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「2010年5月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H18.11.27最高裁判決(1)

2010年5月31日 公開

平成17年(受)第1158号不当利得返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3437頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H16.03.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約は有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約。
② 在学契約は,特段の事情がない限り,学生が要項等に定める入学手続の期間内に学生納付金の納付を含む入学手続を完了することによって成立する。双務契約としての在学契約における対価関係は4月1日以降に発生する。
③ 入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情がない限り,学生が当該大学に入学しうる地位を取得するための対価としての性質を有する。
④ 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
⑤ 入学金については,その納付をもって学生は上記地位を取得するから,その後に在学契約が解除されても返還義務を負わない。
⑥ 授業料の不返還特約部分は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
⑦ 9条1号については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には平均的損害を超えて無効であると主張する学生が主張立証責任を負う。
⑧ 4月1日には,学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されるから,それ以前の解除については大学側は織り込み済みと解され,原則として平均席損害は存しない。
⑨ 4月1日以降の解除の場合は,授業料等はそれが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り大学に生ずべき平均的な損害を超えず不返還特約は有効。
⑩ 推薦入学の場合,解除は大学にとって織り込み済みではないので,特段の事情のない限り平均的損害が生じ不返還特約は有効。

◆ H18.11.27最高裁判決(2)

2010年5月31日 公開

平成17年(オ)第886号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号61頁,判例タイムズ1232号82頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
9条1号は,憲法29条に違反しない。

◆ H18.02.28大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(レ)第●号敷金返還請求控訴事件,平成17年(レ)第●号原状回復費用反訴請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,湯浅徳恵
上告審 H18.07.26大阪高裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.03.10右京簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第212号損害賠償請求請求事件
兵庫県弁護士会HP

裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
中古車買取業者が中古車を117万円で買い受けたところ,約2週間後までに接合車であることが判明したとして,代金の返還請求をした。「本契約締結後,売 主の認識の有無に係わらず,契約車両に重大な瑕疵(盗難車,接合車,車台番号改ざん車など)の存在が判明した場合には,買主は本契約を解除することができ る」との条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
①民法570条にいう「隠れた瑕疵」とは,買主が瑕疵のあることを知らず,かつ,知らないことについて過失のない瑕疵をいい,買主に過失がある場合には解除することはできないし,瑕疵の存在を発見したときから1年以内にしか解除権を行使できない。
②本条項は買主が瑕疵の存在を知らなかったことについて過失がある場合も解除でき,解除権の行使期間の定めがないから解除権行使による原状回復請求権の消滅時効(10年と解される)完成までは解除することができることになる。
③したがって,消費者(売主)の瑕疵担保責任を加重する条項であり,民法1条2項の信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するから,10条により同条項は無効である。

◆ H18.03.22小林簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第247号不当利得返還請求事件
消費者法ニュース69号188頁

【事案の概要】
高齢者が不必要な住宅リフォーム工事を契約させられ,クレジット契約を締結させられた等として,既払い金の返還請求をした。立替払契約について4条による取消が認められるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,返還請求を認めた。
① 本件立替払契約の目的は,立替金・手数料を72回に分割して支払うことであるが,その用途は本件工事代金の立替払である。
② 本件工事が耐震としては有効な工事ではないことは消費者にとっては不利益な事実である。
③ そう考えなければ,加盟店を通じて加盟店の販売契約と一体をなすものとして立替払契約の勧誘をして利益を上げる業態において消費者を保護する趣旨を貫くことができない。
④ したがって,4条2項により取り消すことができる。

◆ H18.03.27福岡簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第60340号敷金等返還請求事件
未登載

【事案の概要】
マンションの居室賃貸借契約で,中途解約をした借主が,敷金及び違約金の返還を求めた。敷引特約(家賃3ヶ月分,15万6000円)及び中途解約違約金特約(家賃1ヶ月分)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認め,違約金特約は有効であるとして違約金については返還請求を認めなかった。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。
② しかし,敷引には合理性がない。
③ 賃貸借期間1年以内の借主による一方的解約は,貸主に不測の損害を与えること,1ヶ月前の予告があったとしても,新たな借り主を見つけるには2ヶ月程度を要することから,本件特約は9条1号,10条には反しない。

◆ H18.04.14松山地裁西条支部決定

2010年5月30日 公開

平成18年(モ)第25号移送申立事件(基本事件平成18年(ワ)第61号不当利得返還請求事件)
兵庫県弁護士会HP
裁判官 中嶋功

【事案の概要】
貸金業者に対し,不当利得返還請求訴訟を提起したところ,「訴訟行為について松山簡易裁判所を以て専属的合意管轄とします。」との条項を根拠に松山簡裁への移送申立をされた。

【判断の内容】
以下の理由から,専属的合意管轄は生じておらず,仮に合意をしたとしても10条違反であり無効となるとした。
①貸金請求とは訴訟物が異なる。
②借りる際に,業者側の違法行為による不当利得返還請求の訴訟について管轄の合意をすることは考えにくく合理的意思解釈に反する。
③約款が業者側の利益を考慮して定型文書で作成され,そのまま署名しなければ借入自体ができなかった。
④業者が全国展開する企業で,法律及び訴訟の理解度や経済力の点で借主とは比較にならないほど優位に立っている。

◆ H18.04.28木津簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第170号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 根本正彦
控訴審 H18.11.08京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。阪神地区においては慣行として存在するのも事実。
② しかし,まだまだ賃貸人,賃借人間においては対等の立場で契約することは困難である。
③ 敷引には合理性がない。

◆ H18.05.19枚方簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(少コ)第89号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 矢野隆

【事案の概要】
建物賃貸借における,保証金の返還請求。保証金45万円の内30万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について,賃貸物件の価値を高めるものではなく,また,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用(例えば不動産 業者の仲介手数料)については有効であるが,それ以外については10条違反により無効であるとしてその部分について返還請求を認めた。
① 民法に,賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の明文がないから,賃借人の義務を加重する条項である。
② 賃貸人側,賃借人側の事情を検討すると,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用については,賃借人に負担させることも合理性があり,消費者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H18.05.24大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第13号敷金返還請求上告事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
控訴審 H17.12.22京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとの原審判断を維持した。
また,仮に合意が成立していたとしても,このような合意は許されないとも付言している。

◆ H18.06.06大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第5号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 堀正博,武部知子,湯浅徳恵
原審 大阪簡裁平成17年(ハ)第70334号

【事案の概要】
建物賃貸借契約における保証金返還請求。保証金35万円の内25万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
敷引特約は特段の合理性,必要性がない限り10条違反により無効であり,本件でも合理性を認められないとした。
 なお,原審では保証金の3割相当額の敷引を有効としていたものを全部無効としたが,借主側の控訴・附帯控訴がなかったため,控訴棄却となっている。

◆ H18.06.12東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第22799号契約金返還請求事件
未登載
裁判官 田中俊行

【事案の概要】
建物建築請負契約を建築開始前に解約し,支払済みの契約金300万円から10万円を差し引いた金額の返還請求をした。「請負代金総額の3分の1または請負人に生じた損害額のどちらか高い方を賠償する」との条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について9条1項に違反し,10万円を超える限度で無効とし,返還請求を認めた。
① 9条1号の「平均的な損害」とは,当該損害賠償額の予定条項において設定された解除の事由,時期等により同一の区分に分類される多数の同種契約事案の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する。
② 「平均的な損害」の立証責任は事業者側にある。
③ 本件条項は,解除の事由,時期を問わず一律に契約金の3分の1以上が平均的損害となるというものであるが,その合理性について立証はなく,本件解除の時期ではむしろ10万円を超えないことが明らか。
④ 民訴法248条による損害額の認定は,損害が生じたことが立証されたがその額を立証するのが困難な場合の規定であり,本件では損害の立証がそもそも10万円を超えない範囲でしかされていないので,適用の前提を欠く。

◆ H18.06.27高知地裁判決

2010年5月30日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
学納金不返還特約は,9条1号,10条,民法90条に反し無効であるとして,学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
社会人特別選抜入学試験を受験しながら年度末になって入学を辞退したからといって,学納金の返還を請求することが信義則に違反するとまではいえない。
入学金は,入学手続事務の諸経費に要する手数料的なものという性質を一部有しているほか,入試合格者ないし入学者が当該大学に入学し得る地位を取得するこ とについての対価(一種の権利金)の面を有するものである。原告は入学手続を完了しており,その後に原告が自己の都合で入学を辞退したとしても被告が入学 金を返還すべき義務は負わない。
本件不返還特約は9条1号に該当するとして,授業料等については返還を認めた。

◆ H18.06.27東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成16年(ワ)第7327号不当利得返還請求事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判例時報1955号49頁,判例タイムズ1251号257頁
裁判官 永野厚郎,西村康一郎,佐野文規

【事案の概要】
学納金の不返還合意は民法651条2項但書の趣旨に反すること,9条1号の平均的損害を超えること,あるいは10条ないし民法90条に該当することから無効であるとして,不当利得に基づき学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を納入することによって,大学との間の在外契約を締結し得る地位を得たものであり,既履行部分の対価たる入学金を保持することが不当利得となる余地はない。
授業料等については,不返還合意が9条1号に違反するとして返還を認めた。

◆ H18.06.28大津地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第701号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 阿多麻子

【事案の概要】
建物賃貸借契約における敷金返還請求。敷引特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約について10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 1条の趣旨からは,10条は,民法の一般条項によっては無効とはならない条項でも,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者の利益が不当に侵害されているものと評価される場合にはこれを無効とするとして消費者の利益を擁護する趣旨。
② したがって,民商法の規定に比べて過大な負担を負わせる条項がある場合には,事業者の側において(1)消費者が法的に負担すべき義務の対価であるこ と,(2)契約締結時までにその旨の情報が提供され,格差が是正され,消費者が契約締結後になって初めて契約締結時に予定していたよりも不利益な状態に 陥ったとはいえないことを立証すれば,10条違反にはならない。
③ 賃料の一部前払い,更新料免除の対価,礼金という性質については,合理性がなく,説明もない。

◆ H18.07.26大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第28号敷金返還請求・原状回復費用反訴請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森野俊彦,大島雅弘
第1審 H18.02.28大阪地裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金 60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.08.30東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第3018号売買代金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 山崎勉
控訴審で3000万円の支払いをうけることで和解成立

【事案の概要】
不動産業者から眺望のよいマンションを購入したが,直後に隣接地にマンション建設予定があり眺望が悪くなることを知らされなかったとして,4条2項による取消を主張し,売買代金2870万円及び遅延損害金の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,取消を認め代金返還請求を認めた。
① 勧誘するに際し眺望がよいことを告げたことは,重要事項について原告の利益となる旨を告げたというべき。
② 隣接地に前記眺望が悪くなるマンションの建設予定があることを知りながらこれを告げなかったことは,不利益事実を故意に告げなかったものというべき。
 重要事項説明書に周辺環境が将来変わる場合があると記載されていたとしても一般的説明にとどまり,当該不利益事実を告知したことにはならない。

◆ H18.09.08大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ネ)第466号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 渡邉安一,矢延正平,川口泰司
第1審 H18.01.30京都地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払 金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効であ る。

◆ H18.11.08京都地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第37号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 田中義則,阪口彰洋,大橋弘治
第1審 H18.04.28木津簡裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引の目的,敷引金の性質,敷引率が合理的なものであり,かつ,賃借人がこれを十分に理解・認識した上で敷引特約に合意をした場合は,賃借人の利益を一方的に害するということはできない。
② しかし,賃貸人の主張(賃料の一部前払い,契約更新時の更新料免除の対価,賃貸借契約成立の謝礼)は,合理性がない。敷引率も高い(85.7%)。

◆ H17.07.12京都簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(少コ)第184号敷金返還本訴(通常移行),同年(ハ)第10763号原状回復費用反訴請求事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
控訴審 H17.12.22京都地裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決 

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,賃貸人が賃貸の当初における優越的地位を行使して賃借人に過大な義務を設定するものであるから,特約中通常損耗の原状回復費用を賃借人の負担とする部分は民法90条により無効と解すべきであるとし,自然損耗部分についての返還請求を認めた。

◆ H17.07.13大阪高裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ネ)第2721号保険金請求控訴事件
自動車保険ジャーナル1622号3頁
裁判官 竹中省吾,竹中邦夫,矢田廣高
上告審 H17.11.17最高裁上告不受理決定

【事案の概要】
自動車の盗難の損害200万円について保険金請求した。譲渡後名義変更前に盗難にあった事案であり,保険会社は自動車保険約款一般条項5条(免責条項)を主張した。同条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,10条違反ではないとした。
① 本件免責条項は,商法650条の適用を排除したものであるが,自動車保険の特殊性を考慮して定められたもので合理性があり,消費者の利益を一方的に害する内容のものとはいえない。
② 本件免責条項の「譲渡」の意義について,消費者が明確,平易に理解できるように,本件約款の文言の改訂について検討されることが望ましいとは考えられるが,不明確で信義則等に反するとまではいえない。

◆ H17.07.14神戸地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(レ)第109号保証金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1901号87頁,消費者法ニュース65号161頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡泰行,三井教匡,山下隼人
第1審 H16.11.30神戸簡裁判決

【事案の概要】
敷金30万円のうち25万円(83.3%)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約は,民法にない義務を負担させるものであって,民法の適用による場合に比して消費者の義務を加重する条項であるとし,また,信義則に反し消費 者の利益を一方的に害するかどうかについては,敷引特約はさまざまな要素を有するものが渾然一体となったものとの立場(いわゆる渾然一体説)に立ちつつ, 賃貸借契約成立の謝礼(礼金),自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室損料,賃料を低額にすることの代償,といった要素について分析をし,いずれも その合理性を否定し,敷引特約は「賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にある」として,信義則に反し消費者の利益を一 方的に害するものであると判断し,10条に違反し無効であるとし,25万円の返還請求を認めた。

◆ H17.07.20東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第1333号解約精算金請求控訴事件
消費者法ニュース65号163頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 雛形要松,都築弘,中島肇
第1審 H17.02.16東京地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.07.21東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第21104号
LLI
裁判官 杉山正己,瀬戸口壯夫,大畠崇史

【事案の概要】
大学入学を辞退した原告らが入学金・授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,授業料の返還請求を認めた。
① 入学金の法的性質について,それ以外の趣旨を含むとの特段の事情のない限り,学生としての地位を取得する対価であるから,その返還を請求することはできない。
② 授業料について,4月1日以降の入学式前の時点で辞退した原告も含めて,平均的損害が生じたことをうかがわせる証拠はないから,その返還を要しないとする規定は全部無効であり,その返還を請求することができる。

◆ H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第139号立替金請求事件
未登載
裁判官 水田誠一
控訴審 H18.01.31東京高裁判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H17.08.25東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成15年(ワ)第21672号,第24133号
LLI
裁判官 柴崎哲夫

【事案の概要】
不動産業者から土地購入及び建物建築請負契約を併せて締結したが,住宅ローンが通らない場合には売買請負両契約が解除となるとの条項があったところ,住宅ローンが通らず解除となったため,手付金合計300万円の返還を求めた。
原告被告の間に入って交渉した第三者の地位,解除条項の解釈,及び不実告知(4条1項1号)が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号,5条1項により,売買・請負契約の取消を認め,不動産業者に手付金300万円の返還を命じた。
① 間に入って交渉した第三者は,委託を受けた第三者(5条1項)にあたる。
② 第三者が,解除条項について,本来であれば解除できないのに解除できるかのように説明しており,不実告知(4条1項1号)にあたる。

◆ H17.09.06名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)第3907号立替金請求事件
未登載
裁判官 河野文孝

【事案の概要】
浴衣を買いに来た客に対し,高額な喪服セットの購入を長時間勧誘しクレジット契約を締結させた事案で,クレジット会社から立替金請求がなされた。4条3項本文,同項2号及び5条1項による取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条3項2号,5条1項により,立替払契約の取消を認めた。
① 4条3項2号の「退去する旨の意思を示した」とは,消費者契約法の目的からは,「時間がない,用事がある,要らない」等の間接的に退去の意思を示す場 合が含まれ,「その場所から当該消費者を退去させないこと」とは,退去の意思の表示があったのに,当該消費者を当該場所から退出させるのを困難にさせた場 合を広く意味し,当該消費者にとって心理的にでも退去させない状況になっていれば足りる。
② 本件では,午後2時から3時ころから午後11時ころまでの勧誘であったこと,夕方6時に保育園に子どもを迎えに行く用事があったこと,「要らない」と告げていること,相談センターに相談が相当数寄せられていたことなどから,4条3項2号にあたる。
③ 当該勧誘・契約締結の6日後に書換をしているが,その際も取消を要請したにもかかわらず断られた経緯からは,当初の勧誘による困惑が継続していたものであり,取り消しうる。

◆ H17.09.07富山簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第48号キャンセル料請求事件
消費者法ニュース65号164頁,66号93頁
裁判官 大西守

【事案の概要】
ペンション経営者がインターネット広告掲載申込契約を締結し13日後にキャンセルをしたところ,約款に基づき70パーセントのキャンセル料を請求された。キャンセル料について合意が成立しているか否かが争われた。
事業者であり消費者契約法の適用がない事案。

【判断の内容】
被告にとって極めて不利益な条項であるにもかかわらず,キャンセル料について十分に説明を行ったと認めるに足りる証拠はなく,被告が書面上承諾したとの外 形事実があることをもって,被告の真摯な承諾があったと認めることはできない,として,合意があったと認められないとし,請求を棄却した。

◆ H17.09.09東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号不当利得返還請求控訴事件
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判時1948号96頁
裁判官 藤山雅行,大須賀綾子,筈井卓矢

【事案の概要】
挙式予定日から1年以上前に結婚式場の予約をし,その数日後に予約を取り消した場合において,予約金10万円の返還を認めない条項は10条,9条1項により無効であるとして,不当利得による返還請求をした。

【判断の内容】
挙式予定日の1年以上前から得べかりし利益を想定することは通常困難であり,仮にこの時点で予約が解除されたとしてもその後1年以上の間に新たな予約が入 ることも十分期待し得る時期にあることも考え合わせると,その後新たな予約が入らないことにより被控訴人が結果的に当初の予定どおりに挙式等が行われたな らば得られたであろう利益を喪失する可能性が絶無ではないとしても,そのような事態はこの時期に平均的なものとして想定し得るものとは認め難いとして,本 件取消料条項は9条1号により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.27京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第2571号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 水上敏

【事案の概要】
敷金20万円余りの返還を求めた。原状回復条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件賃貸借契約が消費者契約法施行後に合意更新されていることから同法の適用を受けるとし,自然損耗分を借主負担と定めた部分を10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.30大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第72号受講料等返還請求控訴事件
消費者法ニュース66号209頁
裁判官 三代川俊一郎,金田洋一,三芳純平
第1審 H17.01.27東大阪簡裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
次の理由から,入学金2万円を除く既払い金25万円の返還請求を認めた。
① 本件受講契約は準委任契約である。
② 不解除条項は10条違反であり無効である。
③ 不返還条項は9条1号の趣旨に反する。
④ 入学金2万円は約定のクーリングオフ期間中申込者の受講枠を確保する対価(権利金)の性質を有する。
⑤ 入学金部分について平均的損害を超えることの立証がない(9条1号の「平均的な損害」の立証責任が消費者にあることを前提)。

◆ H17.10.14枚方簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第181号敷金返還請求事件,第665号同反訴請求事件
消費者法ニュース66号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 淵脇洋

【事案の概要】
敷金25万円の返還請求に対し,敷引特約(敷金25万円,敷引25万円)が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件敷引特約が,賃借人の故意過失によらない損耗までその費用を負わせるものであること,賃借人には敷引特約のない物件を自由に選択できる状況にないのが 現状であること,いわば賃借人の無知を利用して賃貸人の有利な地位に基づき一方的に賃借人に不利な特約として締結されたものであり賃借人の真の自由意思に よったものとはいえず,信義に反する等として,10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.10.18佐世保簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)412号求償金請求事件
未登載
裁判官 大家嘉朗

【事案の概要】
この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになる,併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げられ,提携ローンにより化粧 品と青汁を購入した者に対する,信販会社からの求償金請求に対し,不実告知,不利益事実の不告知等を理由として取消を主張した。

【判断の内容】
①この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになるとの説明について,表示自体が一義的でなく,主観的要素を多分に含むので不実告知にあたらないとした。
②健康食品に医薬品的効能があるなど医薬品等との混同が生ずるような広告,表示は,それ自体事実でないというべきであるとし,化粧品と併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げたことが不実告知にあたるとして取消を認めた。
③契約から約11ヶ月後に取消の意思表示をした点について,誤認に気づいてから起算すればまだ6ヶ月を経過していないとして,信販会社の時効主張を排斥した。
④信販会社からの4条5項の「第三者」にあたるとの主張を排斥して,抗弁の対抗(割賦販売法30条の4)を認めた。

◆ H17.10.21大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第5920号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 瀧華聡之,堀部亮一,芝本昌征

【事案の概要】
ファッションに関する専門学校に入学した原告が,入学申込手続にあたり被告から受講課程の内容が実際とは違っていた点や,卒業生の就職率が100%であると説明を受けた点が不実告知,不利益事実の不告知にあたるとして4条1項1号,2項による在学契約の取消を主張した。
また,入学後に退学をしたことにより,学納金の返還を請求し,不返還条項が9条1号,10条に反するかどうかが争われた。

【判断の内容】
①不実告知,不利益事実の不告知については事実が認定できない。
②本件専門学校の在学契約は無名契約である。
③入学金は,在学契約を締結できる資格を取得し,これを保持しうる地位を取得することに対する対価とし,かかる地位をすでに取得した以上返還を求めることはできない。
④「平均的な損害の額」(9条1号)とは,同一事業者が締結する多数の同種契約事案について,類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいう。
⑤本件では,ひとつながりのカリキュラムの部分について平均的損害が認められるとして,授業料,教育充実費,施設・設備維持費の1カリキュラム分(半年分)を超える部分について,9条1号に違反するとして,返還請求を認めた。
⑥10条違反は否定した。

◆ H17.10.24福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第36号敷金返還等請求控訴事件
未登載
裁判官 野尻純夫,川﨑聡子,森中剛

【事案の概要】
敷金22万5000円他の返還を求めた。入居期間の長短を問わず75%を敷金から差し引くとの敷引条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
敷引について,新たなる賃借人のために必要となる賃貸物件の内装等の補修費用の負担等について,賃貸人と賃借人との間の利害を調整し,無用な紛争を防止す るという一定の合理性があることは否定できないとしつつ,自然損耗部分について賃借人に二重に負担させることになってしまうとし,実際に補修工事費用とし て賃貸人が挙げているものについて目的物の通常の使用に伴う自然損耗を超える損耗の補修に要する費用であると直ちに断定しがたいこと等からは,75%もの 敷引には正当な理由がないとし,前述の一定の合理性があることに鑑みて,敷金の25%を超えて控除するとの部分を10条に反して無効であるとして,その 75%の部分について返還請求を認めた(一部無効)。

◆ H17.10.28名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
旅行主任者教材セットを購入した被告(消費者)が,原告の勧誘内容の不自然さに気付き,契約解除をしたところ,原告は解約料を支払わないと解約できないと解約に応じず,売買代金の支払を求めた。

【判断の内容】
原告が被告に対し,本件契約締結の勧誘に際し,本件契約代金等を5年後に,ある協会に申請すれば特別奨励金として返還されると告げ,被告はそのような事実がないのにあると誤認して契約を締結したとして,不実告知による取消を認め原告の請求を棄却した。

◆ H17.11.08東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第253号情報料返還請求控訴事件
判時1941号98頁,判例タイムズ1224号259頁
裁判官 水野邦夫,齊木利夫,早山眞一郎

【事案の概要】
パチンコ攻略情報について,売主から「100パーセント絶対に勝てる」等と勧誘を受けた買主が,代金の返還請求をした。断定的判断の提供(4条1項2号)に当たるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項2号による取消を認め,全額の返還請求を認めた。
① 常に多くの出玉を獲得することができるパチンコの打ち方の手順の情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
② 「100パーセント絶対に勝てる」等の勧誘は,断定的判断の提供にあたる。
③ 買主は100パーセント勝てるとの内容に疑いを抱いていたとはいえ,売主の勧誘によって確実であると誤信したと認定。
④ 買主が自ら射幸的目的をもって行動していたとはいえ,これは基本的には売主の広告や勧誘の結果と評価すべきであり,返還請求を認めたとしても消費者保護の精神から逸脱するとはいえない。

◆ H17.11.28明石簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第392号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 神吉正則

【事案の概要】
解約引(敷引)された25万円の返還を求めた。敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,全額の返還請求を認めた。
本件敷引条項は,賃借人に対し賃料以外の金銭的負担を負わせるものであること,敷引が関西地方で長年の慣行になっている,その他,敷引の合理性として主張 する点(謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室補償,賃料を低額にすることの代償)について,いずれも合理性を認めがたいこと等より,本件敷 引特約は10条違反である。

◆ H17.11.29東京簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求(本訴,通常手続移行),同年(ハ)第19941号損害賠償請求(反訴)
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 行田豊

【事案の概要】
敷金返還請求。自然損耗部分の修繕費用を借主の負担とする条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件原状回復条項が10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは,借主に二重の負担を強いることになり,信義則に反する。
② 本件原状回復条項は,自然損耗等に係る原状回復についてどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,借主に適切な情報が提供されておらず,貸主 が汚損,破損,あるいは回復費用を要すると判断した場合には,借主に関与の余地なく原状回復費用が発生する態様となっている。このように,借主に必要な情 報が与えられず,自己に不利益であることが認識できないままされた合意は, 借主に一方的に不利益であり,この意味でも信義則に反するといえる。

◆ H17.12.06大阪簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第70334号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 堤秀起

【事案の概要】
敷金35万円の返還を求めた。25万円を敷金から差し引くとの敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,24万5000円の返還請求を認めた。
① 敷引について,賃貸借契約成立の謝礼,更新料の免除の対価,空室損料の要素に関しては敷引金の負担を強いることに正当な理由はない。
② 賃料を低額にすることの代償との主張について,関西地方での敷引が長年の慣習となっており慣習自体不合理なものであるとは言えず,関西地方では敷引があることを前提に賃料が低く設定されていると見ることができる。
③ 敷引特約は,保証金の額,敷引金額や控除割合,契約期間等を総合考慮して,敷引金の額が適正であればその限度で有効であり,適正額を超える部分についてのみ10条違反となる。
④ 本件では,保証金の約71%(賃料の約4ヶ月分)を控除していること,契約期間が1年との事情から,適正な敷引金はせいぜい保証金の3割の10万5000円である。

◆ H17.12.22京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号敷金返還請求控訴事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとして,敷金返還請求を認めた。

◆ H18.01.30京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第784号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 衣斐瑞穂
控訴審 H18.09.08大阪高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効である。

◆ H18.01.31東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4640号立替金請求控訴事件
未登載
裁判官 横山匡輝,石井忠雄,相澤眞木
第1審 H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H18.02.02福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第121号違約金請求本訴事件,平成17年(ワ)第496号手形金返還等請求反訴事件
判例タイムズ1224号255頁
裁判官 岸和田羊一

【事案の概要】
眺望に関する説明義務違反を理由にマンション販売契約が債務不履行解除された事例

【判断の内容】
① 居室からの眺望をセールスポイントとして,建築前のマンションを販売する場合においては,眺望に関係する情報は重要な事項ということができるから,可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があるとして,説明義務違反を理由とする解除を認めた。
② 消費者契約法4条1項1号にいう「事実と異なること」とは,主観的な評価を含まない客観的な事実と異なることをいうと解すべきところ,本件では「事 実」に該当しない,また,同条2項につき,「故意に」告げなかったということはできない,として消費者契約法による取消は否定された。

◆ H18.02.28東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4805号授業料返還請求控訴事件
未登載
裁判官 西田美昭,犬飼眞二,小池喜彦

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
役務提供事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者から中途解約がなされ,その受領済みの前払金の中から既提供役務の対価に相当する部分 を控除して返還するという場合において,前払金の収受に際して役務の対価に単価が定められているときは,その単価に従って既提供役務の対価を計算するのが 精算の原則となるものと解すべきであるとして,本約款規定が特定商取引法49条2項1号の趣旨に反し無効であるとして,精算金の返還請求を認めた。

◆ H17.02.24東京高裁判決(1)

2010年5月27日 公開

未登載
第1審 H16.03.22東京地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。4月22日に辞退を申し出た者については,授業料の返還義務を否定した。

◆ H17.02.24東京高裁判決(2)

2010年5月27日 公開

東京高裁平成15年(ネ)第6002号
未登載
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じ た。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し た。一般入試以外の場合には,当該学部・学科を第1志望とすることが出願資格であり,学納金等の返還を求めることは信義則違反とし,返還請求を認めなかっ た。

◆ H17.03.01千葉簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(少コ)第77号敷金等返還請求事件
消費者法ニュース63号97頁
裁判官 伊藤みさ子

【事案の概要】
敷金等の返還請求に対し,賃貸人が,賃貸借契約書に,賃借人が原状回復をし賃貸人がその原状回復を承認した時を明け渡し日時とする旨,及び,前記承認まで賃借人は賃料の倍額相当の損害金を支払う義務がある旨の条項があることを主張した。

【判断の内容】
社会一般に通常行われている賃貸借契約に比し賃借人に特に義務を負担させる条項が有効であるためには,賃借人に対しその義務の内容について説明がなされ て,賃借人がその義務を十分に理解し,自由な意思に基づいて同意したことが必要であるとし,これを認めるに足る証拠はないとして,同条項について賃借人の 意思を欠き無効であるとして,返還請求を認めた。また,原状回復条項について,自然損耗についてまで賃借人に負担させるものと定めたものではないとして, 適用を制限した。

◆ H17.03.10東京高裁判決

2010年5月27日 公開

未登載
第一審 H16.03.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち 4月1日以降に辞退を申し出た者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H17.03.10東京地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第18148号
LLI
裁判官 小池裕

【事案の概要】
高齢者に対する床下換気扇等の点検商法について,販売店に対して原状回復を,信販会社に対して債務不存在確認を求めた。

【判断の内容】
① 4条1項1号にいう重要事項は,商品自体の品質や性能,対価等のほか,本件建物への本件商品の設置の必要性,相当性等が含まれるものと解すべきである。
② 科学的な水分測定がなされた訳ではなく,「床下がかなり湿っているため,家が危ない」という趣旨の説明を誤信したもので,設置された換気扇の本来的な 機能を発揮しておらず,工事の必要性も相当性も認められないから,これがあるとして説明した行為は不実告知(4条1項1号)に当たり,取り消しうる。
③ 1回払いの立替であったとしても,信義則上相当と認められる特段の事情がある場合には抗弁を対抗できるというべきであり,本件は特段の事情がある。

◆ H17.03.17札幌地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第2657号立替金請求事件
消費者法ニュース64号209頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 氏本厚司

【事案の概要】
高齢の女性が宝石貴金属販売会社の従業員からホテルでの展示会に連れ出され,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられやむなくネックレスを購入し,クレジット契約を締結させられた。信販会社からの立替金請求に対し,4条3項2号(退去妨害)による取消を主張した。

【判断の内容】
①販売店が信販会社との立替払契約について顧客を勧誘することを委託することは5条1項の委託にあたる。
②顧客が,販売店従業員に対し,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられ,困惑してネックレスの購入,立替払契約を締結させられたとして,4条3項2号により,立替払契約の取消を認めた。

◆ H17.03.25佐野簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ハ)第150号敷金返還等請求事件
特優賃住宅敷金返還訴訟(HP)
裁判官 畑山明則

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,自然損耗部分も賃借人の負担とするという原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,自然損耗部分については賃貸人の負担とするのが合理的意思であり,これに反する内容で合意したとの特段の事情が窺われないの で,賃借人の意思を欠き無効とした。また,消費者契約法施行前の契約であっても,施行後に更新されている場合には同法の適用があるとし,本件原状回復特約 は10条により無効であるから,いずれにせよ自然損耗部分についての返還請求を認めるべきとした。

◆ H17.03.25京都地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第1622号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 楠本新

【事案の概要】
入学金35万円,運営協力金35万円の合計70万円の学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件納付金(入学金,運営協力金)の法的性質について,募集要項と過去5年間の決算内容を検討し,結局学校は本件納付金を経常的な運営費として取り扱って いることが明らかとし,入学者に負担させるべきであり,入学辞退者に負担させるには特段の事情が必要であるとして,入学辞退者が生ずることにより空きが増 えることは特段の事情には当たらないとして,10条により不返還条項を無効とした。

◆ H17.03.30東京高裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ネ)第3109号不当利得返還請求事件
未登載
第1審 H16.04.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。
② 入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。
③ 原審の平均的損害額であることの主張立証責任は事業者が負うという部分は削除され,消費者にあるとされた。
④ 消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H17.04.20大阪地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第10347号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース64号213頁
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
敷金の80%(40万円)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約の趣旨を通常損耗部分の補修費に充てるものであるとして,敷金の額,敷引の額,賃料額,賃貸物件の広さ,賃貸借契約期間等を総合考慮して,敷 引額が適正額の範囲内では本件敷引特約は有効とし,超える部分は無効として,本件では2割(10万円)の敷引は有効とした。

◆ H17.04.28横浜地裁判決

2010年5月27日 公開

平成14年(ワ)第3573号,平成15年(ワ)第1179号,第3452号不当利得返還請求事件
判例時報1903号111頁,金融商事判例1225号41頁
裁判官 河邉義典,太田雅之,小林元二

【事案の概要】
学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の法的性質について,「学生としての地位」の対価(推薦入学の場合は推薦合格の対価としての性質も併有)とし,現実にその地位を取得するのは4月1 日であるから,それ以前に入学を辞退した場合には返還すべきとし,不返還条項については,平均的損害を超える部分について返還すべきとした。
平均的損害の主張立証責任は原告にあるとしつつ,立証が困難であることから,民事訴訟法248条により損害を認定した(入学事務手続のための費用として徴収している『諸経費』と同等額と認定)。
授業料については,返還すべきとした。

◆ H17.06.24盛岡地裁遠野支部決定

2010年5月27日 公開

平成17年(ワ)第12号不当利得返還等事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 神山千之

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について専属的合意管轄条項に基づき移送の申立がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして移送しないように求めた。

【判断の内容】
本件専属的合意管轄条項は10条により無効とし,貸金業者の移送申立を一部却下した。

◆ H17.01.26名古屋地裁判決

2010年5月25日 公開

平成14年(ワ)第4110号帳尻差損金請求事件,第5428号不当利得返還等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース63号100頁,判例時報1939号85頁
裁判官 岡田治

【事案の概要】
商品先物取引における帳尻差損金等の請求に対し,断定的判断の提供,不実の告知,不利益事実の不告知があったとして,消費者契約法4条1項2号及び同条1 項1号ないし同条2項による契約の取消を主張した。業者は,商品先物取引には取引所という第三者が存在しており,消費者契約法4条5項により,取消をもっ て善意の第三者に対抗できないから消費者契約法を適用できないと主張して争った。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 2条により商品先物取引にも消費者契約法の適用がある。
② 「灯油は必ず下げてくる,あがることはあり得ないので,50枚売りでやってほしい。」「上場企業の部長の私を信用して30枚やってもらえませんか。」 「当たりの宝くじを買うみたいなものですよ。」「責任をもって利益をとって,お盆休みあけには,私が現金を持っていきます。」等の勧誘は,断定的判断の提 供(4条1項2号)にあたる。
③ 先物取引業者は商法551条の問屋にあたり,自己の名で他人のために物品の販売又は買い入れをなすもので,市場における取引契約が取り消されるわけではないから,先物取引業者による消費者契約法4条5項の主張は理由がない。

◆ H17.01.27東大阪簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第608号受講料等返還請求事件
消費者法ニュース63号137頁
裁判官 中島嘉昭
控訴審 H17.09.30大阪地裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
「一度ご入金頂いた費用は,ご自身のご都合による返金はできません。」という不返還条項は,民法651条1項の解除権を排除するもので,消費者の権利を制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるから,消費者契約法10条により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.01.28大阪高裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ネ)第2217号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 柳田幸三,磯尾正,金子修
原審 H16.06.11京都地裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H17.01.31大阪高裁決定

2010年5月25日 公開

未登載
抗告審 H16.09.15大阪地裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていた ことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条 項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H17.01.31東京地裁判決

2010年5月25日 公開

国センくらしの判例集HP2007年3月

【事案の概要】
MBAの資格取得のために,アメリカのビジネススクールの留学試験への合格を目的として,事業者が開講する授業を受講したが,留学に必要なすべてが確実に なるとか,個別指導をする旨の募集要項等において標榜されていた事項が実際には全く違っていたので,4条1項等により取消を主張した。

【判断の内容】
契約した一部のコースについては,留学に必要なすべてが確実になるような内容のものではなく,個別指導方式とはほど遠い内容のものであり,消費者契約法4 条にいう重要事項についての不実の告知があったものとして,その部分の契約については取消を認めた。残りのコースについては,特定商取引法の継続的役務提 供に当たり,消費者契約法に基づく本件受講契約の取消の意思表示は本件受講契約の中途解約の意思表示を含むものとして,特定商取引法49条に基づく中途解 約による返金が認められた。

◆ H17.02.03東京簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第11333号貸金請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 山本正名

【事案の概要】
約定利息を年29%とする貸金業者の貸金返還請求において,契約書面に記載された「元金又は利息の支払いを遅滞したとき,(略)催告の手続を要せずして債 務者は期限の利益を失い直ちに元利金を一括して支払います。」との期限の利益喪失条項との関係で,貸金業規制法43条1項の適用の有無が争われた。

【判断の内容】
本件期限の利益喪失条項を記載した契約書面は,信義則上,もはや例外規定たる貸金業法43条1項の適用の特典は受けられず,本則規定の利息制限法が適用される。
資金需要者(債務者)も広い意味で消費者であること等も考慮する必要があり,かかる観点からは,事業者には契約締結に必要かつ正確な情報の提供と説明義務 が求められ,消費者契約法4条では,不実告知,不利益事実の不告知等により消費者が誤認して契約を締結した場合契約の取消ができるとされているのであり, 金銭消費貸借契約においてもその法の精神は,信義則の適用として及ぼされなければならない。貸金業者には,信義則上,債務者の利益のために,必要かつ正確 な情報を提供する義務があり,重要事項につき事実と異なる不正確な内容を記載したり,債務者の利益を害する契約条件を記載した場合には,貸金業法43条1 項の適用は受けられない。本件の期限の利益喪失条項は,実際の効力以上の無効な内容が表記された不適正,不正確な内容であり,債務者の誤解を招き,債務者 にとって不利益な条項と認められるとし,本件契約書面は貸金業法17条の要件を充さず,したがって,貸金業法43条1項の適用はないものとして,利息制限 法による残債務のみの請求を認めた。

◆ H17.02.16東京地裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ワ)第25621号解約精算金請求事件
最高裁HP,判例時報1893号48頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 水野邦夫
控訴審 H17.07.20東京高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.02.17堺簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第2107号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 小林七六

【事案の概要】
敷金の約83%を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
敷引特約は10条により無効とし,全額返還を命じた。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(1)

2010年5月24日 公開

未登載
原審 H15.11.27京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(2)

2010年5月24日 公開

未登載
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以降間もない期間内(遅くとも入学式以前)に在学契約を解除した場合においては,特段の事情がない限り,大学には具体的な損害(平均的損害)は発生しないとして,授業料について返還を命じた。

◆ H16.10.07大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第2169号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 原司

【事案の概要】
電話機及び主装置一式のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
当該リース契約の締結に関し,申し込みの勧誘から契約書等の作成,契約内容の説明などは当該取扱店が行っていたことを前提に,当該従業員が光ファイバーを 敷設するためにはデジタル電話に替える必要があり,電話機を交換しなければならない旨を告げたため被告(消費者)がこれを信じたとし,4条1項1号による 契約の取消しを認めた。

◆ H16.10.22大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第295号学納金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行前に在学契約を締結した原告を含めて,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 4月1日以降間もない時期(遅くとも入学式以前)に在学契約が解除された場合には,実質的には4月1日以より前の入学辞退と異なるところはなく,特段 の事情がない限り,平均的損害は存在しないと推認するのが相当であるところ,この推認を覆すに足りる特段の事情は認められず,授業料不返還特約は9条1号 に反し無効である。
③ 授業料不返還特約は暴利行為の要件を満たし,公序良俗に反し無効である。

◆ H16.11.12福岡高裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ネ)第752号不当利得返還等請求控訴事件
最高裁HP,判例タイムズ1187号231頁
裁判官 簑田孝行,駒谷孝雄,岸和田羊一

【事案の概要】
手形貸付を反復継続して受ける方法で長期間にわたって高利での借入をしていた者からの貸金業者に対する不当利得返還請求。

【判断の内容】
過払い金の充当方法について,当事者間における情報の質及び量並びに交渉力の格差という1条の趣旨をあげて借主にもっとも容易に検算ができる後払計算方式を借主が指定充当したものと推認した。

◆ H16.11.15東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第2715号売買代金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 下里敬明

【事案の概要】
内職商法で月2万円は確実に稼げると勧誘されてシステム(CD-ROM)を購入させられた者が,断定的判断の提供を受けたとして4条1項2号による取り消しを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 内職商法の被勧誘者であることを特に問題とすることなく,明らかに「消費者」にあたるとした。
② 月2万円は確実に稼げるとの発言は,将来において得るべき収入という不確実な事項につき具体的な金額を示して確実であるとの言い方をしており,断定的判断の提供(4条1項2号)にあたる。

◆ H16.11.18大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第13395号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 中本敏嗣

【事案の概要】
コンピュータ専門学校に入学した後,2学年の授業料の内金を支払ったが,その後2学年に進級する前に退学したとして,不当利得返還請求権に基づき支払った内金の返還を求めた。

【判断の内容】
①一般に在学契約は,準委任契約の性質を有しつつも,施設利用契約等の性質を併せ持つ複合的な無名契約であり,学生はいつでも将来に向けて在学契約を解約できる。
②「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は,学納金不返還特約の効力を否定する消費者の側にある。
③本件では,在学契約の解除が年度を超えた6月21日であると認定しつつ,退学の意思を表明したのが2月10日であり,2学年次の初めから休学扱いとさ れ,2学年次の授業を全く受けていないこと,学校側が入学定員を設定している以上,定員割れがあるかどうかにかかわらず,それだけの設備は当然に備えてお かなければならないことなどから,退学者が出ても学校側に損害が生じたとは言い難いとし,既に納付した授業料相当額全額が平均的な損害を超えるものとし て,全額の返還請求を認めた。

◆ H16.11.18大津簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第317号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 清野住和

【事案の概要】
専門学校合格後,入学式前に入学を辞退した受験生が,納付した入学金及び運営協力金のうち運営協力金の返還を求めた。

【判断の内容】
①運営協力金は,入学後の教育施設の利用及び教育的役務の享受に対する対価であり,入学金のように入学し得る地位を保持することの対価としての性質を有するものではない。
②損害賠償義務の一部について無効という利益を受ける消費者が「平均的な損害の額を超える」ことの立証責任を負う。
③在学契約を完全に履行した場合に得られる利益額が平均的損害に含まれるとする学校側の主張を斥け,被告の主張以外に損害及び損害額を認め得る証拠は存在しないとして,運営協力金全額の返還を命じた。

◆ H16.11.19佐世保簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第7号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 久保正志

【事案の概要】
敷金として差し入れた家賃4ヶ月分の金員のうち,3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
賃貸借契約締結時に十分な説明のないまま敷金4ヶ月分のうち一律に3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であり,また,建物につき自然損耗を超えた損害についての原状回復費用を認定する証拠もないとして,敷引特約にかかる金員全額について返還を命じた。

◆ H16.11.29東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第4044号立替金請求事件
最高裁HP
裁判官 野中利次

【事案の概要】
訪問販売で日本語をよく話せない中国人に教材を売りつけた事案で,信販会社が立替金を請求した。

【判断の内容】
①販売店の担当者がクレジットの返済月額を1万2000円位であると説明したが,実際にはその倍以上の引き落としであったこと等について不実告知と認め,本件クレジット契約は信販会社が販売店に媒介を委託したものであるとして(5条),4条1項による取消しを認めた。
②騙されたことを知った後に立替金を支払っていたとしても,相手方に対して追認の意思表示がなされた訳ではないとして,追認の主張を排斥しクレジット契約の取消しを認めた。

◆ H16.11.30大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

未登載

【事案の概要】
「保証金」として差し入れた家賃5.3ヶ月分の金員のうち,4.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
建物賃貸借契約に伴う保証金の返還について,敷引特約あるいは類似の契約に関する民法,商法上その他の法規上の任意規定はなく,また,賃借人の転居は自己 都合であることなどから敷引特約は信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものということはできないとして,返還を否定した。

◆ H16.11.30神戸簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第10756号保証金返還請求事件
未登載
控訴審 H17.07.14神戸地裁判決

【事案の概要】
賃貸借契約終了時には賃借人から預託を受けた保証金から一定額を控除した残額を返還する約束をしたが,賃借人は,その約束は10条により無効として保証金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は10条に違反しないとして,請求を棄却した。

◆ H16.12.17大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第1308号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1894号19頁,消費者法ニュース63号92頁
裁判官 若林諒,三木昌之,島村雅之
第1審 H16.03.16京都地裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20 万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
原審と同じ
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。

◆ H16.12.20東京地裁判決

2010年5月24日 公開

平成14年(ワ)第20658号,第24250号,第28684号不当利得返還請求事件
判例タイムズ1194号184頁
裁判官 野山宏,酒井正史,出口亜衣子

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。
(施行後の契約について)
② 入学金は入学資格を取得するための権利金又は予約完結権の対価の性質を有するとして返還義務を否定した。
③ 授業料等入学金以外の学納金については,学校側が最終的な入学者数が定員を若干上回るように補欠・繰上含めて合格者数を定め,毎年最終の入学者数とこ れに伴う授業料収入をある程度の幅をもって予測し,これに必要な人的・物的手当を準備すると共に,人件費,物件費の支出見込額を計上していること,入学手 続完了後の入学辞退者の全体に占める比率も小さいこと等から,予測した入学者数の加減を下回ることは通常考えられず,学校側に生じる平均的な損害はないも のとして,9条1号により返還を認めた。

◆ H17.01.12大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第10259号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 岡原剛

【事案の概要】
通学定期乗車券の不正使用について,旅客鉄道規則の規定に基づき,乗車区間の往復の旅客運賃を基準に有効期限の翌日から不正使用が発覚した日までの全期間を乗じた運賃に2倍の増運賃を加算した損害賠償金等の支払いを求めた。

【判断の内容】
旅客鉄道規則の規定が増運賃を定めた趣旨は,不正使用に対する違約罰であり,多数の案件を画一的に取り扱う普通取引約款の性質上,定型的に不正使用に対す る徴収金を定める規定の一般的合理性は是認でき,規定自体が消費者契約法10条に違反するとの主張は採用できない。しかしながら,旅客鉄道規則の規定は不 正使用の蓋然性の高いことが前提となっており,不正使用の蓋然性が認められない期間にまで機械的に適用して増運賃を請求することは10条の法意に照らして 許されないとして適用を制限した。

◆ H16.07.28大阪地裁判決

2010年5月23日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.07.30大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3519号不当利得返還等本訴請求,受講料等反訴請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
原審 H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 易学受講契約(一審は退去妨害による取消しを認めた。)につき,契約締結場所を退去した翌々日に授業料等の一部を支払ったことが民法125条1号所定 の債務の一部の履行に該当し,取消し得べき行為を追認したものとして,法4条3項2号による取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無 効とした。)。
② 付随契約(一審は断定的判断の提供による取消しを認めた。)につき,法4条1項2号にいう「その他将来における変動が不確実な事項」とは消費者の財産 上の利得に影響するものであって将来を見通すことがそもそも困難であるものをいうと解すべきであり,漠然とした運勢,運命といったものはこれに含まれない として,取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無効とした。)。

◆ H16.08.25大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H15.07.16京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.03大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H16.01.20大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.08東京地裁判決

2010年5月23日 公開

未登載

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。施行後の契約については,入学金以外の学納金は,9条1号により返金を認めたが,入学金は入学しうる地位の対価として返還義務を否定した。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(1)

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3707号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁,消費者法ニュース62号139頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,神山隆一
上告審 H18.11.27最高裁判決(4)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(2)

2010年5月23日 公開

平成16年(ネ)第21号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,大島雅弘
上告審 H18.11.27最高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.15大阪地裁決定

2010年5月23日 公開

未登載
再抗告審 H17.01.31大阪高裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていたことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H16.09.22福岡地裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ワ)第974号損害賠償請求事件
最高裁HP
裁判官 亀川清長,板野俊哉,山口幸恵

【事案の概要】
マンションの購入の際,ペットの飼育に関する販売業者の説明が不適切であったためペットの飼育が可能であると誤信して購入契約を締結させられたとして,説 明義務違反による損害賠償請求(債務不履行責任)又は不利益事実の不告知(4条2項)による取消し等に基づく不当利得の返還を求めた。

【判断の内容】
マンション販売業者は制定予定の管理組合規約等の内容を説明する限りにおいてペット飼育の可否ないしその制限等についても説明する義務を負うとしたが,管 理組合規約は管理組合総会によって制定,改正されるものであるから,販売業者がマンション販売に際し説明しうるのは制定予定の管理組合規約等の内容に限ら れ,それを超えてペット飼育の可否についての説明義務までは負わないとして債務不履行責任を否定した。
マンションにおけるペット飼育の可否はマンション売買契約における重要な事項であったとしたが,販売業者による説明は制定予定の管理組合規約の解釈を述べ たにすぎず,また,購入者は本件マンションに入居する以前もマンションにおいて管理上一定の制約を受けつつペットを飼っていたことからすれば,利益となる 事実を告げたとはいえないとして,不利益事実の不告知による取消しを否定した。

◆ H16.07.13大阪高裁判決

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.13東京地裁判決

2010年5月22日 公開

平成15年(ワ)第24336号損害賠償請求事件
消費者法ニュース61号158頁,国セン暮らしの判例集HP2004年11月
裁判官 原敏雄

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
特定商取引法49条2項の規定の趣旨や勧誘事情からすると,約款により,実際に提供されていないレッスンポイントを有効期間の経過等を理由に消化済みのものとみなして精算することは許されない(但し,精算金全額を供託したため,請求棄却となった。)

◆ H16.07.15京都地裁判決

2010年5月22日 公開

平成16年(ワ)第750号不当利得金請求事件
未登載
裁判官 山下寛

【事案の概要】
建物賃貸借契約の解約に際し,賃借人が賃貸人に保証金全額の返還を求めた事案で,賃貸人の事業者性や敷引特約の不当性が争われた。

【判断の内容】
自ら居住目的で購入した建物を転居を余儀なくされたため賃貸したもので反復継続性を欠くとして,賃貸人の「事業者」性(2条2項)を否定した。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(1)

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H16.01.21大阪地裁判決

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
原審と同じ
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(2)

2010年5月22日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.28千葉地裁判決

2010年5月22日 公開

平成14年(ワ)第1550号違約金等請求事件
消費者法ニュース65号170頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子

【事案の概要】
建築業者が,建物工事請負契約を契約直後に解除した消費者に対し,「請負代金の20%に相当する額の違約金を支払う」との契約条項に基づき違約金の支払いを求めた。

【判断の内容】
① 9条1号の「平均的な損害」の主張立証責任は事業者側にある。
② 建築業者が契約条項があることのみを主張立証し,他に平均的損害につき主張立証しない以上,平均的損害は既に支出した費用相当の損害を超えないとして,当該金額を超える部分の違約金条項は9条1号により無効である。

◆ H16.06.29大阪地裁判決

2010年5月21日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.05東京簡裁判決

2010年5月21日 公開

平成16年(少コ)第325号敷金返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 松田雅人

【事案の概要】
建物賃貸借契約を締結した賃借人が,当該賃貸借契約の始期に先立ち,賃貸人に対し,賃料・共益費1ヶ月分や敷金及び礼金等の預入金を支払うとともに当該建 物の補修を求めていたが,賃貸人がこれに応じなかったことから当該賃貸借契約の解約を申し入れ当該預入金の返還を求めたところ,解約の要件及びいったん支 払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定があることから返還を拒絶された。

【判断の内容】
賃借人の都合により解約するときには解約日の3ヶ月前に書面により賃貸人に解約届けを提出しなければならず,これに従った解約をしない場合には賃料・共益 費合計額の6ヶ月分を賃貸人に保証する旨の約定及びいったん支払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定は,公の秩序に関するものではないが, 著しく原告の権利を制限し,又は原告の義務を加重する条項であり10条の趣旨に照らし無効とした。

◆ H14.03.12神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ハ)第2302号入所費等返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号211頁
裁判官 福富昌昭
控訴後確定

【事案の概要】
歌手志望で俳優等養成所に入所直後,思っていたものと違うとして不実告知等による取消等を主張し,支払済費用の返還を求めた。

【判断の内容】
3ヶ月後の月謝の値上げを告げなかったことが不利益事実の不告知(4条2項)に該当するとして取消を認めた。

◆ H14.03.25東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(レ)第12号営業保証料請求控訴事件
判例タイムズ1117号289頁,1149号73頁,金融商事判例1152号36頁,私法判例リマークス27号38頁,NBL753号72頁
裁判官 難波孝一,足立正佳,笹川ユキコ
上告

【事案の概要】
パーティーの予約を解約すると営業保証料として一律1人当たり5,229円徴収すると定めた規約は,「平均的損害」を超える請求であるとして,消費者が,平均的な損害を超える請求を不服と主張した。

【判断の内容】
① 「平均的損害」は,契約の類型毎に合理的な算出根拠に基づき算出された平均値であり,解除の事由,時期の他,当該契約の特殊性,逸失利益,準備費用・ 利益率等の損害の内容,契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らして判断するのが相当,とした。
② その上で,民事訴訟法248条を適用して「平均的損害」を認定した。

◆ H14.07.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第9030号損害賠償請求事件
最高裁HP(別紙略)
,判例タイムズ1114号73頁,金融商事判例1162号32頁,NBL761号77頁,消費者法ニュース57号
裁判官 曳野久男
確定

【事案の概要】
中古車販売の解約において車両価格の15%の損害賠償金と作業実費を請求するとの条項に基づき,販売会社が支払いを求めて提訴したのに対し,消費者が,本件では「平均的な損害」が発生していないと主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 注文から2日後の撤回であること等から損害が発生しうるものとは認められないとして販売会社の請求を棄却した。

◆ H14.12.12広島高裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ネ)第232号 貸金等請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 竹中省吾,廣永伸行,河野清孝

【事案の概要】
貸金請求に対し,債権保全を必要とする相当の事由があるときには,貴行の請求によって貴行に対するいっさいの債務の期限の利益を失い,直ちに債務を弁済しますという約款が,10条の直接適用又は同条の準用ないし類推適用により無効と主張した。

【判断の内容】
当事者において債務者の期限の利益喪失にかかる合意をすることは契約自由の原則上有効であるというべきであるから(最高裁判所昭和39年(オ)第155号 同45年6月24日判決・民集24巻6号587頁参照),消費者契約法の趣旨や民法1条2項に照らしても,本件約款の効力を否定することはできないものと いうべきであるとして,排斥した。(傍論)

◆ H15.03.26さいたま地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第2347号違約金請求事件
金融商事判例1179号58頁,私法判例リマークス29号50頁
裁判官 豊田建夫,松田浩養,菱山泰男
確定

【事案の概要】
消費者が,LPガスの切り替え工事,ボンベ交換の契約後1年未満で販売会社を変更した場合には,88,000円の違約金を支払う旨の違約金条項は,9条1号により無効であると主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 本件においては,平均的な損害について事業者から具体的な主張立証がない以上,「平均的な損害」やそれを超える部分を認定することは相当ではないとし,88,000円の返金を命じた。

◆ H15.04.22東大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第234号損害賠償請求事件
消費者法ニュース56号148頁
控訴審 H15.09.26大阪地裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,消費者が,売買代金の返還を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,1条及び10条に照らして無効であるとして消費者からの請求を全面的に認めた。

◆ H15.05.13千葉簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)1312号,1313号貸金請求事件
消費者法ニュース65号28頁
裁判官 井上隆義
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信して保証人となった,貸金業者はその事情を知っていたとして,第三者による詐欺(民法96条2項)による取消しを主張した。

【判断の内容】
主債務者(第三者)による欺罔行為により,実質的な借主が別人であることを知らなかったこと,貸金業者担当者がそのような本件背景事情を単に知っていたと いう以上に相当程度に関与していたことを認定し,民法96条2項の要件を満たすとして,第三者による詐欺取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.05.14東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)第85680号立替金請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 廣瀬信義

【事案の概要】
絵画のクレジット代金を支払わなかった消費者に対し,クレジット会社が代金の支払いを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,立替払契約の取消を認め,請求を棄却した。
① 販売店の担当者が「退去させない」旨告げたわけではないが,担当者の一連の言動はその意思を十分推測させるものであり,販売店の不適切な勧誘行為に困惑し,自分の意に反して契約を締結するに至ったものであるとして,4条3項2号に該当する。
② 取消権を行使した日は契約日から6ヶ月以上経過していたが,商品の引渡日からは6ヶ月が経過していなかったところ,引渡しを受けた段階でもいまだ困惑状態が継続していたとして,引渡しの時から取消権の行使期間が進行するとして,取消権の行使は有効である。

◆ H15.07.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1789号学納金返還請求事件,平成14年(ワ)第1832号入学金返還請求事件,平成14年(ワ)第2642号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1825号46頁,消費者法ニュース56号165・167頁
裁判官 水上敏,福井美枝,尾河吉久
控訴審 H16.08.25大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学納金の法的性格について,特段の事情がない限り,その名目にかかわらず,広い意味ではすべて大学等が提供する狭義の教育活動その他の役務,施設利用 の対価であるとし,そのうち,入学金の法的性格について,学生としての地位を取得するについて一括して支払われるべき金銭であって入学に伴って必要な学校 側の手続き及び準備のための諸経費に要する手数料の性格を併せ有するとした。
② 「平均的な損害の額」(9条1号)の主張立証責任は事業者が負うとした。
③ 在学契約の始期となっている4月1日以降に入学を辞退した者については,学生としての身分を取得した以上,大学は入学金に対応する契約上の義務を履行 済であるとして,入学金の返還は認めず,それ以外の学納金の返還を認めた。4月1日より前に入学を辞退した者については入学金と授業料の返還を命じた。い ずれも,平均的損害の主張立証が不十分,またはないとして,学納金不返還特約全体が無効とした。

◆ H17.08.18郡山簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第2248号授業料請求事件
未登載
裁判官 坂井和雄

【事案の概要】
高校を卒業した浪人生が予備校に入学後2,3日でやめたところ,予備校から授業料等不返還特約に基づき授業料等70万5000円の支払を求められた(まだ支払っていなかった)事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の主張立証責任は事業者が負う。
② 本件では,平均的損害の立証がなされたとはいえない。
として,9条1号により予備校の請求を棄却した。

◆ H15.09.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9615号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1838号104頁,判例タイムズ1143号276頁
裁判官 中村次,宮武康,藪崇司
控訴審 H16.5.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例であり,不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 入学金は,大学に入学しうる地位ないし資格の対価(一種の権利金)としての性質を有する。いったん地位を取得した以上返還する義務はない。
② その他の学納金については,本件大学が定員100名で,ほぼ毎年正規合格者のうち実際に入学する者が30%未満であり,学納金納付後に入学を辞退する 者が20名以上いること,欠員補充のため繰り上げ合格させた者で納付後に辞退する者もいること,例年3月30日ころまで10回程度も繰り上げ合格を実施し ていること等から,欠員補充が困難となる一定時期以降,学納金不返還によって欠員が生じること及び欠員が生じた場合に発生する損害を可及的に回避しようと 試みることは,全く不合理とは言い切れず,いまだ公序良俗に反するとまでは言えないとして,不返還条項を有効とした。

◆ H15.09.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第178号損害賠償請求控訴事件
消費者法ニュース57号157頁
裁判官 谷口幸博,阪口彰洋,辻井由雅
原審 H15.4.22東大阪簡裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,売主の瑕疵担保責任に基づき売買代金,葬儀費用等の賠償を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,そもそも売主の瑕疵担保責任を排除するものではないとして,同条項により瑕疵担保責任免除の合意があったとの売主の主張を排斥し,瑕疵担保責任を全面的に認めた。

◆ H15.10.03大津地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第540号損害賠償請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース58号129頁
裁判官 山口芳子

【事案の概要】
パソコン講座の受講生が,厚生労働省の教育訓練給付制度を利用して受講することを希望していたが,講座運営者の説明不足のために同制度を利用できなかったとして,不法行為に基づき受講料相当の損害金等の支払を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行前(平成13年2月28日に受講申し込み)の事案であったが,同法1条,3条1項及び4条2項の趣旨を根拠として,事業者は取引上の信義則により適切な告知・説明義務を負うとして,損害賠償の一部を認容した。
② 損害について,受講料全額ではなく,給付制度が利用できれば得られたであろう給付金額部分のみを損害として認め,かつ,受講申し込みの際,給付制度を利用して受講することを申し出ていないことから3条2項の趣旨及び公平の見地から2割を過失相殺した。

◆ H15.10.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6374号,第9624号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1148号289頁,判例時報1838号104頁,国セン暮らしの判例集HP2004年4月
裁判官 佐賀義史,永谷幸恵,神原浩
控訴審 H16.05.19大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H15.10.16大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6377号学納金返還請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号212頁
裁判官 田中俊次,朝倉佳秀,小川紀代子

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約類似の無名契約とした。
② 在学契約が消費者契約となることについて,1条の趣旨(交渉力の格差からの消費者の保護)が妥当することを指摘した。
③ 入学金について,入学し得る地位を取得することの対価であり,入学事務手続等の対価たる性格をも有するとして返還義務を否定した。
④ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者にあるとした。

◆ H15.10.16大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(少コ)第261号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 原司

【事案の概要】
6ヶ月間入居した物件を解約したところ,本件賃貸借契約の特約に基づき,敷金40万円のうち30万円を差し引かれた賃借人が,敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
入居の長短にかかわらず一律に保証金を差し引くこととなる敷引特約は,民法等他の関連法規の適用による場合に比し,消費者の利益を一方的に害する条項であるといえ,10条により無効であるとし,敷金の返還を命じた。

◆ H15.10.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9600号学納金返還請求事件
判例タイムズ1148号214頁
裁判官 塚本伊平,金子隆雄,小山恵一郎

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び制服代金等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,学生が被告に対して,教育の提供等という事務を委任することを本質的要素とする有償双務契約であり無名契約であるとした。
② 入学金について,その入学手続を完了した時点において,被告学校に入学できることとなった資格ないし地位の対価として支払われるもので,いわば権利金的性質を有するものとして,返還義務を否定した。
③ 制服代金について,在学契約と制服の売買契約とは別個独立の契約であり,独立の解除事由が主張されていないとして,返還を認めなかった。

◆ H15.10.23東京地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20642号,23679号,24245号,平成15年(ワ)第1738号各不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1846号29頁
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
③ 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
④ 大学が2条2項の「法人」にあたるかについて,情報の質及び量並びに交渉力に格差のある大量的契約の当事者については公益性を問うことなく規制の対象とするのが同法の趣旨であると指摘し,法人に含まれるとした。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は事業者側にあるとした。
⑥ 授業料を返還しないとの特約について,4月1日より前に入学を辞退した者について,9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H15.10.23東京地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第22807号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士

【事案の概要】
私立中学入学手続後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。学納金不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
③ 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
④ 授業料の不返還合意は,在学契約を締結した受験生の窮迫・軽率・無経験などに乗じて,はなはだしく不相当な財産的給付を約束させる行為に該当すると認 められる場合に限り公序良俗に反するものとして無効になると解すべきであるとし,本件不返還合意については公序良俗に反しないとして返還義務を否定した。

◆ H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第874号不当利得返還等本訴請求事件,平成14年(ワ)第470号受講料等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号58頁,214頁
裁判官 安達嗣雄
控訴審 H16.07.30大阪高裁判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
易学受講契約について,4条3項2号により,付随契約について4条1項2号によりそれぞれ取消しを認めた。
①法4条3項2号の「当該消費者を退去させないこと」とは,物理的であると心理的であるとを問わず,当該消費者の退去を困難にさせた場合をいう。
②消費者の運勢や将来の生活状態は,法4条1項2号にいう「将来の変動が不確実な事項」にあたる。

◆ H15.10.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9603号学納金返還請求事件
判例タイムズ1147号213頁
裁判官 森宏司,横山巌,三輪睦
控訴審 H16.05.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.10.29千葉地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第38号貸金請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース65号32,159頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.10.30東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
納入した留学斡旋費用の不返還特約の無効を主張し,納入した50万円の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は,9条1号により「平均的な損害の額」を超える部分は無効となると判示した。その上で損害額を民事訴訟法248条に基づき10万円とした。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9633号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
公募推薦入試方式及び外国人留学生編入学・転入学試験利用方式による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任に ついて,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた

◆ H15.11.07大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6370号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
一般入学試験による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任について,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(3)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9608号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①入学金は「入学資格を得た対価」であり,反対給付は既に付与されており,②授業料等については,不返還特約は公序良俗に違反しないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.11.10東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第10908号授業料返還等請求事件
判例時報1845号78頁,判例評論547号14頁,判例タイムズ1164号153頁,消費者法ニュース61号161頁,NBL785号72頁
裁判官 齋木教朗

【事案の概要】
大学医学部専門の学習塾において講習を受けていた受講生が,申し込んでいた同塾の①冬期講習を冬期講習開始前に,②年間模擬試験を中途で,それぞれ解約して,冬期講習受講料全額と模擬試験の未実施分受講料の返還を求めた。塾側は,受講契約を解除できないとの合意が成立しており解除は認められないなどと主張した。

【判断の内容】
契約の一部について,契約解除を制限する特約の成立を否定した上で,特約の成立部分について,実質的に受講料の全額を違約金として没収するに等しく,信義則に反する等として,法10条により無効であるとして,受講料の返還請求を認めた。

◆ H15.11.27京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1815号,第2661号,平成15年(ワ)第990号学納金返還請求事件
最高裁HP

裁判官 八木良一,飯野里朗,財賀理行
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.13大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(2)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.01大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.11大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日に入学を辞退しており,前納金の返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6376号,9605号,9628号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,相澤聡
控訴審 H16.10.22大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行後に在学契約を締結した原告のうち,3月31日までに入学を辞退した者について,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 授業料等の入学金以外の学納金は教育役務の対価である。
③ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にある。
④ 4月1日が到来するまでになされた入学辞退について大学に平均的損害はなく,授業料不返還特約は9条1号に反して無効である。しかし,4月1日以降の入学辞退については特約に係る学納金の額が平均的損害を超えるものは認められないから同条には反しない。
⑤ 授業料不返還特約は信義則違反とまで言えず10条無効にならない。また公序良俗にも反しない。

◆ H15.12.24京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1814号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 山下寛,鈴木謙也,梶浦義嗣

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.24神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1409号,1717号,2168号各学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 田中澄夫,大藪和男,三宅知三郎

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日までに退学願いの提出又はこれに代替しうる客観的に明確な方法で通知したことの主張立証がなく,4月1日の到来によって授業料等の返還を求めうる地位を失ったとして,返還義務を否定した。
また,入学金については「入学し得る地位を得たことの対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6375号等学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 角隆博,井上直哉,長田雅之

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以前に入学を辞退した者に対して授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.08大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.09大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

国民生活2007年1月号64頁,国セン暮らしの判例集2007年1月

【事案の概要】
パソコン内職をすれば月々5万円以上の収入になるといわれて教材をクレジットで購入したが,その収入が稼げなかったため4条1項1号等により立替払契約の取り消し,クレジット会社に既払い金の返還を求めた。

【判断の内容】
4条2項により立替払契約の取消しを認め,クレジット会社に対し代金の返還を命じた。

◆ H16.01.14神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.20大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.09.03大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.21大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

判例MASTERⅡ
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.01.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の返還については否定。授業料等についても,学校年度の開始(4月1日)後に契約を解除した場合には,不返還特約は9条1号及び10条によっても無効ではないとし,返還を否定した。

◆ H16.02.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.05東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第28402号求償金請求事件
判例タイムズ1153号277頁,金融法務事情1717号76頁
控訴審 H16.05.26東京高裁判決

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。

◆ H16.02.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.13大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金及び授業料とも在学契約に伴う大学の種々の義務に対する対価として同じ性質であることを前提に,授業料を返還しないことは9条1号にいう平均的な損 害の額を超える部分に該当するとして返還を命じたが,入学金は平均的な損害の額を超える部分には該当しないとして返還義務を否定した。

◆ H16.02.18岡山地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1058号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 小野木等,政岡克俊,永野公規

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
得べかりし利益は,9条1号の平均的損害には含まれない。本件特約のうち,授業料を返還しない部分は9条1号により無効であるとして返還を命じ,入学金に ついては「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し,入学金の返還を認めない部分は,10条にも民法90条にも該当しないとした。

◆ H16.02.19大分簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第267号原状回復等請求事件
消費者法ニュース60号59頁
裁判官 角南昌伸

【事案の概要】
自宅の床下に拡散送風機等を設置する請負契約の締結前,業者の従業員に対し,退去すべき旨の意思を表示したにもかかわらず退去しないことにより困惑し,そ れによって契約を締結したとして,契約を取り消すとともに,業者に対して既払い金の返還を,信販会社に対しては抗弁対抗により,債務不存在の確認を求め た。

【判断の内容】
「そのようなものは入れんでいい,必要ない。」「帰ってくれ。」「換気扇は必要ない,私らを騙しているんじゃないんか。」などと言っているにもかかわら ず,午前11時ころから午後6時30分ころまで勧誘して契約を締結したことにつき,不退去により困惑して契約を締結したものとして,請負契約の取消しを認 め,業者に対して既払い金の返還請求を,信販会社に対しては抗弁対抗を認め債務不存在を確認した。

◆ H16.02.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9604号,10840号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,入学金のみを支払った者は入学金を,入学金及び初年度授業料等を支払った者はこれら双方の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料等を納めた者の退学は入学式(4月5日)及び学科ガイダンス(4月8日)を受けた後の4月8日であったが,授業料等を返還しないとの特約は9条1号 に該当する条項であり,被告には平均的損害は認められず9条1号により無効であるとして全額の返還を認め,入学金については「入学しうる地位の対価」とし て返還義務を否定した。

◆ H16.02.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ツ)第9号貸金請求上告事件
消費者法ニュース65号35頁
裁判官 鬼頭季郎,小池信行,任介辰哉
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H16.03.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6380号,9634号学納金返還請求事件,平成15年(ワ)第434号学納金返還請求事件
消費者法ニュース60号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡寛,小堀悟,小川暁

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は在学契約申込み資格を保持し得る権利取得の対価及び入学手続事務に関する諸費用に充当されるもの。所定の書類を入学式以前の期日までに提出していなかったり,入学式欠席で何の連絡もしていない者はこれらによって在学契約を黙示的に解除したものである。
退学については保証人との連署で退学届を提出する旨の学則があっても民法の準委任規定の趣旨等に照らして契約関係からの離脱の自由を制約することはできないから,この学則は障害となるものではなく解除は有効。
学友会費等は代理徴収だから,返還請求は学友会等にすべきである。公募推薦入学試験についても入学辞退による不当利得返還請求権をあらかじめ,放棄するま での意思を認めることはできない。平均的損害の立証責任は消費者にある。この損害は民法651条2項に基づく損害賠償であるから解除が不利益な時期になさ れた結果の損害を指す。
3月31日までに解除した場合,被告には損害はなく,4月1日以降の解除は春学期の授業料等相当額の限りで保護すべき利益がある。
なお,平均的損害については他の同種大学における前期(春学期)授業料の平均値について原告が立証していないから,被告大学等の初年度春学期の授業料等の 額をもって平均的損害と解するほかない。以上のことより,授業料等の返還については,3月31日までに解除した者については,返還しない旨の特約は9条1 号により無効であるとして返還を命じ,4月1日以降の入学辞退者については,春学期授業料等の返還を否定し,入学金については返還義務を否定。

◆ H16.03.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第162号敷金返還請求事件,第1214号損害賠償請求事件,第2075号損害賠償請求反訴事件
最高裁HP兵庫県弁護士会HP国セン暮らしの判例集HP2004年6月
裁判官 田中義則
控訴審 H16.12.17大阪高裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。消費者契約法に基づき自然損耗分を借主負担と定めた特約自体を無効とした全国で初めての判決である。

◆ H16.03.22大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9601号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 西川知一郎,木太伸広,山本陽一

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した合格者が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を払った時点で双方の間に在学契約関係を成立させることを内容とする法律関係が成立しており,所定の期限までにその他の学納金を納入するなど所定の 手続を完了することにより,在学関係を成立させることができる地位を合格者は得ていたとし,入学金は入学に向けての人的,物的設備の整備や事務手続き等の 経費を賄うものとしての性格に加えて,入学しうる地位の対価であるとして返還義務を否定した。

◆ H16.03.22東京地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6381号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
大学合格後,3月10日ごろ学納金返還システムの問い合わせをし,4月1日入学式を欠席した合格者が3月10日または遅くとも4月1日に入学を辞退したことにより,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日の入学式欠席について大学からその理由の確認があり,この時に入学辞退の意思表明が認められるが,入学辞退が4月1日になされていることによって 大学には少なくとも平均的損害として,半年分の授業料及び施設費等の損害が生じているとして,春期授業料等の返還を否定した。入学金については「学生とし ての地位の取得の対価」であるとともに「入学の手続等の手数料又は費用である」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9620号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
4月1日より前に入学を辞退した合格者が,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
平均的損害について立証責任は消費者にあるとし,被告が平均的な損害額を4年分の授業料相当額としたのに対しては,在学契約は準委任又はこれに準ずる性質 を有する無名契約であり,ここにいう損害とは,契約が存続・継続することを想定していたため,他の収入を得る機会を失ったことなど,解除が不利な時期にさ れたことから生ずる損害に限定すべきであり,受け取るはずであった授業料の逸失をもって平均的損害ということはできないとし,また,被告が非財産的損害が 生じたとしたのに対しては,9条1項にいう「平均的損害」には非財産的損害が含まれるとは解することができないとした。そして,入学辞退が4月1日より前 であったことから,4月1日までの入学辞退による平均的な損害の発生はないから,入学金を除く春期授業料等については返還すべきであり,春期授業料等を返 還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「学生としての地位の取得の対価」であり,「入学手続及び受入準備に要 する手数料又は費用」「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.30仙台地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第343号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 髙木勝己

【事案の概要】
合格者が3月22日入学を辞退し,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学手続上の諸費用」であるとともに「入学できる地位を取得することへの対価」であるとして返還義務を否定した。
なお,平均的損害については,事業者たる被告がその情報,証拠を保有しているのであるから被告が主張,立証責任を負うとした。また,被告が4年間の学納金 全額が平均的損害になるとしたのに対し,入学辞退者が相当数あることを予測しており,定員を大きく上回る数の学生が入学している事実が認められ,事前に予 測できた範囲内の辞退者から4年間の学納金が得られなかったとしても,それは平均的損害とはいえず,原告の入学辞退が被告の予測の範囲を超えていると認め られず,むしろ定員を大きく上回る入学者がおり,平均的損害は発生しているとは認められないとした。
なお,代理徴収している後援会費等については預り金的性格であり,教育役務等の提供に密接に関連するものであるから,授業料と一体として検討されるべきものとしている。

◆ H16.03.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20640号不当利得返還請求事件
未登載
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち授業が開始される前に在学契約を解除していない者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.20名古屋地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
除籍の日の翌日から当該会計年度の末日までの期間に対応する授業料等の額をもって9条1号にいう「平均的な損害の額」と解するのが相当とし,授業料を返還 しないとの特約は同号によっても無効とならないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.22大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第2237号立替金請求控訴事件
消費者法ニュース60号156頁
裁判官 井上正明,中村哲,久保田浩史

【事案の概要】
一般市場価格として41万4000円と表示された値札を付けて陳列されていたファッションリングを29万円で購入した購入者に対し,信販会社が立替金の支払いを求めた。

【判断の内容】
一般的な小売価格は4条4項1号に掲げる重要事項に該当し,これに不実告知があったとして,購入者による売買契約の取消しを認めた。

◆ H16.04.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20659号,第26683号,平成15年(ワ)第4440号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 宇田川基,室橋秀紀,岡部純子
控訴審 H17.03.30東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
①入学金は,在学契約により取得する地位及び利益に対する対価であり,返還を求めることはできないとした。
②平均的損害の立証責任は事業者側にあるとした。
③消費者契約法施行前の契約については返還を認めなかった。
④消費者契約法施行後の在学契約につき,3月31日までの入学辞退者については授業料の返還を認めた。
⑤不返還合意は消費者契約法10条に該当しないとした。

◆ H16.05.19大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第3268号学納金返還請求控訴事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 小田耕治,山下満,下野恭裕
第1審 H15.10.06大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H16.05.20大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
原審 H15.10.28大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H16.05.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ネ)第1432号求償金請求控訴事件
判例タイムズ1153号275頁,金融法務事情1717号74頁
第1審 H16.02.05東京地裁判決
裁判官 雛形要松,山崎勉,浜秀樹

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。
事業者と「個人」との間で契約を締結したことについては消費者契約法の適用があると主張する側に主張立証責任があるが,「事業として又は事業のために契約の当事者となったこと」については,その不適用を主張する側に主張立証責任があることを前提として判断した。

◆ H16.06.04大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.06.11京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第2138号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース61号157頁
裁判官 福井美枝
控訴審 H17.01.28大阪高裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H16.06.25神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第335号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 岩谷憲一

【事案の概要】
通信機器のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,当該リース契約の締結に際し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして,リース契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
取扱店とリース会社との密接な関係を前提に,当該従業員による勧誘が「NTTの回線がアナログからデジタルに変わります。今までの電話が使えなくなりま す。この機械を取り付けるとこれまでの電話を使うことができ,しかも電話代が安くなります。」と虚偽であったことに関し,4条1項1号によるリース契約の 取消しを認めた。



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