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「2012年2月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H24.02.29京都地裁判決

2012年2月29日 公開

平成21年(ワ)第4696号更新料等返還請求事件
消費者法ニュース92号257頁、LLI/DB、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 松本清隆

【事案の概要】
貸室の賃貸借契約に際し締結した基本清掃料特約(退室時,賃借室の原状復帰における室内清掃料金2万6250円を支払うものとし,基本清掃料を敷金より差し引くものとする)及び更新料特約(期間終了2か月前までに原告被告協議の上更新しうるものとし,賃借人は,賃貸人に,次年度更新料15万円を支払うものとする)が消費者契約法10条により無効か否かが争われた事案。

【判断の内容】
 通常損耗に含まれる汚損の原状回復費用が賃料に含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるべき基本清掃料特約は,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するとはいえず,また賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が高額に過ぎるなど特段の事情がない限り,同法10条には該当しないが,本件賃貸借契約の更新料特約は,契約期間が1年であり,賃借人の負担などからすると,更新料の上限は年額賃料の2割が相当であり,これを超える部分の返還を求める限度で理由があるとした。

◆ H24.02.27大阪高裁決定

2012年2月27日 公開

平成23年(ラ)第1257号間接強制決定に対する執行抗告事件
判例時報2153号38頁
裁判官 前坂光雄 白井俊美 前原栄智
京都消費者契約ネットワーク

【事案の概要】
不動産会社に対する定額補修分担金条項の使用差し止めを命ずる判決に基づき、適格消費者団体が、不作為債務の履行と違反行為1回に付50万円の支払を命じる間接強制命令の申立をし、これを認めた決定に対して、不動産会社が不作為義務に違反するおそれがあるとの認定は誤りであると争った。

【判断の内容】
① 不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制を決定するには、債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り、債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はなく、かつ、この要件は、高度のがい然性や急迫性に裏付けられたものである必要はないと解するのが相当。
② 本件間接強制申立の時点で、不動産業者は、訴訟において消費者契約法に反しないと争って報道機関にも表明しており、判決確定後には見解表明をしていないこと、おそれがあるとした判決確定後、格別の状況の変化がない事からは、不作為債務に違反するおそれがあると認めるのが相当。
③ 抗告人が、すでに使用しておらず、今後使用することはないと表明したが、不作為債務の内容及び相手方(適格消費者団体)と抗告人(不動産会社)の関係からすれば、本件の不作為債務に違反し、又は違反している兆候があることを立証することは極めて困難であると考えられることを考慮すると、本件において、抗告人が不作為義務に違反するおそれがあることを否定するのは相当でない。

◆ H23.12.13京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成20年(ワ)第3842号解約金条項使用差止請求事件、平成21年(ワ)第3478号解約金請求事件、平成23年(ワ)第1094号解約金返還請求事件、平成23年(ワ)第2581号不当利得返還請求事件
消費者庁HP判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)、判例時報2140号42頁、金融商事判例1387号48頁、現代消費者法17号79頁
裁判官 瀧華聡之、奥野寿則、堀田喜公衣
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワークHP
事業者 株式会社セレマ、株式会社らくらくクラブ
控訴審 H25.01.25大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が冠婚葬祭の相互扶助や儀式設備の提供等を業とする株式会社セレマ及び旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する募集業務等を業とする株式会社らくらくクラブに対し、①被告セレマ及び被告らくらくが消費者との間で締結している互助契約又は積立契約において、それぞれ契約解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解約金を差し引くとの条項を設けていることに関し、同条項は消費者契約法第9条第1号又は同法第10条に該当するものであり、消費者に対し解約金を差し引くことを内容とする意思表示を行わないこと、②①が記載された契約書雛形が印刷された契約書を破棄すること、③従業員らに対し、①の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書の破棄を指示することを求めた事案。

【判断の内容】
いずれも、以下の理由から請求を認容した。
(被告セレマに対し)
① 9条1号にいう「平均的な損害」とは、契約の解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生じる損害の額の平均値をいう。
② 一人の消費者と被告セレマとの間で締結される消費者契約である本件互助契約にあっては、「平均的な損害」の解釈にあたっても、一人の消費者が本件互助契約を解約することによって被告セレマに生じる損害を検討する必要がある。
③ 本件互助契約に関して消費者から冠婚葬祭の施行の請求があるまでにされた解約によって、月掛金を1回振替える毎に被告セレマが負担した58 円の振替費用をもって被告セレマに損害が生じているというべきであり、その限度を超える解約手数料を定める解約金条項は9条1号により無効である。
(被告らくらくに対し)
④ 不特定多数の消費者との関係での被告らくらくの業務維持及び販売促進のための費用については、一人の消費者による契約の解約にかかわらず、常に生じるものといえるため、「平均的な損害」には含まれない。
⑤ その他の費用については、当該一人の消費者が契約し、又は当該契約を解約することがなければ被告らくらくが支出することがなかった費用といえるため、「平均的な損害」に含まれうるが、本件においては上記費用の正確な数値が算定できない。
⑥ 本件積立契約においては、事務手数料として月額150円が被告らくらくに支払われており、外交員の集金手当、振替費用等は上記費用をもってまかなわれているとみるべきであり、解約手数料を徴収するとする解約金条項は9条1号により無効である。

◆ H23.12.20京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成23年(ワ)第1875号未公開株勧誘行為等差止請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 瀧華聡之、奥野寿則、堀田喜公衣
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 J・C・I投資事業有限責任組合

【事案の概要】
適格消費者団体が、投資事業として消費者と契約を行うJ・C・I 投資事業有限責任組合に対し、不当勧誘の差し止めを求めた事案。

【判断の内容】
特段の主張のない答弁書を提出しただけで欠席したため、請求原因事実に争いがないものとした上で、差止ができる範囲について以下のとおり判断した。
① 「未公開株式の購入を勧誘してはならない」との請求については、4条1項1号の不実告知をする場合に限り、当該未公開株式の客観的な価値と比較して、著しく異なる価額を告げて勧誘する行為の差止の限度で認めた。
② 「未公開株式の購入を勧誘するに際し、被告が内閣総理大臣の登録(金融商品取引法第29条)を受けておらず、金融商品取引業を行うことが法律上禁止されている者であることを告げずに勧誘をしてはならない」との請求については、不利益事実の不告知(4条2項)にあたるとして認めた。
③ 「第三者をして、消費者に対して、株式を購入できる者が限定されている旨を告げさせてはならない。被告は、第三者をして、消費者に対して、株式を買い取る旨を告げさせてはならない。」との請求については、あらかじめ購入できる者が限定されていないのに告げること、株式を買い取る具体的予定がないのに買い取る旨を告げる行為の差止の限度で認めた。

◆ H24.01.17京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成22年(ワ)第4222号更新料条項使用差止等請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 松本清隆、井川真志、千葉康一
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ジェイ・エス・ビー
控訴審 H24.06.29大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が、不動産業者である株式会社ジェイ・エス・ビーに対し、更新料条項が10条により無効であるとして、主位的に、更新料条項を含む意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求め、予備的に、更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍以上の更新料を支払う旨の条項につき、主位的請求と同様に、その意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求めた事案。

【判断の内容】
請求棄却。
① 更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものであり、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。
② 更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
③ 更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
④ 被告が現に使用していた更新料条項も、具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情にかかわらず高額に過ぎると直ちに断定できず、特段の事情があると認めることができないことから、法10条により無効であるということはできない。
⑤ 更新料条項が無効となる場合があることを理由とする全部差止請求の可否については、「具体的に一部の消費者については有効となりうるとしても無効となる場合があるときにはおよそ更新料条項の使用が差し止められるべきであるという原告の主張は採用することができない」とした。
⑥ 主位的請求について一部認容が可能との主張については、「裁判所において更新料の額が高額に過ぎるか否かの評価根拠事情を特定する必要があるが」「根拠事情は多様であるから、認容すべき範囲を確定することができないおそれがある」とともに、「原告の主位的請求につき一部認容を認めるとなると、防御対象となる前記の根拠事情の多様さゆえに、被告に対して不意打ちとなるおそれもある」ことから、認めることはできないとした。
⑦ 予備的請求について、「更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍の更新料を支払う旨の条項が個々の賃貸借に伴う個別具体的な事情を考慮することなく直ちに前記特段の事情に該当して法10条により無効となるとは認められないし、他の特段の事情の存在によりこれが無効となる場合があり得るとしても、このことを理由として、その条項の使用の全部の差止めを認めることはできない。また、裁判所において更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至る根拠となる事情を特定してその一部を認容することができないことも、主位的請求の場合と同様である。」として原告の請求をいずれも棄却した。



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