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◆ H22.11.12神戸地裁尼崎支部判決

判決年月日: 2010年11月12日
2012年12月1日 公開

判例タイムズ1352号186頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 マンションの一室(本件居室)につき被告を賃貸人、原告を賃借人とする賃貸借契約を締結した際、原告は被告に150万円の敷金を預託した(本件預託金)。本件預託金に関しては「契約時より起算した経過年数が10年未満である場合は、預託された敷金から40%を差し引いた残額を返還する」との特約(本件敷引特約)があった。契約締結から約8年7カ月後、原告は賃貸借契約の解除を申し出、本件居室を明け渡したことから、被告は本件敷引特約に従い、本件預託金150万円から40%差し引いた90万円から日割賃料等を差し引いた額を原告に返還した。これに対し原告は、本件預託金は賃貸借契約から生じる債務を担保するという敷金の性質を有しているが、本件敷引特約は、民法661条1項、587条適用の場合に比し消費者である賃借人の権利を制限し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するため、法10条に反し無効であるとし、差し引かれた60万円の返還等を請求した。

【判断の内容】
 敷金とは、一般に、賃貸借契約終了後、目的物の明渡義務履行までに生ずる損害金その他賃貸借契約関係により賃貸人が賃借人に対し取得する一切の債権を担保するものと解される。本件敷引特約は契約後の事情によって定まるものであり、礼金や権利金等の当初から返還されないこととなっている一時金とは異なり、賃借人に生じた債務以外の理由で敷金の一部が差し引かれる定めであるから、任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重する条項である。しかしながら、敷引特約は一般に行われているものであり、原告も本件敷引特約を理解したうえで賃貸借契約を締結した等の事情からすれば、本件敷引特約が消費者の利益を信義則に反する程度に両当事者間の衡平を損なうものとはいえないとして、原告の請求を棄却した。

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