委任契約(基本料金210万円)の2日後に解約を申し出たのに、着手後の解約の場合には一切返金に応じないことを内容とする不返還条項を理由に、被告が返金に一切応じず、返金がない以上契約を継続した方がよいと申し向けたため、原告が契約解除を撤回したことについて、不返還条項が、解除権を不当に制限するものであり10条にあたるか、違約金等条項であり9条1号にあたるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、基本料金210万円のうち、平均的損害を超える部分170万円については無効であり、当該部分について不法行為が成立するとして、損害賠償請求を認めた。
① 本件不返還条項は、直接解約を制限するものではないほか、調査に係る契約締結後に、依頼者が自己の意向にそぐわない結果となった場合等にこれを理由に解約がなされた結果、被告会社が損害を被ることを防止する等の目的を有するものと認められ、調査業務の進展状況や、案件の内容等如何では、必ずしも消費者の利益を一方的に害するとまでは断じがたく、調査中との場合、成功報酬の支払いは省いていることも踏まえると、10条により無効とすべきとまではいえない。
② 本件契約では調査料金については成功報酬が定められておらず基本料金のみで210万円と設定された結果、調査が着手されてしまうと、その着手後数日しか経過していないような場合であっても、その全額が返還されないこととなるが、これは1年の調査期間内において、主に聴き取り調査を実施することを前提に、定められた調査料金全額を解除に伴う損害賠償の額と予定するもの又は違約金として定めるものといえ、事業者に生じる平均的損害を超えるものといえ、当該超過部分については、9条1号により無効となると解する。
③ 本件不返還条項においては、解約の時期や解約事由に応じた区分はされていないところ、諸般の事情から、本件においては40万円を当該平均的損害額とするのが相当であり、210万円から40万円を控除した170万円の返還を認めない部分については無効である。
④ 被告は本件不返還条項の一部が無効であるにもかかわらず、原告からの解約申し入れに対し、これとは異なる説明をして、原告にその旨誤信させ、解約を断念させ、原告の解約する権利を違法に侵害したものであるとして、弁護士費用1割(17万円)を加えて、不法行為による損害賠償請求を認めた。

◆ H25.04.26京都地裁判決

2013年5月27日 公開

平成23年(ワ)第3426号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
京都消費者契約ネットワークHP(PDF)消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ベストブライダル

【事案の概要】
 適格消費者団体が、結婚式場等の企画、運営等を業とする被告に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で、キャンセル料条項が、9条1号により無効であるとして、上記契約条項を内容とする意思表示の差止め等を求めた事案。

【判断の内容】
 請求棄却。
① 本件キャンセル料条項は、9条1号にいう違約金等条項にあたる。
② 平均的損害の算定方法について、9条1号は、民法第416条を前提としその内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものであるから、本件契約の解約に伴う被告の平均的損害についても、解約に伴う逸失利益(得べかりし利益)から、再販売(被告が他の顧客との間で本件契約を締結し、ほぼ同一の日時、場所で挙式披露宴を実施したような場合)により塡補される利益及び解約により支出を免れる経費を控除することにより算定すべきである。
③ 具体的には、(1)本件契約における平均実施金額(挙式披露宴実施代金の平均額)を基礎として、同金額から、(2)同金額と被告の利益率から算出される、解約に伴い被告が支出を免れる経費の額、及び(3)被告の非再販売率から算出される、再販売により填補される利益の額を控除する方法により、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期において解約された場合に、被告に生じる平均的損害の額を算定し、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期におけるキャンセル料の額を、各個別料金項目(会場使用料、ウエディングケーキ代等)の上記平均実施金額に占める平均的割合を用いてその値を算出するなどして算定した上で、同キャンセル料について、各解約時期において解約がされた場合に被告に生じる上記平均的損害の額を上回るかどうかを検討し、いずれも同損害の額を超えるキャンセル料を定める条項とはいえないとした。

◆ H24.11.27高松高裁判決

2013年5月9日 公開

平成24年(ネ)第339号解約金返還請求控訴事件
判例時報2176号33頁
裁判官 小野洋一、池町知佐子、大嶺崇
第1審 H24.5.30高松地裁判決

【事案の概要】
 携帯電話会社(エヌ・ティ・ティ・ドコモ)との携帯電話利用契約締結について、割引サービスにおける解約金の説明が不利益事実の不告知にあたるとして契約の取消、解約金の返還請求をした事案。請求を棄却した第1審に対する控訴審。

【判断の内容】
4条2項による取消を否定し、控訴棄却。
① 契約の際に交付されたガイドブックの記載内容や記載状況から、契約の際の説明はこれら文書に記載されたところに従って行われたとの推認が可能。
② これら記載からは、解約金の内容を理解しうるものであり、その記載が、本件契約における解約金が自動更新後には生じないなどと故意に誤認させ、故意に不利益事実を告知しないものであるとまでいうことはできない。

◆ H24.07.10東京地裁判決

2013年5月4日 公開

平成24年(レ)第9号授業料返還請求控訴事件
判例秘書、ウエストロー・ジャパン
裁判官 本多知成、倉地真寿美、鈴木美智子

【事案の概要】
 外国語を使用する幼稚園(インターナショナルスクール)に子どもを通園させるため、平成20年6月9日に、平成20年9月1日以降の授業料87万7800円を支払った後,日本国外への転勤命令を受けて授業開始前に在籍契約を解約したことを理由に授業料の返還請求をした事案。一旦支払われた授業料は授業開始前でも返還しない旨の特約が9条1号により無効であるとの主張を控訴審で追加した。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件在籍契約は消費者契約に該当する。
② 本件不返還条項は、違約金等条項に該当する。
③ 在籍契約の解除に伴い本件のような施設に生ずべき平均的な損害とは,1人の生徒についての在籍契約が解除されることによって当該施設に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解される。
④ 本件在籍契約は、施設の特殊性等から、授業料支払後授業開始前の期間に解除される場合があることは織り込み済みのものというべき。生徒が当該施設に通園することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点よりも前の時期における解除については,原則として,当該施設に生ずべき平均的な損害は存しないものというべきであり,納付された授業料は,原則として,その全額が当該施設に生ずべき平均的な損害を超えるものというべき。
 本件施設のようなインターナショナルスクール等においては,その第1学期が9月1日に開始されるものであるから,少なくとも,第1学期の開始日である同日以降は,入園申込者が特定のインターナショナルスクール等に在籍することが高い蓋然性をもって予測されるものというべきである。そうすると,本件在籍契約の解除の意思表示がその前日である8月31日までにされた場合には,原則として,本件施設に生ずべき平均的な損害は存在しないものであって,本件不返還特約は全て無効となるというべきである。



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