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「不当条項」カテゴリー|消費者契約法判例集

◆ H25.04.19東京地裁判決

2014年12月14日 公開

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
ジュリスト1462号128頁,判例秘書
裁判官 三角比呂,足立堅太,高畑桂花
控訴審 H25.09.18東京高裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起した事案。スイスの裁判所を専属管轄とする国際的専属的裁判管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについて争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,本件管轄の合意について10条該当性を判断しつつ,無効とならないとして,訴えを却下した。
① 国際裁判管轄の合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である日本法であると解するのが相当であり,法例7条は適用されない。
② 原告らは一個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,被告は法人であるから,本件管轄合意は,消費者契約に該当し,10条が適用されるというべき。
③ 本件管轄合意の内容は,確かに原告らに常居所国における訴訟追行を認めないという点で,原告らに不利益を被らせるものではあるが,原告らの資力からすれば,チューリッヒで訴訟追行をすることが著しく困難で,看過し難い損害を受けるとは認められないこと,また,本件管轄合意は,その内容,成立経緯などに照らし,被告が,原告らとの間の情報や交渉力の格差を利用して,殊更原告らに一方的に不利益な内容の合意をさせたなどの事情も認められない。
④ 以上の本件における一切の事情を総合すると,本件管轄合意は,消費者契約法の趣旨に照らし,なお原告らの利益を一方的に害し,信義則上原告らと被告との間の衡平を損なう程度に原告らの保護法益を侵害するとはいえず,10条に違反しない。

◆ H26.04.24大分地裁判決

2014年12月14日 公開

平成24年(ワ)第499号違約金条項使用差止等請求事件
大分県消費者問題ネットワークHP(判決文あり,PDF)
消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 大分県消費者問題ネットワーク
事業者 北九州予備校(学校法人金澤学園)

【事案の概要】
 中途退学時の学費返還は原則として行わないとした契約条項が9条1号により無効となる等として,大学受験予備校に対し当該条項の差し止めを求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から,当該条項の使用の差し止めを命じた。
① 当該予備校では,年度途中の入学を予定しており,現に途中で入学する者もいて,その際の入学試験もない。
② 当該予備校では,定員に達していない校舎も,定員に達した校舎も,定員数に縛られることなく新入生を受け入れている。
③ したがって,一人の希望者との間で在学契約を締結したために別の一人の希望者との在学契約締結の機会が失われたといった関係はおよそ認められない。
④ そうすると,いったん在学契約を締結した者が後にこれを解除した場合,これによりいくらかの損害を受けることはあり得るとしても,中と入学者を受け入れること,その他の対策を講じることは十分に可能であり,少なくとも,本件不返還条項が定めるような,当該消費者が納付した解除後の期間(いまだ役務を提供していない機関)に対応する授業料の全額について,一般的客観的に損害を被ることにはならないというべき。

◆ H26.08.07京都地裁判決

2014年12月14日 公開

平成23年(ワ)第3425号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
ウエストロー・ジャパン,京都消費者契約ネットワークHP(判決あり,PDF)消費者庁HP(PDF)
裁判官 栂村明剛,武田美和子,阿波野右起
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社Plan・Do・See

【事案の概要】
 婚礼及び披露宴に関する企画及び運営等を業とする会社に対し、結婚式場のキャンセル料を定める条項が9条1号により無効となるとして,キャンセル料条項の使用差止め及び同条項が記載された契約書用紙の破棄を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から,原告の請求を棄却した。
① 本件申込金の不返還条項は9条1号の対象となる。
② 「平均的損害」には,逸失利益が含まれる。
③ 90日前以前に解除されたとしても,逸失利益は生じ,その後の再販売により代替的な利益を確保できたとしてもそれは損益相殺の問題。
④ 本件平均的損害は,以下の計算式により算定するのが相当。
  本件平均的損害=本件逸失利益ー損益相殺すべき利益
   =(解除時見積額の平均×粗利率)ー(解除時見積額の平均×粗利率×再販率)
   =解除時見積額の平均×粗利率×(1ー再販率)
   =解除時見積額の平均×粗利率×非販売率
  これによると,本件キャンセル料は,損益相殺後の本件逸失利益を下回っている。したがって,平均的損害額を超えない。

◆ H19.07.25東京地裁判決

2014年4月2日 公開

平成18年(ワ)21381号,25722号報酬金請求事件、着手金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 笠井勝彦

【事案の概要】
 税理士である原告に相続した遺産の相続対策業務を委任した後、業務遂行に不信感を抱いて契約を解除した被告に対し、原告が契約に基づく報酬を請求したところ(第1事件)、被告が原告に契約解除に基づく原状回復請求として着手金の返還を求めた事案(第2事件)。被告が,被告の事情により,委任業務の着手前に本件契約を解除したときは既払報酬の返還を請求せず,着手後に解除したときは原告の請求した報酬全額を支払うとの条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 原告からの報酬請求について,原告が行った業務遂行の内容等は安直で契約の主目的・内容に沿うものではない上、契約上の報酬金の定めも民法648条3項より消費者の義務を加重するもので、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するから10条により無効であるとして,報酬請求を棄却した。

◆ H18.01.31東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成16年(ワ)第14344号学納金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 石井浩、間部泰、川原田貴弘

【事案の概要】
 被告が設置する大学に合格し、入学金や授業料等を納入した後、他大学への合格を理由に入学を辞退した原告が、不当利得返還請求権に基づき、被告に対し、入学時納入金の返還等を求めた事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の立証責任は消費者が負うが,平均的な損害に関する情報及び証拠の多くは事業者側にあるものと認められるところ、消費者と事業者との間の情報の質及び量の格差を是正し、消費者の利益を擁護することを目的とする消費者契約法の趣旨にかんがみれば、平均的な損害の額を超えることが一応の合理的理由に基づいて認められた場合には、事業者において必要な反証がされない限り、消費者の立証責任は尽くされたものとして、立証された金額が平均的な損害の額であると事実上推定されると解するのが相当。
② 入学金は大学に入学し得る地位を取得することなどの対価であり、大学はその返還をすることを要しない。
③ 授業料・教育充実費については,入学予定者の入学辞退により何らかの平均的損害はないものと認めるのが相当であるから、授業料及び教育充実費を返還することを要しない旨の合意は9条1号により無効であり、被告大学はこれを返還することを要する。

◆ H18.05.25東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成17年(ワ)第16768号入学金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 松本明敏

【事案の概要】
 原告が、被告設置の大学の入学試験に合格し、入学時納付金として入学金及び授業料その他の費用を納付した後、入学を辞退したことにより在学契約は解除されたとして、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、未返還の学納金及びその遅延損害金の支払を求めた事案。

【判断の内容】
① 入学金は、入学し得る地位または学生たる地位取得の対価であり、入学事務手続の手数料としての性格を併せ有する。被告に対し入学金を納付したことにより、被告の原告に対する入学事務手続が履践されて本件在学契約を成立させることができ、本件大学に入学し得る地位を取得したのであるから、原告としては、納入した入学金の対価的利益を享受したのであり、原告から納付された入学金を取得することについて、被告に法律上の原因があるというべき。
② 授業料については,本件不返還特約は9条1号により無効であり,返還すべき。

◆ H17.03.15東京地裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ワ)第13205号貸金請求本訴,不当利得返還等請求反訴事件
判例時報1913号91頁,ウエストロー・ジャパン
裁判官 工藤正

【事案の概要】
 特定の法律事務所の弁護士らが主体となり、報酬を得る目的で、業として、債務整理を受任した依頼者のうちから大手消費者金融業者甲に対して不当利得返還請求権を有している不特定多数の者から甲に対して貸金債務を負担している不特定多数の者に同請求権を譲渡させ、これらの権利実現を訴訟等の手段を用いて実行している場合において、このような債権譲渡は、公序良俗に反し無効であるとされた事例。
 金銭消費貸借契約の債務不履行に基づく返済債務に関する債務弁済契約における賠償額の予定の定めには、利息制限法4条が適用されるか、消費者契約法9条2号が適用されるかが争われた。

【判断の内容】
 11条2項は、「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しているところ、利息制限法が、消費貸借契約の場合における相当な利得の利率及び遅延損害金の割合の上限を定めることを目的としていることに鑑み、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」については、利息制限法の規定が優先して適用されるものと解するのが相当である。そして、このことは、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」についての和解契約についても同様であると解するのが相当である。

◆ H17.04.22大阪高裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ネ)第1083号学納金返還請求控訴事件
民集60巻9号3698頁,ウエストロー・ジャパン
上告審 H18.11.27最高裁判決(5)

【事案の概要】
 学納金返還請求。①在学契約及び学納金の法的性格,入学辞退の法的効果,②在学契約に消費者契約法が一般的に適用されるか,③本件特約が9条1号により無効となるか,本件特約が10条により無効となるか,等が争われた。入学手続要綱等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものと見なす」などの記載があった。

【判断の内容】
① 学生からの在学契約解消については民法651条の類推適用を認め,同条1項により,いつでも在学契約を将来に向かって解除することができるものと解するのが相当であり,学生からの入学辞退の意思表示はこの在学契約解除の意思表示と理解するのが相当。
② 授業料等の不返還を定める部分は,9条1号に当たる。
③ 平均的損害の額の立証責任は,消費者が負う。
④ 3月31日までに在学契約を解除した場合,授業料部分は平均的な損害を超えるものとなる。
⑤ 4月1日以降に在学契約を解除した場合,学部・学科の授業内容,定員数,発生すると考えられる損害の内容,等の事情を考慮し,大学,各部,学科ごとに,20万円から30万円の範囲で平均的損害を算定した。
⑥ 本件特約には10条は適用されない。

◆ H15.11.26東京地裁判決

2014年3月15日 公開

平成14年(ワ)第27108号契約金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 遠山廣直

【事案の概要】
 被告らとの間で国際結婚仲介契約を締結したとするコンサルタント会社(原告)が、中国人女性を紹介したにもかかわらず、被告らが中国への渡航を中止したとして、違約金等の支払を求めた事案。損害賠償額の予定が9条により無効となるか,契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨、及び提出されたパスポートは一切返却しない旨の定めが10条により無効となるか等が争われた。

【判断の内容】
① 契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨の条項は,本来意思表示をもって足りる解約の意思表示について消費者である被告の利益を害する条項というべきであり,10条により無効となる。
② 提出されたパスポートは一切返却しない旨の条項は,消費者の海外渡航の自由を制限するものであって10条により無効というべきである。
③ 10条により当該条項が無効となるとしても,本件契約全体が無効ということは出来ない。

◆ H16.03.25山口簡裁判決

2014年3月15日 公開

平成15年(ハ)第406号,第411号貸金等請求事件,不当利得返還請求事件
消費者法ニュース60号109頁,兵庫県弁護士会HP
裁判官 德丸哲夫

【事案の概要】
 貸金業者である原告が、原告と訴外Aとの間の金銭消費貸借契約の連帯保証人である被告に対し、貸金残金等の支払を求めた(甲事件)のに対し、被告が、過払金が生じているとして、原告に対し、不当利得返還請求権に基づき過払金等の支払を求めた(乙事件)事案。約定利息の支払を遅滞することにより、当然に期限の利益を失う旨の条項と支払いの任意性について争われた。

【判断の内容】
 貸金業規制法43条の適用要件については厳格に解釈すべきこととあわせ,消費者契約法の消費者保護の精神を総合的に考慮すれば,契約証書等の内容については,債務者に弁済を強要することになるようなあいまいな表現を避けて,明確な記述をし,債務者に不利益を与えないようにすべきであると判示して,貸金業者の主張を排斥し,みなし弁済の適用を否定した。

◆ H24.09.12東京地裁判決

2014年2月15日 公開

平成23年(ワ)第19923号保険金請求事件
判例タイムズ1387号336頁
裁判官 畠山稔,高瀬保守,瀬戸信吉

【事案の概要】
 生命保険契約に基づく保険金請求事件。保険契約者が払込期月までに保険料を支払わず,その後1か月の猶予期間内に保険料の払込がないときは,本件保険契約が履行の催告を要することなく効力を失う旨の条項(無催告失効条項)が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,10条により無効とはならないとして,請求を棄却した。
① 民法541条の定める履行の催告は,債務者に債務不履行があったことを気付かせ,契約が解除される前に履行の機会を与える機能を有する。無催告失効条項は,保険料の支払を遅滞した場合に直ちに保険契約が失効するものではなく,民法541条により求められる催告期間よりも長い1か月以内に債務不履行状態が解消されない場合に初めて失効する旨を明確に定めている。
② 保険会社は,契約締結時に,保険料の支払状況を把握するシステムを構築し,保険契約者が保険料を予定どおりに支払わない場合には,原則として未入通知を送付する態勢を整えるとともに,全国的に多数の支社及び営業オフィスを有し,営業職員が保険契約者に対して電話,訪問等の方法で注意喚起を行う態勢を整えており,実際に原告に対して未入通知の送付や営業職員による注意喚起が行われており,上記態勢に沿った運用が確実に行われていた。
③ 以上によれば,無催告失効条項は10条にいう「信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しない。

◆ H25.07.03大阪地裁判決

2014年2月15日 公開

平成24年(レ)第1005号不当利得返還請求控訴事件
消費者法ニュース97号348頁
裁判官 黒野功久、浦上薫史、札本智広
第1審 東大阪簡裁平成24年(ハ)第521号

【事案の概要】
 消費者が、飼い犬を亡くなるまで施設に預けるという契約をしたが、その約1カ月後に当該契約を解約して費用の返還を求めたところ、契約書に「契約後の返金はできません」との不返還条項があることを根拠に返還を拒んだ事例。不返還条項が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,9条1号により無効となるとして,請求を認めた。
① 本件不返還条項は,本件終身預かり契約解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めに当たる。
② 平均的損害の主張立証責任は消費者側にある。
③ 本件代金の算定は,犬の大きさ,年齢,健康状態が考慮され,余命から預かる期間を想定していたところ,期間満了前に代金を返還する場合,利潤の一部を失ったり,解除の有無にかかわらず支出を避けられない経費の財源を失うことにはなるが,他方,えさ代等の支出を免れるし,新たな取引も十分可能。
④ この他,本件契約の他の定めを考慮すれば,本件代金の一部については平均的損害の額を超えるものと認められ,この範囲で本件不返還条項は無効。

◆ H25.10.17大阪高裁判決

2014年2月15日 公開

平成24年(ネ)第3565号,平成25年(ネ)第590号契約解除意思表示差止等請求控訴,同附帯控訴事件
消費者法ニュース98条283頁,消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF,消費者支援機構関西)
裁判官 河邉義典,大澤晃,山下寛
第1審 大阪地裁平成23年(ワ)第13904号
適格消費者団体 消費者支援機構関西

【事案の概要】
 適格消費者団体が、不動産賃貸業者に対し、①破産、後見開始、保佐開始等を理由とする解除権を賃貸人に付与する条項、②契約終了後の明渡しの履行遅滞による損害として家賃2か月分に相当する賠償額を予定する条項、③滞納家賃を督促する手数料を賃借人が1回あたり3,150円支払う条項、④自然損耗を超える汚損の有無にかかわらず賃借物件の補修費用(面積に応じた一定額)を賃借人に負担させる条項などが、9条各号又は10条に該当するとして、同契約書による意思表示の差止め、契約書用紙の廃棄等を求めた事案の控訴審。
 第1審では,①のうち賃借人に対する後見開始又は保佐開始の審判や申立てがあったときに直ちに契約を解除できる旨の条項に係る部分についてのみ10条に該当するとして差止め等を認めたが、その余を棄却していた。

【判断の内容】
 以下の理由から,①の賃借人が破産等の決定又は申立てを受けた場合に解除を認める部分についても10条により無効であるとして差止請求を認めるという内容に変更したが、その余は差止等を認めなかった。
① 破産等の決定又は申立てを受けたことは,一般的には賃借人の経済的破綻を徴表する事由であるが、賃借人の賃料債務の不履行の有無や程度は個別事案によって異なるものであり、上記事由が発生したからといって直ちに賃貸借契約から発生する義務違反があり信頼関係が破壊されていると評価するのは、相当ではない。
② 賃貸人は、特約において解除事由としている一定の要件を満たせば、催告の上、
本契約を解除できるのであるから、本件解除条項が無効とされた場合に賃貸人が被る不利益も、本件解除条項が有効とされた場合に賃借人が被る不利益に比して、大きいものとはいえない。
③ 後見・保佐について、後見開始や保佐開始の審判がされれば、成年後見人や保佐人が付され、同人らによって財産管理がされ、近隣紛争の解決が期待できるから、成年被後見人、被保佐人の宣告や申立てを受けたことは、賃貸借契約の信頼関係破壊の徴表に当たるとはいえない。
④ ②については、10条前段に該当するが、原審での理由に加えて、賃貸人の損害の填補や賃借人の明渡義務の履行を促すという観点に照らし、あらかじめ賃料以上の一定の額を損害賠償額の予定として定めることは、合理性を有しており、賃料の2倍という額は、高額過ぎるとまではいえない。
⑤ ③については、10条前段に該当するが、原審での理由に加えて、賃貸人は、単に普通郵便で催告するのみでなく、内容証明郵便を送ったり、場合によっては、現地に従業員を赴かせて直接督促したりするなど相応の費用を要することが少なくないこと、実際に要した費用が定められた金額を超える場合でも賃借人は定められた金額を支払えば足りるという点では賃借人に有利な面もあること等から、同条後段には該当しない。
⑥ ④については、10条前段に該当するが、原審での理由等から同条後段には該当しない。

◆ H22.03.18さいたま地裁判決

2013年9月16日 公開

平成21年(レ)第167号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 佐藤公美、 髙橋光雄、 川﨑慎介

【事案の概要】
 ペット可の建物賃貸借契約の際に差し入れた定額補修費8万円の返還請求。定額補修費を支払うとの条項が10条により無効となるか、前払した賃料及び共益費のうち明渡し日の翌日以降退去月の末日までの分を返還しないとする契約条項(日割精算排除条項)が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 いずれも10条により無効とはならないとしつつ、一定の範囲で返還請求を認めた。
① 定額補修費は実際にかかった補修費との差額について返還すべきものであり、不返還の合意があるなどの事情がない限りは差額を返還すべき。本件ではそのような合意はない。
② 本件補修費用は,いずれも本件貸室の修復費用であり,その中に通常損耗の原状回復費用を含むものであるところ,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予測しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明示されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当(最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決・判例タイムズ1200号127頁)。
③ 本件補修費用のうち、ペット飼育に掛かる汚損・破損の補修費については明確な合意があるから定額補修費から支出すべきものであるが、それ以外の支出は明確な合意がなく、控除すべきでない。
④ 本件定額補修費の合意は、敷金類似の金銭預託契約であり、本件契約には他に権利金や敷金の支払いもないこと、ペット飼育できることとして2000円の賃料増額がなされているが、これはペット飼育できることの利益についての対価でありそれ以上にペット飼育に伴う賃借物件の劣化又は価値の減少を補填する趣旨を含むものではないこと等から、10条に反しない。
⑤ (日割精算排除条項について)本件日割精算排除条項及び退去条項からは、解約の意思表示が貸主に到達してから最大3カ月分の賃料を支払うことになるが、本件契約は期限の定めがあり本来一方的に解約することができないこと、期間の定めのない建物賃貸借の場合解約申し入れから3カ月後に終了することからは、10条には反しない。

◆ H25.02.22大阪簡裁判決

2013年9月11日 公開

平成24年(ハ)第17022号損害賠償請求事件(本訴)、第35076号損害賠償請求事件(反訴)
消費者法ニュース96号362頁
裁判官 鈴本浩一郎

【事案の概要】
 幼児の保護者が幼稚園と入園契約を締結し、入園金5万円を支払った後、入園式の直前になって授業料の値上げと入園式の日程変更を幼稚園が通知したことから、入園を取りやめ、既払いの入園金や授業料の返還を求めたところ、入園金はいかなる理由があっても返金しないとの条項の存在を理由に入園金5万円の返還を受けられなかったことから、その返還を求めて提訴した事案。不返還条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件入園金の法的性質は、入園金の支払が契約成立の条件となっており、また、他の幼稚園への入園を前提とする解除権が留保されていることをうかがわせる事情が認められないから、入園しうる地位の対価としての性質を認めることは困難。しいていえば、一方的に入園辞退することを回避するための手付金に類する性質を有する。
② 本件不返還合意は、被告側の帰責事由がある場合にも有効とすれば社会通念に鑑みて相当性を欠く場合があるといわざるを得ず、被告側の有責的事情が原因で当該入園希望者が入園を辞退することに合理的な理由がある場合には、本件不返還合意は信義則に反し、10条後段要件を満たすから、そのような場合は変面的に無効となり効力が及ばないというべき。
③ 本件では、授業料の値上げ、入園式の日程変更のいずれも被告側の有責的事情といえ、原告の契約解約申し入れには相応の合理性があり、本件不返還合意の効力は及ばない。

◆ H22.06.11東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(ワ)第41032号敷金返還等請求事件、建物明渡請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
 建物の賃借人からの敷金返還請求及び違約金条項(賃借人より契約締結後2年未満に解約・解除等がされたときは,賃借人は賃料・共益費の1か月分を支払う旨の条項)に基づき支払った違約金の返還請求。違約金条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 本件違約金条項を無効とし、返還請求を認めた。
① 本件においては,賃借人からの解約申し出後2か月で賃貸借契約が終了する旨の特約が別途存在するから、賃貸借契約が2年以内に解約されることにより,賃貸人に特段の不利益があるとは考えられない。
② 本件賃貸借は居住用マンションの賃貸借であるが,その契約時期は,平成20年2月であるところ,一般的には,4月に居住用マンションの新規需要が生じるのであるから,契約後2年間の契約期間に特段の意味はない。
 以上から、消費者の利益を一方的に害するものとして、本件違約金条項は無効というべき。

◆ H22.08.31大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ネ)第2785号債務不存在確認等請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 紙浦健二、川谷道郎、宮武康
第1審 大阪地裁平成21年(ワ)第113号

【事案の概要】
 5年間で償却する約定で600万円の入居金を支払って被控訴人の高齢者用介護サービス付賃貸マンションに母親を入居させていた控訴人が、2年後、賃貸借契約の終了に伴い、入居金の返還を求めた事案。入居金の償却条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から10条により入居金の焼却場公は無効であるとして返還請求を認めた。
① 本件入居金の法的性格は、賃貸借契約から生ずる控訴人の債務の担保、医師及び看護師による24時間対応体制が整った居室への入居の対価及び入居後の医師・看護師らによるサービスの対価としての性格を併有する。
② 本件マンションには被控訴人が宣伝していたような24時間対応体制の実態はなく、被控訴人が対価に相当するサービスを提供していないのに1年毎120万円を取得することは、民法の一般規定による場合と比較して消費者である控訴人の権利を制限するものであるから、本件約定は10条により無効である。

◆ H25.07.11大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成24年(ネ)第3741号解除料条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)、金融商事判例1423号9頁、ウエストロー・ジャパン
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 ソフトバンクモバイル株式会社
第1審 H24.11.20京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,電気通信事業等を営む事業者に対して,2年間の契約期間の定めのある携帯電話通信契約を中途解約する際に解除料として9975円の支払義務があることを定める条項が消費者契約法9条1号・10条に反するとして同条項の使用の差止めを求めたもの。1審が原告の請求を棄却し、原告が控訴していたもの。

【判断の内容】
 控訴棄却。
 本件解除金条項が法第9条第1号により無効であるかどうかについて、本件解除金条項が、「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に該当するとした上で、本件解除料が法第9条第1号にいう平均的な損害を越えるか否か判断するに際しては、被告の設定した契約期間である2年間の中途における解除という時期の区分を前提に、本件契約の解除に伴い、被告に生じる損害の額の平均値を求め、これと本件解除料の比較を行えば足りるとし、法第9条第1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号の損害は、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」であり、逸失利益を含むと解すべきであるとした。本件契約の解除に伴って被告に生じる平均的な損害のうち、主なものは、これによって被告が失う逸失利益であり、その額は、被告と本件契約を締結した契約者の平均収入から変動コストを除いて算出される変動利益(1契約当たり平均の営業上の利益(1か月当たり))に、本件契約の契約期間である2年間から、被告と本件契約を締結した契約者の平均解約期間を除いた解除後の平均残存期間を乗じた47,689円が平均的な損害に当たるとし、これは、本件解除料を超える金額となるため、本件解除条項は、法第9条第1号に反しないと判断した。
 本件解除金条項が法第10条により無効であるかどうかについては、本件契約は、民法上の請負や委任に類似する性格を有しており、本件解除料条項は、本件契約が解除された場合には、原則として、当該契約における顧客との関係で被告に具体的に生じる損害の額にかかわらず、一律に、一定の金員(本件解除料)の支払義務を課す点において、民法の一般法理に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものとなる余地があるとして、法第10条前段の要件に該当するとした上で、被告から顧客に対して確認書等により十分な説明が行われており、通常は、顧客もこれを理解した上で、被告の提供するサービスの中から、本件料金プランを選択した上で本件契約を締結しているということができるのであり、本件解除料条項に関して、事業者と消費者との間に、看過できないような情報の質及び量並びに交渉力の格差等があるということはできず、さらに、本件解除料は、本件契約の解除によって被告に生じる平均的な損害の額を下回っている上、本件料金プランは、基本使用料等の面で、他の料金プランより優遇されており、かつ更新月においては、本件解除料を支払うことなく契約を解除することができるとの事情が存在するのであるから、このような本件契約の特質等に鑑みても、本件契約における本件解除料条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるということはできないとして、法第10条後段の要件には該当しないと判断した。
 また、更新後の解除料についても当初の解除料と同様に法第9条第1号及び第10条に反しないと判断した。

◆ H22.06.29東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成20年(ワ)第32609号売買代金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 矢作泰幸

【事案の概要】
 原告X1が被告から購入した土地について、鉛が検出されるなど瑕疵が存在するため、瑕疵担保責任を理由として売買契約を解除したなどとして、被告に対し、代金相当額の返還等を求め、同土地に住宅を建築する予定であった原告X2が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。瑕疵担保責任の追及は引渡日から3か月以内にしなければならないとする特約が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から上記特約は10条により無効とした。
① 買主による瑕疵担保責任に基づく解除又は損害賠償の請求の期間について,民法570条,566条3項は,買主が事実を知ったときから1年以内にしなければならないと規定するのに対し,本件特約は,本件土地の引渡日から3か月以内とするというものであって,瑕疵担保責任の行使期間を,買主の認識にかかわらず,その期間も1年以内から3か月に短縮するものであるから,同法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である原告X1の権利を制限するものであることは,明らか。
② 本件土地の瑕疵は,環境基準を超える鉛が検出されるとともに皮革等が多数埋設されていたというもので,発見が困難であり、買主は相当の損害を受けるものであるのに、瑕疵担保責任の行使期間を買主の認識の有無にかかわらず短期間に制限をするものであること、原告X1は調査を尽くしていたこと等の事情からは、10条後段要件を満たし、無効というべき。
③ (被告が、貴金属,宝石類の卸売業等を目的とする株式会社であって,不動産の売買を業とするものではないから,消費者契約法の事業者にはあたらないとの主張に対し)2条2項は,事業者とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいうと規定するから,法人は,その業務との関連にかかわらず,事業者に該当するものというべきである。

◆ H22.11.09東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成21年(ワ)第4449号損害賠償等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林昭彦、篠田賢治、北村久美

【事案の概要】
 マンションの管理組合である原告が、管理組合発足前に共用部分につき締結された電気受給契約が過大であったとして、マンション販売会社や従前の管理会社らに適正な契約電力等の説明義務違反や契約上の地位譲渡に関する契約義務違反を理由とする損害賠償請求をするとともに、電力会社に契約の取消し等による電気料金の不当利得返還を求めた事案。
 管理組合がマンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法上の消費者に当たる等として、消費者契約法の適用又は類推適用ができるか、不利益事実の不告知による取消、不当条項による無効等が争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から本件マンション管理組合が「消費者」に当たらないとして、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,「消費者契約」とは,「消費者」と「事業者」との間で締結される契約をいうと定義し(同法2条3項),その「消費者」とは,個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいうと定義している(同条1項)から,法人その他の団体は,小規模なものであっても,消費者契約法における「消費者」には当たらないことは明らか。
② マンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法の適用又は類推適用が認められるべきであると主張するが,消費者契約法の明確な定義に反する独自の見解をいうものであり,到底採用することはできない。

◆ H22.10.29東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成20年(ワ)第17540号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 安浪亮介、小池晴彦、潮見牧子

【事案の概要】
 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを運営する原告が、フランチャイジーである被告Y1において、一方的に店舗を閉鎖し、半額セールを実施した上、その売上金を支払うよう求めても応じなかったことなどから契約違反を理由に解除し、被告Y1及びその連帯保証人である被告Y2に対し、清算金、違約金及び損害賠償の支払を求めた事案。フランチャイズ契約に不当条項があり9条1号、2号、10条により無効となるかが争われ、前提としてフランチャイジーが消費者に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,事業者と消費者との間の契約を規律するものであり(同法2条3項),同法における「消費者」とは,「個人(事業として又は
事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義されている。そうすると,被告Y1は,コンビニエンスストアを自ら経営するために本件契約を締結した者として,事業のために契約の当事者となる場合に当たるから,同法2条1号の「消費者」には該当しないことになる。
② 被告らは,被告Y1と原告との間には情報・交渉力について構造的な格差があるから,本件契約にも同法の趣旨を及ぼすべきであると主張するが,同法が「個人」であっても「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。」と明確に定めている以上,原告が株式会社で被告Y1が個人であることのみをもって同法の規定を類推適用すべきとすることは,同法の趣旨を没却するものといわざるを得ない。

◆ H22.11.12神戸地裁尼崎支部判決

2013年7月16日 公開

平成21年(ワ)第1648号敷金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 善元貞彦

【事案の概要】
 マンション一室の賃貸借契約における敷金返還請求。賃料月17万7000円、期間3年、敷金150万円で、契約時より10年未満の退去の場合40%を差し引く、10年以上なら全額返還するとの敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、本件敷引条項は10条に反しないとした。
① 本件敷引条項は、任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重する条項というべき。
② 敷引契約は一般的に行われており、本件建物の所在する地域でも受け入れられていた。美装費用に敷金の一部を充てることは不当とはいえない。原告は本件敷引特約を理解した上で本件賃貸借契約を締結したものといえる。これらの事情からすれば、消費者の法的に保護されている利益を信義則に反する程度に両当事者間の衡平を損なう形で侵害すると認めることはできない。

◆ H23.02.24東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第3443号、平成22年(ワ)第1164号建物賃料増額確認等本訴請求事件、建物賃料減額確認等反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小崎賢司

【事案の概要】
 建物賃貸借契約における賃料増額請求、賃料減額請求(反訴)事件。礼金、更新料の支払いが10条にあたるかどうかが争われた。

【判断の内容】
① 礼金条項について、契約締結に対する謝礼金を原告に贈与することを義務づけるもので,被告は礼金の支払によって何らの対価も取得しないことが認められるから,かかる金銭の贈与を契約締結の条件とする旨の礼金支払条項は,本件賃貸借契約の成立において,民法による場合に比べて被告の義務を一方的に加重するものと認めるのが相当とし(10条前段要件)、また、本件賃貸借契約の締結にあたって賃貸人たる原告から金額を定めて提示された条件であると認められるところ,被告は,同条項に合意することを拒否すれば本件建物を賃借することを断念せざるを得ず,あるいは,契約締結後の関係悪化を慮ってその免除ないし減額の交渉を強硬に主張し難い立場にあるといえるから,原告と被告との間には交渉力の格差が存したものというべきであり,前記礼金支払条項は,信義則に照らして被告の利益を一方的に害するとして(10条後段要件)、10条により無効とした。
② 本件更新料条項については、主に賃貸人による更新拒絶権の放棄や契約期間中の賃借人の地位の安定という利益の対価にあたるとして、賃借人たる被告の義務のみを一方的に加重したものとは認められず,それが新賃料の1か月分にとどまることに照らせば暴利にあたるとも認められないから,同条項は無効とは認められないとした。

◆ H23.02.22東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(ワ)第35889号、第39833号立替金請求事件、反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 綿引穣、佐藤重憲、金洪周

【事案の概要】
 金銭消費貸借契約に関する媒介委託契約の手数料及び同契約に付随して立替金を支出したとしてその返還を求めた(本訴)ことに対し、原告が被告の所有する不動産に設定した根抵当権の抹消手続を協力しなかったことによる損害賠償請求及び不当利得の返還を求めた(反訴)事案。

【判断の内容】
 本訴請求を棄却し、反訴を一部認容したが、その理由中で、遅延損害金割合を年21.9%としていた立替金償還特約について、9条2号により年14.6%を超える部分を無効とした。
 

◆ H23.01.20東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(レ)第1691号保証債務請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 齊木敏文、日景聡、横井靖世

【事案の概要】
 貸金業者と連帯保証人との間の分割和解契約に基づき、保証債務履行請求をした事案。和解契約に9条2号の摘要があるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、9条2号により遅延損害金利率を年14.6%に制限した。
① 控訴人が事業として又は事業のために本件和解契約の当事者となったものとは認められないから,本件和解契約には消費者契約法の適用がある。
② 本件和解契約は,本件貸金契約及び本件保証契約とは別に創設的に締結された和解契約であり,それ自体として「金銭を目的とする消費貸借契約」(利息制限法1条)に該当しないから,消費者契約法11条2項の適用はなく,同法9条2号の適用は排除されない。

◆ H23.01.17東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成20年(ワ)第20356号保険金等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 石井浩

【事案の概要】
 生命保険契約に基づく保険金請求事件。失効条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 10条の要件を満たさないとして、失効を認めた。
① 前段要件について、本件失権約款が民法541条の規定に比して消費者の権利を制限するものであるということはできないとした。
② 後段要件について、未入通知や振替通知の送付が実務の運用として行われていること、自動振替制度等から、満たさないとした。

◆ H23.06.13横浜地裁横須賀支部判決

2013年6月24日 公開

平成21年(ワ)第337号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 杉山正己、河本晶子、中村修輔

【事案の概要】
 保険金請求事件。猶予期間中に保険料が払い込まれず、かつ、積立金からの保険料の払込みが行われないときは、保険契約は失効する旨の無催告失効特約があり、当該条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下のように判断し、無催告執行特約は10条により無効とはならないとした。
① 本件無催告失効特約は、10条前段要件を満たす。
② 後段要件について、1カ月の猶予期間が設けられていること、振替制度により失効回避の配慮がされていること、美入通知や振替通知を送付して通知することがなされていることから、後段要件は満たさない。

◆ H23.10.28東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第8460号授業料返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 生野考司、前澤功、仲田憲史

【事案の概要】
 ラインパイロットになることを目指した原告が、ニュージーランドの航空大学校で語学研修を受けた上、飛行訓練等を受けるなどして事業用免許等を取得し、帰国した後さらに事業用操縦士免許を取得して就職するという訓練システムの受講契約を被告との間で締結し、ニュージーランドの語学学校で研修していたところ、上記大学校での訓練を受けるための規定の英語能力が得られなかったことなどから、本件受講契約を解除したとして、被告に対し、前払い費用の精算として未使用授業料等の支払を求めた事案。学納金の不返還条項の効力が争われた。

【判断の内容】
① 入学金については、学生が大学に入学し得る地位を取得する対価の性質を有しており,その納付をもって学生は上記地位を取得するものとして、返還義務を否定した。
② 入学金以外の部分に係る本件不返還合意は,消費者契約法9条1号の損害賠償の額の予定に係る合意であるから,解除の事由,時期等の区分に応じ,本件契約と同種の契約の解除に伴い被告に生ずべき平均的な損害を超えるものについては無効であるとして、施設費、学費・訓練費、滞在費、寮費等の一部について返還請求を認めた。

◆ H23.10.27東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第13457号敷金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 和久田道雄

【事案の概要】
 マンションの貸室を目的とする賃貸借契約に関し、同貸室を退去した原告(当時司法修習生、現在弁護士)が、賃貸人である被告に対し、造作買取請求権不行使特約、礼金及び更新料の各支払特約、敷金から清掃費用を控除する旨の特約は消費者契約法10条に反し、無効であるとして、造作買取代金の支払、各既払金員相当額の不当利得返還、敷金のうち返還を受けた部分を除いた残額等の各支払を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、いずれも請求を棄却した。
① 造作買取請求権排除条項、礼金条項、更新料条項について、当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考慮して判断されるべき。
 本件条項は、いずれも内容が一義的に明確であり、金銭的負担を明確に意識した上で契約条件を比較検討して選択することが可能であったから、信義則に反して消費者である原告の利益を一方的に害するものということはできない。
② 賃貸人は契約終了時に使用状況,清掃状況にかかわらず,清掃費用7万2093
円を敷金から控除するとの条項(敷引条項)について、消費者契約である住居用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照し,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
 本件の場合、経過年数(4年)、賃料額、礼金額、更新料額を考慮しても、敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、無効とはいえない。

◆ H23.10.24東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第12243号保証金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 武藤真紀子

【事案の概要】
 建物賃貸借契約の終了に基づく保証金返還請求。保証金償却条項が10条違反に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 10条の「消費者契約」とは,消費者と事業者との間で締結される契約をいうと定義されるが(2条3項),個人であっても,事業として又は事業のために契約の当事者となる場合は「消費者」に該当しない(2条1項)ものであるところ,原告は,本件建物をクラブとして使用する目的で賃借し,現に,本件建物においてクラブを営業していたのであって,事業のために本件賃貸借契約を締結したものであるから,本件賃貸借契約は10条にいう「消費者契約」とはいえず,原告の主張は前提を欠くとして、消費者契約法は適用されないとした。

◆ H23.08.18東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第41347号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 志田博文、杉本宏之、後藤隆大

【事案の概要】
 責任開始期から2年以内の自殺は免責される旨及び保険契約が失効の後、復活した場合の責任開始期は、被告が延滞保険料を受け取った日とする旨の特約がある生命保険契約において、保険料猶予期間の末日の経過により保険契約が失効するとする本件失効条項に基づき失効し、復活条項に基づく復活による責任開始日から2年以内に自殺した被保険者の妻である原告が、被告に対し、生命保険金の支払等を求めた事案。本件失権条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から本件失権条項が無効であるとして請求を認めた。
① 本件失権条項は、10条前段要件を満たす。
② 後段要件について、保険契約の継続という利益は消費者にとって極めて重要。他方、民法が履行遅滞による解除権の発生に相当期間を定めた履行の催告を要求する趣旨は、契約が解除されるという不利益を受ける前に債務者に履行の機会を付与する点にあるところ、本件保険契約における履行の催告は消費者にとって極めて重要な利益。そして、保険会社の利益は、通知コストの軽減という付随的な利益にとどまる。
 従って、消費者契約である生命保険契約に付された履行の催告及び解除の意思表示を不要とする特約は,通知コストの軽減という付随的な利益のために保険保護の継続という保険契約における本質的な利益を制限するものであり,保険料の支払が口座振替によりなされる旨合意されている場合には,保険契約者が履行遅滞にあることや保険契約が失効したことを確定的に認識しうる措置等保険保護された状態を維持しうるような措置がとられているなどの特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である保険契約者の利益を一方的に害するものとして,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
③ 本件の猶予期間の定め、自動振替貸付制度の定め、復活条項は前記特段の事情を肯定する事情としては足りない。催告の実質を有する特則通知書を送付する社内体制となっていることだけでは、催告を不要とする根拠となるとはいえない。

◆ H24.02.01東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成23年(ワ)第948号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 篠田賢治

【事案の概要】
 原告株式会社の代表取締役であったCを被保険者とする保険契約を被告との間で締結していた原告が、Cの死亡により、死亡保険金の支払を求めたところ、被告が、本件契約は、保険料未払のため本件約款の無催告失効条項により失効した後、原告の申込みにより復活したものであり、復活後1年以内のCの自殺は保険金支払免責事由に当たる旨主張したのに対し、さらに原告が、本件失効条項は、継続的契約の本質及び消費者契約法の精神に鑑み、信義則違反及び公序良俗違反により無効であるなどとして争った事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、消費者契約法の適用、類推適用を否定した。
① 本件保険契約は平成13年4月1日より前に締結されているから、消費者契約法の適用はない。
② 原告は法人であり、2条1項に規定する「消費者」にあたらないから、消費者契約法の適用はない。
③ 原告と被告との間に情報及び交渉力に格差があることは十分にうかがわれるが、原告の組織の実態等からも類推適用することはできない。
④ 仮に、本件保険契約につき消費者契約法が類推適用されるとしても、10条の類推適用の可否の問題となるが、本件失効条項は,保険契約者の保護の観点、保険契約者のモラル・ハザードを防止する必要の点から、合理性があり、保険契約者に有利な内容も含まれており、これらの事情からすると,原告と被告との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があるとしても、消費者の利益を一方的に害するものとはいえない。

◆ H24.01.25東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成22年(ワ)第17665号、第38763号サイト制作代金等請求事件(本訴)、(反訴)
ウエストロー・ジャパン
裁判官 秋元健一

【事案の概要】
 原告が、被告会社との間でインターネットサイト制作等の委託契約を締結したとして、被告会社に対し、代金等の支払を求めるとともに、被告会社の代表取締役である被告Y2に対し、同Y2に金銭を貸し付けた又は同Y2が被告会社の原告に対する金銭債務を引き受けたとして、金員の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告会社に対する請求を一部認める一方で、被告代表取締役に対する請求については、債務引受契約の成立を認めつつ、遅延損害金利率については消費者契約法所定の制限利率の範囲内である約定の年14.6%に制限して認めた(明示はないが9条2号を適用したものと思われる。)。

◆ H24.04.17東京地裁判決

2013年6月19日 公開

平成22年(ワ)第25620号手付金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 阿閉正則

【事案の概要】
 マンションの居室の売買契約(売主は宅建業者)後、エレベーターの設置工事で死亡事故が生じたことから、買主が債務不履行解除、瑕疵担保責任による解除、事情変更による解除を主張するとともに、手付金の返還を請求した事案。手付金相当額を違約金として支払うものとする条項が9条1号に違反するかが争われた。

【判断の内容】
 売主が宅建業者であるところ、宅建業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約における契約の解除に伴う違約金の額については、宅建業法38条に別段の定めがあり、この規定が消費者契約法9条1号に優先して適用される(11条2項)として、本件違約金条項は9条1号に違反し無効とはいえないとした。

◆ H24.02.16東京高裁判決

2013年6月19日 公開

平成23年(ネ)第5197号保険金請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 園尾隆司 櫻井佐英 吉田尚弘

【事案の概要】
 被保険者が自殺したことによる保険金請求。無催告失効特約が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
 本件無催告執行特約は、その要件として,保険料支払期限後1か月の猶予期間を設け,その間になお支払がない場合に失効するものとしていること,保険料の払込みがないまま猶予期間を経過しても,保険契約者からあらかじめ反対の申出がなく,かつ,猶予期間満了の日の解約返戻金が未払込みの保険料相当額を超えているときは,猶予期間満了の日に積立金から保険料が払い込まれたものとして取り扱うものとされている。また,保険契約が失効した日から3年以内であれば,保険契約者は,保険者の承諾を得て,失効期間に対応する保険料を払い込むことにより,保険契約を復活させることができる措置が用意されており,保険料の不払が生じたときは,その旨及び猶予期間内に保険料の支払がなければ一定の日に保険契約が失効する旨の葉書を保険契約者に送付することとされている。
 上記の無催告失効条項は,上記の関連条項全体の中で考察すると,保険契約に係る大量の事務を合理的に処理することを目的として,保険者と保険契約者の利害得失を考慮して定められたものであると認められ,これが消費者である保険契約者に一方的に不利益であるということはできないから,この条項について消費者契約法10条に規定する無効事由があるものということはできない。

◆ H24.05.29東京地裁判決

2013年6月18日 公開

平成23年(ワ)第38990号、第41357号損害賠償請求事件、不当利得返還等反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 井出弘隆

【事案の概要】
 行政書士への在留資格に関する申請書類の作成等の委任契約を解除したことによる報酬の返還請求。いったん納入された料金については理由の如何を問わず返還しない旨の特約が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、一部について返還を命じた。
① 本件不返還条項は、委任者が本件委任契約を解除した場合における損害賠償の予定又は違約金を定める趣旨のものと解することができ、9条1号にあたる。
② 本件における「平均的な損害」とは、本件事務と同種の書類作成等の事務を行政書士に委任した依頼者がこれを解除することによって当該行政書士に一般的、客観的に生ずると認められる損害をいう。
③ 本件では、既払い報酬10万5000円のうち、平均的損害は1万円を超えないとして、9万5000円の返還請求を認めた。
④ なお、10条と9条1号の関係について、9条1号によって無効とならない部分が、10条にいう「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しないことは明らかであり、同条適用の要件を欠くものというべきとした。

◆ H24.08.27東京地裁判決

2013年6月15日 公開

平成22年(ワ)38688号損害賠償等請求反訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前澤功

【事案の概要】
 建物賃貸借契約についての敷金返還等請求。契約終了日までに明け渡さない場合、終了日の翌日から明渡完了の日まで賃料等相当額の倍額を支払うとの合意が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 建物の貸主に生ずべき平均的な損害の額は賃料の限度と推認でき、これを超える損害が生じることを窺わせる特別な事情も見当たらないから、合意のうち月額40万円(1カ月の賃料)を超える部分は9条1号により無効であるとして、敷金から控除する金額の一部を否定し返還請求を認めた。

◆ H24.09.18東京地裁判決

2013年6月7日 公開

平成24年(レ)第547号キャンセル料請求差止め請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 三村晶子、大嶋洋志、行川雄一郎

【事案の概要】
 会社の従業員(控訴人)が、会社が締結している福利厚生サービス会社(被控訴人)が提供する、提携ホテル割引サービスを利用して、提携ホテルの宿泊予約をしたが、宿泊予定日の7日前にキャンセルしたところ、被控訴人からキャンセル料として宿泊料金の50%を請求されたもの。9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、9条1号にはあたらないとして、キャンセル料の請求を認めた。
① 本件キャンセル料の契約当事者は控訴人と福利厚生サービス会社(被控訴人)であり、ホテルではない。事業者が消費者契約法の適用を免れる目的で消費者との間に形式的第三者を介在させたというような特段の事情があれば格別、単に事業者が広く顧客を獲得するために他の事業者と提携をしたというだけでは、その両者を一体として消費者契約法上の事業者にあたると解することはできない。
② 福利厚生サービス会社(被控訴人)とホテルとの間でのキャンセル料の取り決めがあり(これ自体は消費者契約法の適用はない)、控訴人が被控訴人に支払うとされるキャンセル料とは連動しており、ことさらに被控訴人独自に高額のキャンセル料を定めたものではないから、そのまま平均的損害と認められる。
③ なお、本件ホテルが隣接するテーマパークの知名度や人気の高さから、宿泊予定日の7日前にキャンセルがされたとしても宿泊予定日までに新たな宿泊予約が行われる可能性が高いこと、他の著名なホテルでは2日前より前にはキャンセル料の支払い義務の定めがないことからは、ホテルに生じる平均的損害の額については50%を相当程度下回るのではないかとの疑念があり、直接ホテルと宿泊予約をした場合には9条1項の関係で問題となる余地がないではない。しかし、控訴人はホテルと直接契約をしたものではなく、ホテルと被控訴人との契約は消費者契約ではないからホテルと被控訴人との間のキャンセル料特約は消費者契約法によって無効となることはないし、他にこれが無効であることを伺わせる事情はない。そして、本件宿泊予約にかかる契約の当事者が控訴人と被控訴人で有り、被控訴人がホテルに本件キャンセルにかかるキャンセル料の支払義務を負う以上、本件キャンセル料規程が9条1号により無効ということはできない。

◆ H24.08.08半田簡裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ハ)第313号損害賠償等請求事件
名古屋消費者信用問題研究会HP同HP(PDF)
裁判官 鈴木章夫

【事案の概要】
 建物賃貸借契約(「資金礼金ゼロ」物件)につき、「敷金礼金」は不要であったものの「内装工事費負担金」名目で、入居時に金員を徴収した。「内装工事負担金」は、入居時に賃借人に内装工事費を負担させるものであったが、退去時にも賃借人は原状回復費用を支払わされた。内装工事費負担金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、内装工事負担金から原状回復費用(一部)を差し引いた残額について返還請求を認めた。
① 本件内装工事費特約は、賃借人が本件建物に入居するにあたって施工された内装工事に要した費用の一部を賃借人に負担させるものである。
② 本件賃貸借契約では、賃貸借契約終了による本件建物明け渡し時、賃借人の故意又は重過失による原状回復費用があれば、賃貸人は賃借人に対しその原状回復費用を請求することができるとされており、内装工事費負担金をもって清算することは予定されていない。
③ とすれば、本件内装工事費特約は、賃貸借契約の目的物である建物を使用収益させる義務を負っている賃貸人が負担すべき費用の一部を賃借人に負担させるものであり、消費者の義務を加重し、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであって、10条により無効と解するのが相当である。

◆ H24.05.17福岡地裁八女支部判決

2013年6月1日 公開

平成22年(ワ)第137号、平成23年(ワ)第89号損害賠償請求事件
消費者法ニュース94号357頁
裁判官 秋本昌彦

【事案の概要】
 興信所と調査委任契約を締結した原告から興信所に対する不法行為による損害賠償請求。
 原告が興信所との調査委任契約(基本料金210万円)の2日後に解約を申し出たのに、着手後の解約の場合には一切返金に応じないことを内容とする不返還条項を理由に、被告が返金に一切応じず、返金がない以上契約を継続した方がよいと申し向けたため、原告が契約解除を撤回したことについて、不返還条項が、解除権を不当に制限するものであり10条にあたるか、違約金等条項であり9条1号にあたるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、基本料金210万円のうち、平均的損害を超える部分170万円については無効であり、当該部分について不法行為が成立するとして、損害賠償請求を認めた。
① 本件不返還条項は、直接解約を制限するものではないほか、調査に係る契約締結後に、依頼者が自己の意向にそぐわない結果となった場合等にこれを理由に解約がなされた結果、被告会社が損害を被ることを防止する等の目的を有するものと認められ、調査業務の進展状況や、案件の内容等如何では、必ずしも消費者の利益を一方的に害するとまでは断じがたく、調査中との場合、成功報酬の支払いは省いていることも踏まえると、10条により無効とすべきとまではいえない。
② 本件契約では調査料金については成功報酬が定められておらず基本料金のみで210万円と設定された結果、調査が着手されてしまうと、その着手後数日しか経過していないような場合であっても、その全額が返還されないこととなるが、これは1年の調査期間内において、主に聴き取り調査を実施することを前提に、定められた調査料金全額を解除に伴う損害賠償の額と予定するもの又は違約金として定めるものといえ、事業者に生じる平均的損害を超えるものといえ、当該超過部分については、9条1号により無効となると解する。
③ 本件不返還条項においては、解約の時期や解約事由に応じた区分はされていないところ、諸般の事情から、本件においては40万円を当該平均的損害額とするのが相当であり、210万円から40万円を控除した170万円の返還を認めない部分については無効である。
④ 被告は本件不返還条項の一部が無効であるにもかかわらず、原告からの解約申し入れに対し、これとは異なる説明をして、原告にその旨誤信させ、解約を断念させ、原告の解約する権利を違法に侵害したものであるとして、弁護士費用1割(17万円)を加えて、不法行為による損害賠償請求を認めた。

◆ H24.08.22神戸地裁判決

2013年6月1日 公開

平成22年(レ)第275号、平成23年(レ)第385号敷金返還請求控訴同附帯控訴事件
消費者法ニュース94号362頁
裁判官 工藤涼二、末永雅之、今野智紀
第1審 神戸簡裁平成21年(ハ)第13822号

【事案の概要】
 アパート(賃料月8万円)の賃借人が、明け渡し後、賃貸人に対して、敷金80万円の返還請求をしたところ、50万円の敷引特約があること等を理由としてその支払いを拒んだ事案。

【判断の内容】
 本件敷引特約が10条により無効であるとして、返還請求を認容した原判決を維持した。
① 居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、契約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。本件敷引特約はそうであり、10条前段要件を満たす。
② 後段要件については、平成23年7月12日最高裁判決と同様の判断基準を示しつつ、本件では、(1)敷引額が賃料月額8万円の6.25倍であること、(2)賃借人退去後の補修費用は9万8175円であること、(3)賃貸期間は2年半あまりであること、(4)賃料が近傍同種の物件の賃料相場と比較して大幅に低額といった事情はないことから、本件敷引特約は、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって10条により向こうと解するのが相当。

◆ H25.04.26京都地裁判決

2013年5月27日 公開

平成23年(ワ)第3426号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
京都消費者契約ネットワークHP(PDF)消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ベストブライダル

【事案の概要】
 適格消費者団体が、結婚式場等の企画、運営等を業とする被告に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で、キャンセル料条項が、9条1号により無効であるとして、上記契約条項を内容とする意思表示の差止め等を求めた事案。

【判断の内容】
 請求棄却。
① 本件キャンセル料条項は、9条1号にいう違約金等条項にあたる。
② 平均的損害の算定方法について、9条1号は、民法第416条を前提としその内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものであるから、本件契約の解約に伴う被告の平均的損害についても、解約に伴う逸失利益(得べかりし利益)から、再販売(被告が他の顧客との間で本件契約を締結し、ほぼ同一の日時、場所で挙式披露宴を実施したような場合)により塡補される利益及び解約により支出を免れる経費を控除することにより算定すべきである。
③ 具体的には、(1)本件契約における平均実施金額(挙式披露宴実施代金の平均額)を基礎として、同金額から、(2)同金額と被告の利益率から算出される、解約に伴い被告が支出を免れる経費の額、及び(3)被告の非再販売率から算出される、再販売により填補される利益の額を控除する方法により、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期において解約された場合に、被告に生じる平均的損害の額を算定し、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期におけるキャンセル料の額を、各個別料金項目(会場使用料、ウエディングケーキ代等)の上記平均実施金額に占める平均的割合を用いてその値を算出するなどして算定した上で、同キャンセル料について、各解約時期において解約がされた場合に被告に生じる上記平均的損害の額を上回るかどうかを検討し、いずれも同損害の額を超えるキャンセル料を定める条項とはいえないとした。

◆ H24.07.10東京地裁判決

2013年5月4日 公開

平成24年(レ)第9号授業料返還請求控訴事件
判例秘書、ウエストロー・ジャパン
裁判官 本多知成、倉地真寿美、鈴木美智子

【事案の概要】
 外国語を使用する幼稚園(インターナショナルスクール)に子どもを通園させるため、平成20年6月9日に、平成20年9月1日以降の授業料87万7800円を支払った後,日本国外への転勤命令を受けて授業開始前に在籍契約を解約したことを理由に授業料の返還請求をした事案。一旦支払われた授業料は授業開始前でも返還しない旨の特約が9条1号により無効であるとの主張を控訴審で追加した。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件在籍契約は消費者契約に該当する。
② 本件不返還条項は、違約金等条項に該当する。
③ 在籍契約の解除に伴い本件のような施設に生ずべき平均的な損害とは,1人の生徒についての在籍契約が解除されることによって当該施設に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解される。
④ 本件在籍契約は、施設の特殊性等から、授業料支払後授業開始前の期間に解除される場合があることは織り込み済みのものというべき。生徒が当該施設に通園することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点よりも前の時期における解除については,原則として,当該施設に生ずべき平均的な損害は存しないものというべきであり,納付された授業料は,原則として,その全額が当該施設に生ずべき平均的な損害を超えるものというべき。
 本件施設のようなインターナショナルスクール等においては,その第1学期が9月1日に開始されるものであるから,少なくとも,第1学期の開始日である同日以降は,入園申込者が特定のインターナショナルスクール等に在籍することが高い蓋然性をもって予測されるものというべきである。そうすると,本件在籍契約の解除の意思表示がその前日である8月31日までにされた場合には,原則として,本件施設に生ずべき平均的な損害は存在しないものであって,本件不返還特約は全て無効となるというべきである。

◆ H25.03.28東京高裁判決

2013年5月3日 公開

平成24年(ネ)第5480号消費者契約法12条に基づく差止請求控訴事件
消費者機構日本HP(判決写しあり),判例時報2188号57頁,判例時報2214号156頁
裁判官 市村陽典、團藤丈士、菅家忠行
適格消費者団体 消費者機構日本
事業者 三井ホームエステート株式会社
第1審 H24.07.05東京地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業者に対し,①更新料の支払を定めた条項及び②契約終了後に明渡しが遅滞した場合の損害賠償額の予定を定めた条項が9条1号及び10条に規定する消費者契約の条項に当たると主張して,消費者契約法12条3項に基づき,その契約の申込み又は承諾の意思表示の停止及び契約書用紙の破棄並びにこれらを従業員に周知・徹底させる措置をとることを求めた事案の控訴審。

【判断の内容】
控訴棄却。
① (更新料について)契約書上、本件更新料は、賃貸借契約を締結する際に、賃貸人が、普通借家契約を選択することにより、法定更新制度を背景に自らの選択により契約期間を更新できる地位を取得し、契約期間満了時において、賃貸借契約の継続を選択する利益が具体化した場合に、その具体化した利益、すなわち、賃貸借契約を継続することの対価として支払われるものとされているものであるから、その根拠が不明確であるとは認められない。
 額が不当に高すぎるという特段の事情はない。契約締結について賃貸人と賃借人との間に情報の質、量、交渉力の格差があるとは認められない。 
② (倍額賠償予定条項について)
 本件倍額賠償予定条項は、契約解除時においては損害発生の有無自体が不明であるから、9条1号にいう損害賠償額を予定し又は違約金を定める条項であると解することは相当でない。
 本件倍額賠償予定条項には合理性があり、額も高額に過ぎるというものではない。

◆ H25.03.29大阪高裁判決

2013年4月13日 公開

平成24年(ネ)第2488号解約違約金条項使用差止請求、不当利得返還請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 小島浩、三木昌之、橋本都月
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 KDDI株式会社
第1審 H24.07.19京都地裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が、携帯電話会社に対し、消費者が二年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が、9条1号及び10条により無効であると主張して、12条3項に基づき、条項使用差し止めを求め(第1事件)、解約金の不当利得返還請求を求める事案(第2事件、第3事件)で、第1審は請求を一部認容した。控訴審。

【判断の内容】
一審を取消し、適格消費者団体の請求を棄却した。
① 法第9条第1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号の損害は、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」であり、逸失利益を含むと解すべきである。
② 平均的な損害の算定方法については、当該条項すなわち契約に定められた解除事由、時期等により同一の区分に分類される同種の契約における違約による損害の平均値を求めることによって算定すべきであり、当事者が設定した区分を裁判所がさらに細分化することを認める趣旨とは解されない。
③ 本件定期契約は、2年間の期間の定めのある契約であり2年間継続して使用されることを基本的条件として、基本使用料、通話料等が設定されているものと認められるところ、本件解約金条項は、2年間という期間を一つの区分とし、その契約が解除されたことによる損害をてん補するものは本件解約金条項のほかにはないということができるとし、平均的な損害の算定の基礎となる損害額について、本件定期契約が中途解約されることなく契約が期間満了時まで継続していれば被告が得られたであろう通信料収入等(解約に伴う逸失利益)を基礎とすべき。
④ 10条後段該当性については、本件定期契約において、社会通念上著しい長期間にわたって解約を制限するものではなく、解約金が法第9条第1号の平均的な損害を超えるものでないこと、契約者は、通常契約と比較した上で、本件定期契約を選択することができ、しかもその場合基本使用料割引の利益を受けられることからすると、本件解約金条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるとはいえず、法第10条後段に該当しない。
⑤ 本件定期契約の更新は、新規の契約締結と同様の効果を有するものであるから、更新後においても、本件解約金条項が法第10条後段に該当することはない。

◆ H25.01.25大阪高裁判決(H25.02.05更正決定)

2013年3月2日 公開

平成24年(ネ)第281号解約金条項使用差止請求、解約金請求、解約金返還請求、不当利得返還請求控訴事件、平成24年(ネ)第941号 同附帯控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2187号30頁
裁判官 山田知司、水谷美穂子、和久田道雄
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワークHP
事業者 株式会社セレマ、株式会社らくらくクラブ
第1審 H23.12.13京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が冠婚葬祭の相互扶助や儀式設備の提供等を業とする株式会社セレマ及び旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する募集業務等を業とする株式会社らくらくクラブに対し、①被告セレマ及び被告らくらくが消費者との間で締結している互助契約又は積立契約において、それぞれ契約解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解約金を差し引くとの条項を設けていることに関し、同条項は消費者契約法第9条第1号又は同法第10条に該当するものであり、消費者に対し解約金を差し引くことを内容とする意思表示を行わないこと、②①が記載された契約書雛形が印刷された契約書を破棄すること、③従業員らに対し、①の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書の破棄を指示することを求めた事案の控訴審。

【判断の内容】
(セレマについて)
① 本件互助契約は、消費者が将来行う冠婚葬祭に先立って、所定の月掛金を前払いで積み立てることにより、消費者は冠婚葬祭の施行を受ける権利を取得し、被告セレマは、消費者の請求により冠婚葬祭の施行をする義務を負う役務提供契約であって、同被告は、消費者から冠婚葬祭の施行の請求を受けて初めて、当該消費者のために冠婚葬祭の施行に向けた具体的な準備等を始めるものである。すると、具体的な冠婚葬祭の施行の請求がされる前に本件互助契約が解約された場合には,損害賠償の範囲は原状回復を内容とするものに限定されるべきであり、具体的には契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額が、法第9条第1号の「平均的な損害」となるものと解される。
② 平均的な費用(経費)の額というのは、現実に生じた費用の額ではなく、同種契約において通常要する必要経費の額を指すものというべき。ここでいう必要経費とは、契約の相手方である消費者に負担させることが正当化されるもの、すなわち、性質上個々の契約(消費者契約)との間において関連性が認められるものを意味するものと解するのが相当である。
③ 本件互助契約において「平均的な損害」に含まれるものは、個々の契約との関連性が認められ、会員の管理に要する費用として同業他社でも通常支出しているものと考えられる、月掛金を1回振り替える度に被告セレマが負担する振替手数料58 円と振替不能となった場合の通知の送付費用2円を合わせた60 円、並びに年2回の「全日本ニュース」及び年1回の入金状況通知の作成・送付費用14.27 円(1件月当たりの金額1年当たりの金額)ということになる。
④ したがって、被告セレマは、消費者との間で、冠婚葬祭の互助会契約を締結するのに際し、消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでに解約する場合、解約時に支払済み金額から「所定の手数料」などの名目で、60 円に第1回目を除く払込みの回数を掛けた金額及び14.27 円に契約月数契約年数を掛けた金額を超える解約金を差し引いて消費者に対し返金する旨を内容とする意思表示を行ってはならない。

◆ H24.10.23最高裁決定

2013年2月2日 公開

平成23年(受)第1698号
決定写し(PDF、ひょうご消費者ネットHP)
裁判官 岡部喜代子、田原睦夫、大谷剛彦、寺田逸郎、大橋正春
適格消費者団体 ひょうご消費者ネット
事業者 株式会社ジャルパック(旧商号株式会社ジャルツアーズ)
第1審 H22.12.08神戸地裁判決
控訴審 H23.06.07大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が、旅行業を営む株式会社ジャルツアーズに対し、株式会社日本航空インターナショナル(JAL)の発行する企業ポイントにより旅行代金等が決済された後の契約の取消しないし変更があった場合に、同企業ポイントの返還をしない旨の条項が、被告と消費者との間で締結する企画旅行契約における契約条項となっており、消費者契約法第10条及び第9条第1号に違反して無効であるとして、本件条項を含む契約の締結の差止め等を求めた事案。契約条項とならない等として請求を棄却した控訴審判決に対する上告受理申立。

【判断の内容】
上告不受理。

◆ H24.12.07大阪高裁判決

2012年12月29日 公開

平成24年(ネ)第1476号解約違約金条項使用差止・不当利得返還請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、金融商事判例1409号40頁、判例時報2176号33頁、現代消費者法21号73頁
裁判官 渡邉安一、池田光宏、善元貞彦
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
【第1審】H24.03.28京都地裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が携帯電話会社に対し、解約金に関する条項が9条1号又は10条に該当して無効であると主張して、12条3項に基づき当該条項の内容を含む契約締結の意思表示の差止めを求め、同条項に基づく違約金を被告に対して支払った者が不当利得返還請求を行った事案。

【判断の内容】
 当該解約金の額にいわゆる「平均的な損害」の額を超える部分がないと認められるとして、これを棄却した第1審判決は、原判示および本判示の事実関係の下においては、当該「平均的な損害」の額は第1審判決の認定の額を下回るが、これを是認することができる。

◆ H24.12.21名古屋地裁判決

2012年12月21日 公開

平成23年(ワ)第5915号不当条項差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、あいち消費者被害防止ネットワークHP)、判例時報2177号92頁、消費者法ニュース97号241頁
裁判官 片田信宏、鈴木陽一郎、古賀千尋
適格消費者団体 あいち消費者被害防止ネットワーク
事業者 学校法人モード学園

【事案の概要】
 適格消費者団体が,専門学校に対し,AO入試,推薦入試,専願での一般・社会人入試及び編入学によって入学を許可された場合,入学辞退の申出の時期(在学契約が解除される時期)にかかわらず,一律に学費を返還しないとの不返還条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示等の差止めを求めた事件。

【判断の内容】
以下のように判断し、不返還条項を含む契約の申込又はその承諾の意思表示等の差し止めを認め、条項が記載された書面、電子データの破棄、従業員への周知徹底を命じた。
① 在学契約の解除に伴い被告に生ずべき平均的な損害は,一人の学生と被告との在学契約が解除されることによって,被告に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解するのが相当である。
② 当該在学契約が解除された場合には,その時期が当該大学において当該解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,当該大学には当該解除に伴い初年度に納付すべき授業料等及び諸会費等に相当する平均的な損害が生ずるものというべきである。
③ 本件では特段の事情があり、9条1号に反する。
④ 本件不返還条項は9条1号により一部無効であるが,同法12条3項は,このような不当な契約条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の差止めを認めていると解される。

◆ H23.12.12東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 脱退被告と金銭消費貸借契約(本件契約)を締結した原告が、本件契約にかかる事務手数料条項が法10条により無効であること、本件契約締結時に事務手数料条項についてほとんど説明を行わなかったことは契約の重要事項について消費者の不利益となる事実の不告知に当たるため法4条2項により取消権を有すること、契約時、脱退被告の担当者6名から契約締結を迫られ、一時退出して再検討する機会を与えられないまま締結に至ったものであるため法4条3項2号により取消権を有すること等を主張して、貸付金の債権譲渡を受けた引受参加人に対し債務不存在の確認を求めた。

【判断の内容】
 事務手数料については、民法その他法律の任意規定の適用による場合に比べて消費者の義務を加重するというに足りる事実の主張はないとして、10条の該当性を否定した。また、契約締結時の事務手数料に関する説明については、契約証書にも明記され原告がこれを融資実行より前に受領していること、融資実行時に原告が事務手数料控除について疑問を持った形跡がないこと等を認定し、本件契約締結時に不利益事実の不告知があったとは認められないとして、法4条2項の該当性を否定した。さらに、契約締結時、原告が退去の意思を示したにもかかわらず、脱退被告担当者が退去させなかった事実は認められないとして、法4条3項2号の該当性も否定し、原告の請求を棄却した。

◆ H22.11.12神戸地裁尼崎支部判決

2012年12月1日 公開

判例タイムズ1352号186頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 マンションの一室(本件居室)につき被告を賃貸人、原告を賃借人とする賃貸借契約を締結した際、原告は被告に150万円の敷金を預託した(本件預託金)。本件預託金に関しては「契約時より起算した経過年数が10年未満である場合は、預託された敷金から40%を差し引いた残額を返還する」との特約(本件敷引特約)があった。契約締結から約8年7カ月後、原告は賃貸借契約の解除を申し出、本件居室を明け渡したことから、被告は本件敷引特約に従い、本件預託金150万円から40%差し引いた90万円から日割賃料等を差し引いた額を原告に返還した。これに対し原告は、本件預託金は賃貸借契約から生じる債務を担保するという敷金の性質を有しているが、本件敷引特約は、民法661条1項、587条適用の場合に比し消費者である賃借人の権利を制限し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するため、法10条に反し無効であるとし、差し引かれた60万円の返還等を請求した。

【判断の内容】
 敷金とは、一般に、賃貸借契約終了後、目的物の明渡義務履行までに生ずる損害金その他賃貸借契約関係により賃貸人が賃借人に対し取得する一切の債権を担保するものと解される。本件敷引特約は契約後の事情によって定まるものであり、礼金や権利金等の当初から返還されないこととなっている一時金とは異なり、賃借人に生じた債務以外の理由で敷金の一部が差し引かれる定めであるから、任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重する条項である。しかしながら、敷引特約は一般に行われているものであり、原告も本件敷引特約を理解したうえで賃貸借契約を締結した等の事情からすれば、本件敷引特約が消費者の利益を信義則に反する程度に両当事者間の衡平を損なうものとはいえないとして、原告の請求を棄却した。

◆ H23.07.22名古屋高裁判決

2012年12月1日 公開

平成23年(ネ)第418号不当利得返還請求控訴事件
消費者法ニュース90号188頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 中村直文、朝日貴浩、濱優子
第1審 名古屋地裁平成22年(ワ)第3100号

【事案の概要】
 専門学校である被告は、入試方法として、AO入試、推薦入試、及び一般・社会人入試という3つの区分を設けていた。原告は、このうちの一般・社会人入試区分の専願入試及び学内併願制度を利用し、学内併願制度により、第2希望の学科に合格した。その後、原告は、平成22年3月15日に被告に対し在学契約解除の意思表示をし、納入した学費の返還を請求した。

【判断の内容】
 被告の入学年度が始まるのが4月1日であること、定員について法令による一定の規制があること、併願受験も想定されることに照らして、大学の場合と別異に解するべきではない。
 被告においては、早期に一般入試と異なるAO入試および推薦入試があること、一般・社会人入試の「専願」と「併願」はほとんど差異はなく、一次募集、二次募集および欠員募集合わせて計10回が予定されていること、被告においては、学内併願制度を設けており、第1希望の学科が不合格であった場合に自動的に第2希望の学科の選考が実施されることになっており、原告もこれにより合格したものであること、そして、原告が受験した学部の入学者は、欠員募集による入学者を加えても定員に満たなかったことが認められる。
 以上から、原告が受験した区分の専願入試は、他の受験者よりも早期に有利な条件で入学できる地位を実質的に確保しているとも、また、学生が在学契約を締結した時点で、被告に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予想されるとも認めがたい実態にあるというというべきであるから、その在学契約の解除の意思表示が3月31日までになされた場合は、被告に生ずべき法9条1号所定の平均的損害は存しないものと認められるので、本件不返還特約は無効である。そして、原告が3月15日に解除の意思表示をしたことは明らかであるので、被告は原告に対し本件学費を返還する義務を負うとした。

◆ H23.07.28東京地裁判決

2012年12月1日 公開

平成22年(ワ)第47503号不当利得返還請求事件
判例タイムズ1374号163頁、現代消費者法19号83頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 木納敏和

【事案の概要】
 原告は、被告に対し、往復航空券及び3日分の宿泊先の手配を依頼し、手配旅行契約(本件契約)を締結した。本件契約の約款においては、「旅行者が手配旅行契約を解除した場合には、取消料、違約金その他の運送・宿泊機関等に関する費用を負担するほか、被告に対し所定の取消手数料金及び被告が得るはずであった取消料金を支払わなければならない」と定められていた。被告の担当者は原告に対し、本件契約を締結する際に、原告が予約手配を申し込んだ航空券について、発券後の取消し手続料金が代金の100%となることを説明し、原告に対し、この説明内容が記載されたパンフレットを交付した。原告は、旅行代金を支払い後、本件契約を解除する旨の意思表示をした。原告は、本件約款が公序良俗に反して無効であり、仮にそうでないとしても法9条1号により「平均的な損害」を超える部分について無効であると主張し、本件契約に基づき支払った金員からすでに返還を受けた金員を控除した分の返還を請求した。

【判断の内容】
 本件約款は、標準旅行業約款に基づくものであることから、公序良俗に反しない。
 本件約款は、①既に旅行者が受けた旅行サービスの対価、②取消料、違約金その他の運送・宿泊機関等に関する費用の負担、③旅行業者に対し、所定の取消手続料金等を定めているものであって、その内容に照らせば、「平均的な損害」の内容を一般的に定めたものと解される。そして、原告の自己都合による解除で生じた航空会社やホテルに対して支払うべき取消料・違約料に相当する額を、原告のために手配を行ったに過ぎない被告が負担しなければならない理由はないのであるから、これらの取消料・違約料相当額は、法9条1号の「平均的な損害」の範囲内のものとして、被告には返還義務が生じないと解するのが相当である、とした。

◆ H23.08.02西宮簡裁判決

2012年12月1日 公開

消費者法ニュース90号186頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告は、被告と建物(本件居室)の賃貸借契約(本件賃貸借契約)を締結した。本件賃貸借契約には、預託された敷金50万円から無条件に40万円を控除するという敷引特約(本件敷引特約)があったことから、原告は、被告に対して、本件敷引特約は法10条に反すると主張し、敷金の返還を請求した。

【判断の内容】
 本件敷引特約は、敷引率が80%と高率であり、かつ、月額賃料の約4.3倍になることからすると、敷金授受目的を超えるもので高額に過ぎると評価せざるを得ず、高額な敷引金を許容する特段の事情は認めがたい。ただし、本件については、①被告は敷引金40万円以外には、更新料及び礼金等の金銭を原告から徴収していないこと、②賃借期間が6年間であったこと、③原告は、本件賃貸借契約に先立ち、本件敷引特約について説明を受け、その趣旨を十分に理解した上で本件賃貸借契約を締結していること等の事情が認められるところ、これらの事情は、敷引額を考慮する合理的な理由と認めるのが相当である。以上の事情からすると、本件敷引特約については、月額の3カ月分が相当な敷引金の範囲と解するのが相当であり、それを超える額については、敷金の性質からして、一般消費者である原告の利益を一方的に害する特約として、法10条に反して無効である。

◆ H23.11.17東京地裁判決

2012年12月1日 公開

平成23年(レ)第26号不当利得返還請求控訴事件
判例タイムズ1380号235頁、判例時報2150号49頁、現代消費者法19号73頁、消費者法ニュース91号186頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 齊木敏文、日景聡、百瀬玲

【事案の概要】
 被控訴人が経営する旅館での宿泊を予約していた控訴人(権利能力なき社団)は、宿泊予定者の一部が新型インフルエンザに罹患したため宿泊を取消し、被控訴人に取消料(本件取消料)を支払ったが、本件取消料の合意は不成立であったこと、仮に成立したとしても取消料発生要件を満たしていないこと、本件取消料条項は法9条1項が規定する「平均的な損害」を超える取消料を定めるものであるから無効であること等を主張して、被控訴人に対し、不当利得に基づく利得金の返還等を請求した。原判決は、控訴人の請求を棄却したためこれを不服として控訴した。

【判断の内容】
 以下のように判示し、返還請求を一部認容した。
① 本件取消料については合意が成立しており、本件取消料発生要件の「お客様の都合」とは、旅行者側の事情によって取り消した場合を広く含むものであるから、本件において取消料発生の要件は満たされている。
② 権利能力なき社団が法2条の「消費者」に該当するかに関して、権利能力なき社団のように、一定の構成員により構成される組織であっても、消費者との関係で情報の質及び量並びに交渉力において優位に立っていると評価できないものについては、「消費者」に該当すると解するのが相当であり、控訴人は「消費者」に該当する。
③ 「平均的な損害」(9条1号)とは、同一事業者が締結する同種契約事案において類型的に考察した場合に算定される平均的な損害額であり、具体的には、当該解除の事由、時期に従い、当該事業者に生ずべき損害の内容、損害回避の可能性等に照らして判断すべきものと解するのが相当。
④ 本件の「平均的な損害」を宿泊料およびグラウンド使用料等にかかる79万7845円と認定し、これを超える取消料の額を定める部分は法9条1号により無効となるとした。

◆ H23.12.26東京高裁判決

2012年12月1日 公開

平成23年(ツ)第82号保証債務請求上告事件
判例時報2142号31頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 南敏文、野村高弘、棚橋哲夫

【事案の概要】
 金銭消費貸借契約に関する保証契約を締結した上告人と被上告人は、その債務の額を利息制限法の制限利率内で確認するとともに、その弁済方法および条件付一部債務免除等を定める和解契約(本件和解契約)を締結したが、上告人が弁済を怠ったとして、被上告人は残元金の支払いを求めたところ,上告人は遅延損害金の利率の上限を争った。原審は、本件和解契約には消費者契約法が適用され、本件和解契約は、本件貸付金契約及び本件保証契約とは別に創設的に締結された契約であり、それ自体として「金銭を目的とする消費貸借契約」(利息制限法1条)に該当しないから、法11条2項の適用はなく、法9条2号の適用は排除されないとし、期限の利益を喪失した日以降の年利14.6%を超える違約金又は損害賠償の予定の定めは無効であるとした。これに対して被告は、期限の利益喪失以前の年21.9%の遅延損害金の定めを不問にしているとして上告した。

【判断の内容】
 本件和解契約について消費貸借上の債務と取扱いを異にして利息制限法上の制限利率の適用を排除すべき実質的な理由はないというべきであるから、法11条2項により、和解契約における遅延損害金の利率には、賠償額の予定の制限を定めた利息制限法4条1項の規定の適用があり、法9条2号は適用されないとし、本件和解契約の遅延損害金の上限は年21.9%となると解すべきと判断したが、原審を上告人に不利益に変更できないとして上告を棄却した。

◆ H24.01.12京都地裁判決

2012年12月1日 公開

最高裁HP、消費者法ニュース91号252頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)、判例時報2165号106頁、2187号161頁
裁判官 佐藤明、栁本つとむ、板東純

【事案の概要】
 被告との間で、携帯電話端末を利用する電気通信役務提供契約(3Gサービス契約)を締結した原告は、携帯電話端末とパソコンを接続し、携帯電話端末をモデムとして用いることによりパソコンでインターネット通信をすることができるサービスを利用し、通信料として被告から約20万円を請求された。そこで、原告は被告に対し、主位的に、通信料金に関する契約条項のうち、一般消費者が本件サービスを利用するに際し通常予測する額である1万円を超える部分は法10条もしくは公序良俗に反するため無効であるとして不当利得の返還を、選択的に、被告は原告に対し契約に関する説明義務があったにもかかわらずこれを怠った等として債務不履行による損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 パケット料金に関する条項は被告の提供する役務の対価に関する条項であるが、当事者間で明確な合意がなされた場合は、役務提供の単価の当否は基本的には市場による評価および調整に委ねるべき事柄であり、双務契約における対価または対価の決定方法を定める明文規定・一般法理は存在しないとして、法10条前段に該当しないとし、公序良俗違反にも当たらないとした。しかし、いったん利用を開始し通信料金が高額となった後の段階においては、原告のインターネット接続サービスの利用により高額なパケット通信料金が発生しており、それが原告の誤解や不注意に基づくものであることが被告においても容易に認識しうる場合は、被告には本件契約上の付随義務として原告に注意喚起する義務があり、本件では5万円を超える部分の料金について被告の義務違反があったとして、原告の請求を一部認めた。

◆ H24.05.30高松地裁判決

2012年12月1日 公開

平成23年(ワ)第465号解約金返還請求事件
国セン発表情報(2012年11月1日公表)
控訴審 H24.11.27高松高裁判決

【事案の概要】
 原告が、電気通信事業等を営む被告に対し、被告の提供する携帯電話の割引サービス(本件契約)につき、販売時における表示がわかりにくく、4条2項、9条、10条および民法90条に違反しており無効であるとして解約金の返還を請求した。

【判断の内容】
 被告の販売時における表示等によれば、消費者は本件契約が2年間ごとの契約であって契約期間中に解約した場合には契約満了月の翌月を除いて解約金が発生すると理解することが十分可能であり、直ちに消費者を誤信させるものではない。また、解約金の規定についても、パンフレットに明記されていること、不利益となる事実を故意に告げなかったとは認められないこと、原告が通常の料金プランの場合と比較して既に解約金を超える利益を得ていること等の事情からすると、本件契約の規定は消費者の利益を一方的に害するものとはいえず、消費者契約法各条項その他の法律に違反するとは認められないとした。

◆ H23.07.15最高裁判決

2012年12月1日 公開

平成22年(オ)第863号、平成22年(受)第1066号更新料返還等請求本訴、更新料請求反訴、保証債務履行請求事件
最高裁HP、最高裁判所民事判例集65巻5号2269頁、裁判所時報1535号265頁、判例タイムズ1361号89頁、金融商事判例1384号35頁、金融商事判例1372号7頁、判例時報2135号38頁、判例時報2157号148頁、金融法務事情1948号83頁、ジュリスト1441号106頁、民商法雑誌146巻1号92頁、現代消費者法13号103頁、国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 古田佑紀、竹内行夫、須藤正彦、千葉勝美
第1審 H21.09.25京都地裁判決(1)
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決

【事案の概要】
 建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、原判決を破棄し、更新料の支払いを命じた。
① 消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。
② 更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当。
③ 10条の、民法等の法律の公の秩序に関しない規定、すなわち任意規定には、明文の規定のみならず,一般的な法理等
も含まれると解するのが相当。更新料条項は、任意規定の適用による場合に比し、消費差hである賃借人の義務を加重するものにあたる。
④ 問題となる条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的
(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべき。
⑤ 更新料の前記性質からは、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできないし、一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
⑥ 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
⑦ 本件には特段の事情はない。
⑧ 定額補修分担金の返還に関する部分は上告理由書提出がないため却下された。

◆ H23.07.12最高裁判決

2012年12月1日 公開

平成22年(受)第676号保証金返還請求事件
最高裁HP、最高裁判所裁判集民事237号215頁、裁判所時報1535号257頁、判例タイムズ1356号81頁、金融商事判例1378号28頁、判例時報2128号33頁、判例時報2145号154頁、金融法務事情1948号90頁、現代消費者法13号110頁
裁判官 田原睦夫(補足意見)、那須弘平、岡部喜代子(反対意見)、大谷剛彦、寺田逸郎(補足意見)
第1審 H21.07.30京都地裁判決
控訴審 H21.12.15大阪高裁判決

【事案の概要】
 マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
 原判決を破棄し、本件敷引条項は10条違反にならないとした。
① 敷引特約について、賃貸人は,通常,賃料のほか種々の名目で授受される金員を含め,これらを総合的に考慮して契約条件を定め,また,賃借人も,賃料のほかに賃借人が支払うべき一時金の額や,その全部ないし一部が建物の明渡し後も返還されない旨の契約条件が契約書に明記されていれば,賃貸借契約の締結に当たって,当該契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上,複数の賃貸物件の契約条件を比較検討して,自らにとってより有利な物件を選択することができる。賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる敷引特約を定め,賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締結に至ったのであれば,それは賃貸人,賃借人双方の経済的合理性を有する行為と評価すべきものであるから,消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,敷引金の額が賃料の額等に照らし高額に過ぎるなどの事情があれば格別,そうでない限り,これが信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものということはできない(最高裁平成21年(受)第1679号同23年3月24日第一小法廷判決・民集65巻2号登載予定参照)。
② 本件では、敷引き条項について明確に読み取れる条項が置かれていたのであり、賃借人は本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものというべき。
③ 本件契約における賃料は,契約当初は月額17万5000円,更新後は17万円であって,本件敷引金の額はその3.5倍程度にとどまっており,高額に過ぎるとはいい難く,本件敷引金の額が,近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比して,大幅に高額であることもうかがわれない。
(補足意見および反対意見がある)

【岡部喜代子反対意見】
① 敷引金は個々の契約ごとに様々な性質を有するものであるのに,消費者たる賃借人がその性質を認識することができないまま賃貸借契約を締結していることが問題なのであり,敷引金の総額を明確に認識していることで足りるものではない。
② 敷引金は,損耗の修繕費(通常損耗料ないし自然損耗料),空室損料,賃料の補充ないし前払,礼金等の性質を有するといわれており,その性質は個々の契約ごとに異なり得るものである。そうすると,賃借物件を賃借しようとする者は,当該敷引金がいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容が明示されてはじめて,その内容に応じた検討をする機会が与えられ,賃貸人と交渉することが可能となるというべきである。例えば,損耗の修繕費として敷引金が設定されているのであれば,かかる費用は本来賃料の中に含まれるべきものであるから(最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日第二小法廷判決・裁判集民事218号1239頁参照),賃借人は,当該敷引金が上記の性質を有するものであることが明示されてはじめて,当該敷引金の額に対応して月々の賃料がその分相場より低額なものとなっているのか否か検討し交渉することが可能となる。また,敷引金が礼金ないし権利金の性質を有するというのであれば,その旨が明示されてはじめて,賃借人は,それが礼金ないし権利金として相当か否かを検討し交渉することができる。事業者たる賃貸人は,自ら敷引金の額を決定し,賃借人にこれを提示しているのであるから,その具体的内容を示すことは可能であり,容易でもある。それに対して消費者たる賃借人は,賃貸人から明示されない限りは,その具体的内容を知ることもできないのであるから,契約書に敷引金の総額が明記されていたとしても,消費者である賃借人に敷引特約に応じるか否かを決定するために十分な情報が与えられているとはいえない。
③ 消費者契約においては,消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することが前提となっており(消費者契約法1条参照),消費者契約関係にある,あるいは消費者契約関係に入ろうとする事業者が,消費者に対して金銭的負担を求めるときに,その対価ないし対応する利益の具体的内容を示すことは,消費者の契約締結の自由を実質的に保障するために不可欠である。敷引特約についても,敷引金の具体的内容を明示することは,契約締結の自由を実質的に保障するために,情報量等において優位に立つ事業者たる賃貸人の信義則上の義務であると考える(なお,消費者契約法3条1項は,契約条項を明確なものとする事業者の義務を努力義務にとどめているが,敷引特約のように,事業者が消費者に対し金銭的負担を求める場合に,かかる負担の対価等の具体的内容を明示する義務を事業者に負わせることは,同項に反するものではない。)。このように解することは,最高裁平成9年(オ)第1446号同10年9月3日第一小法廷判決・民集52巻6号1467頁が,災害により居住用の賃借家屋が滅失して賃貸借契約が終了した場合において,敷引特約を適用して敷引金の返還を不要とするには,礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存することを要求していること,前掲最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決が,通常損耗についての原状回復義務を賃借人に負わせるには,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であるとしていることから明らかなように,当審の判例の趣旨にも沿うものである。
④ 10条前段要件は満たす。
⑤ 後段該当性についてみると,原審認定によれば,本件敷引金の額は本件契約書に明示されていたものの,これがいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容は本件契約書に何ら明示されていないのであり,また,上告人と被上告人との間では,本件契約を締結するに当たって,本件建物の付加価値を取得する対価の趣旨で礼金を授受する旨の合意がなされたとも,改装費用の一部を被上告人に負担させる趣旨で本件敷引金の合意がなされたとも認められないというのであって,かかる認定は記録に徴して十分首肯できるところである。したがって,賃貸人たる上告人は,本件敷引金の性質についてその具体的内容を明示する信義則上の義務に反しているというべきである。加えて,本件敷引金の額は,月額賃料の約3.5倍に達するのであって,これを一時に支払う被上告人の負担は決して軽いものではないのであるから,本件特約は高額な本件敷引金の支払義務を被上告人に負わせるものであって,被上告人の利益を一方的に害するものである。
 以上のとおりであるから,本件特約は消費者契約法10条により無効と解すべきである。
⑥ 上告人は,建物賃貸借関係の分野では自己責任の範囲が拡大されてきている,本件特約を無効とすることにより種々の弊害が生ずるなどと述べるが,賃借人に自己責任を求めるには,賃借人が十分な情報を与えられていることが前提となるのであって,私が以上述べたところは,賃借人の自己責任と矛盾するものではなく,かつ,敷引特約を一律に無効と解するものでもないから,上告人の上記非難は当たらない。

◆ H24.11.20京都地裁判決

2012年11月20日 公開

平成23年(ワ)第146号解除料条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2169号68頁、判例タイムズ1389号340頁
裁判官 杉江佳治、小堀悟、畦地英稔
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 ソフトバンクモバイル株式会社
控訴審 H25.07.11大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,電気通信事業等を営む事業者に対して,2年間の契約期間の定めのある携帯電話通信契約を中途解約する際に解除料として9975円の支払義務があることを定める条項が消費者契約法9条1号・10条に反するとして同条項の使用の差止めを求めたもの。

【判断の内容】
① 契約の主要な目的や物品又は役務等の対価それ自体(いわゆる中心条項)については,契約自由の原則が最も強く働くものであるから,消費者と事業者との格差が存在することを踏まえても,当事者の合意に委ねるべきであり,公序良俗違反となるような例外的な場合に民法によって無効とされることがあるにとどまり,法9条及び10条は適用されない。
 中心条項に該当するか否かについては,当該条項の文言,契約全体での位置づけ及び当事者の意思などを総合的に考慮して決すべき。
 本件解除料条項は中心条項にはあたらない。
② 本件契約の平均的損害を算定するためには,逸失利益も考慮に入れるべきであるところ、本件解除料の額は平均的損害を超えることはないので、9条1号に反しない。
③ 本件当初解除料条項及び本件更新後解除料条項はいずれも10条に反しない。

◆ H24.11.12大阪地裁判決

2012年11月12日 公開

平成23年(ワ)第13904号契約解除意思表示差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)消費者支援機構関西HP、金融・商事判例1407号14頁、判例時報2174号77頁、判例タイムズ1387号207頁
裁判官 松田亨、西村欣也、諸井明仁
適格消費者団体 消費者支援機構関西HP
事業者 株式会社明来

【事案の概要】
 適格消費者団体が、不動産賃貸業を営む事業者である被告に対し、被告の使用する賃貸借契約書の条項が法9条各号又は10条に該当するとして、法12条3項に基づき、同契約書による意思表示の差止め、契約書用紙の破棄並びに差止め及び契約書破棄のための従業員への指示を求めた事案。

【判断の内容】
① 法41条1項に基づく事前請求があったか
 本件事前請求は、本件旧契約書の条項数を示しているものの、その請求内容としては、本件請求の内容の意思表示の差止めを求めたものである。そして、原告は、本件事前請求と同一内容の本件訴訟を提起しているのであるから、本件事前請求が法41条1項の事前請求に該当し、本件訴えが適法であるといえる。
② 本件請求は12条の2第1項(不当な目的に出た請求)又は23条2項(差止請求の濫用)に当たらない。
③ 別紙契約条項目録記載の契約条項について、被告に意思表示を行うおそれがあるか
 被告は、本件旧契約書を改訂し、本件新契約書のひな型には当該(争われている)条項が印刷されていないことや被告の訴訟態度から、(記載されている条項について意思表示を被告が行うそれはあるとして)記載されていない条項については意思表示を被告が行うおそれはないというべきである。
④ 事業者である賃貸人に対して消費者である賃借人との間で建物の賃貸借契約を締結する際の契約条項の差止め等を求める適格消費者団体の請求は、当該契約条項のうち、賃借人が後見開始ないし保佐開始の審判を受け、あるいは、その申立てを受けた場合に賃貸人が賃貸借契約を解除することができる旨の条項に係る部分については、当該契約条項が消費者契約法10条に該当する以上、賃貸人が賃貸借契約を締結する際にその旨の意思表示を行ってはならないことおよび当該意思表示が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄することを求める限度で、その請求に理由があるが、賃貸人の従業員に対するその旨の指示を求める請求およびその余の契約条項に係る請求については、いずれもその理由がない。

◆ H24.10.25東京高裁判決

2012年10月25日 公開

平成24年(ネ)第2459号生命保険契約存在確認請求控訴事件
金融商事判例1404号16頁、判例タイムズ1387号266頁、LLI/DB
裁判官 齋藤隆、一木文智、春名茂
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決

【事案の概要】
 無催告失効条項が消費者契約法10条に違反せず、復活の申込不承諾が信義則違反ないし権利の濫用に当たるとはいえないとした事例。
 H24.03.16最高裁判決の差し戻し審。

【判決要旨】
 本件保険契約においては、保険料の不払いにより直ちに契約が失効するものではなく、本件猶予期間条項により払込期月の翌月の末日までの1ヵ月間に債務不履行が解消されない場合に初めて当然失効すること、その猶予期間も、金銭債務の不履行について民法541条を適用する場合に通常求められる催告期間が通常は数日から1週間程度にとどまるのに対比して、1ヵ月と長く定められていること、不払いのまま上記猶予期間が経過しても、払い込むべき保険料と利息の合計額が解約返戻金を超えない場合に本件自動貸付条項により契約の存続を図るなど、保険契約者の保護のための方策が採られているのであって、一概に履行の催告を不要としている点だけを捉えて、保険契約者の利益を一方的に害するとするのは相当ではない。
 履行の催告は、債務者に対して債務不履行の状態にあることを知らしめてその履行を促し、契約の存続を図る機会を与えるための制度であるから、保険契約者に対して契約の失効を防ぐための配慮をする一方、形式的には催告に当たらなくとも、その前段階である債権管理の場面で保険料の支払いを怠った保険契約者に対して債務不履行の状態にあることを知らしめて契約の失効を防ぐための方策を講じていることになるので、本件失効条項をもって信義則に反するものとすることはできない。
 保険契約者は、毎月の保険料を支払う経済力があるとの前提で保険に加入したはずであって、未納保険料が発生した場合のこれに対する督促の態勢の整備およびその実務上の運用の確実性は、保険契約者が保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができる程度に整えられ、かつ、確実に運用されることをもって足りると解されるから、保険料の支払督促を受けてから払込猶予期間内の振替日まで7日程度の時間的余裕がある本件において、未納通知書の送付から振替日ないし支払猶予期間満了日までの期間が不当に短いとはいえない。
 本件各保険契約の3度目の失効直前に被控訴人の営業担当者があえて控訴人方へ集金に赴かなかったことを考慮しても、被控訴人との間で締結した保険契約を過去に2度失効させ、3度目の失効により生じる不利益を十分知りながら、あえて払込猶予期間中に保険料の支払いをしなかった控訴人による復活の申込を不承諾としたことが、被控訴人による信義則違反ないし権利の濫用に当たるとはいえない。

◆ H24.06.29大阪高裁判決

2012年7月21日 公開

消費者庁HP(PDF)国セン発表情報(2012年11月1日公表)
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ジェイ・エス・ビー
第1審 H24.01.17京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が、不動産業者である株式会社ジェイ・エス・ビーに対し、更新料条項が10条により無効であるとして、主位的に、更新料条項を含む意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求め、予備的に、更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍以上の更新料を支払う旨の条項につき、主位的請求と同様に、その意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求めた事案の控訴審。第1審は請求を棄却し、主意的請求について原告が控訴した。

【判断の内容】
控訴棄却。
① 被控訴人が現に使用していた更新料条項の額が高額に過ぎ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かを判断するためには、更新料の額、賃料の額、賃貸借契約が更新される期間のほかにも、賃貸借物件の適正賃料額と約定賃料額との対比や、賃借人が支払う賃料や更新料等を含めた総支払額と適正賃料額との対比等の個別具体的な事情を各賃貸借契約ごとに斟酌、検討することが必要となるから、そのような個別具体的な事情を斟酌することなく、一律に上記更新料額が高額に過ぎ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは直ちに断定することができないというべきである。
② 被控訴人が現に使用していた更新料条項において一律に平成23年最判が説示する特段の事情があるとはにわかに認めることができない。

◆ H24.07.19京都地裁判決

2012年7月19日 公開

平成22年(ワ)第2497号、平成23年(ワ)第917号、平成24年(ワ)第555号解約違約金条項使用差止請求事件(第1事件)、不当利得返還請求事件(第2事件、第3事件)
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、金融商事判例1402号31頁、判例時報2158号95頁、判例タイムズ1388号343頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 佐藤明、柳本つとむ、板東純
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 KDDI株式会社
控訴審 H25.03.29大阪高裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が、携帯電話会社に対し、消費者が二年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が、9条1号及び10条により無効であると主張して、12条3項に基づき、条項使用差し止めを求め(第1事件)、解約金の不当利得返還請求を求める事案(第2事件、第3事件)。請求を一部認容した。

【判断の内容】
① 9条1号の趣旨は、事業者が、消費者に対し、消費者契約の解除に伴い事業者に「通常生ずべき損害」(民法416条1項)を超過する過大な解約金等の請求をすることを防止するという点にある。したがって、9条1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものである。
② 同号が「平均的」という文言を用いたのは、消費者契約は不特定かつ多数の消費者との間で締結されるという特徴を有し、個別の契約の解除に伴い事業者に生じる損害を算定・予測することは困難であること等から、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の契約における平均値を用いて、解除に伴い事業者に生じる損害を算定することを許容する趣旨に基づくもの。
③ 9条1号は、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」て事業者に生ずべき平均的損害を算定することを定めるが、事業者が解除の事由、時期等による区分をせずに、一律に一定の解約金の支払義務があることを定める契約条項を使用している場合であっても、解除の事由、時期等により事業者に生ずべき損害に著しい差異がある契約類型においては、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約における平均値を用いて、各区分毎に、解除に伴い事業者に生じる損害を算定すべきである。
④ 以上によれば、9条1号の平均的損害の算定は、民法416条に基づく損害の算定方法を前提とし、解除事由、時期等により同一の区分に分類される同種の契約における平均値を求める方法により行うべきである。
⑤ 本件解約金条項中、①本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて二二か月目の月の末日までに解約がされた場合に解約金の支払義務があることを定める部分は有効であるが、②本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて二三か月目以降に解約した場合に「平均的損害の額」(別紙として算定)を超過する解約金の支払義務があることを定める部分は、上記超過額の限度で、9条1号により、無効である。
⑥ 解約に伴い、別の契約を締結する機会が新たに生じ、これにより損害が填補されたといえる場合には、解約に伴う逸失利益から上記損害の填補額を控除することにより平均的損害を算定するが、解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じたといえない場合には、平均的損害の算定にあたり、他の契約を締結することによる損害の填補の可能性を考慮することはできない。本件通信契約においては、ある契約が締結されることにより、他の契約を締結する機会を喪失するとはいえず、それゆえ、解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じるともいえないから、他の契約を締結することによる損害の填補の可能性を考慮することはできない。

◆ H24.07.11東京高裁判決

2012年7月11日 公開

平成23年(ネ)第6129号保険金請求控訴事件
金融商事判例1399号8頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 福田剛久、塩田直也、東亜由美

【事案の概要】
 生命保険契約で、①失効条項(月払契約の場合、払込期月の翌日初日から末日まで保険料を猶予するが、猶予期間内に保険料が払い込まれないときは、保険契約は猶予期間満了の日の翌日から効力を失う旨の条項)、②復活条項(保険契約者は、保険契約が効力を失った日から起算して3年以内は保険契約の復活を請求することができる旨の条項)、③自殺免責条項(責任開始期〔復活の取扱いが行われた後は最後の復活の際の責任開始期〕の属する日から起算して2年以内の自殺を免責事由とする条項)があり、本件保険契約は、①平成19年8月31日の経過により、同年7月分の保険料の不払を理由として本件失効条項により失効したものと扱われ、②同年10月31日、契約者兼被保険者からの復活の申込みに基づいて本件復活条項に基づいて復活したものと扱われていたところ、③契約者兼被保険者は、本件免責条項により復活後に再開された自殺免責期間内の平成21年7月22日、自殺により死亡したというもので、保険金請求の事案。
 ①本件失効条項は消費者契約法10条により無効であり、②仮にそうでないとしても、控訴人が本件免責条項による免責を主張することは権利の濫用ないし信義則違反として許されないと主張して、死亡保険金等の請求をした。
 原審は、本件失効条項は消費者契約法10条により無効であると判断し、被控訴人の請求を認容していた。

【判断の内容】
① 多数の保険契約者を対象とするという保険契約の特質に加え、本件約款において保険契約者が保険料の不払をした場合にもその権利保護を図るために一定の配慮をした定めが置かれていることにかんがみれば、控訴人において、本件保険契約の締結当時、保険料支払債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う態勢を整え、そのような実務上の運用が確実にされていたとすれば、通常、保険契約者は保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができると考えられるから、本件失効条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものに当たらない(最高裁平成24年判決)。
② 控訴人(保険会社)は、本件保険契約の締結当時、保険料支払債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う態勢を整え、そのような実務上の運用が確実にされていたと認められ、通常、控訴人の保険契約者は、保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができると認められる。したがって、本件失効条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものには当たらないというべきである。
③ 本件免責条項が復活時にも一定の期間を自殺免責期間として再開することとしているのは、当初の自殺免責期間と同様に、一定の期間内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って、動機・目的にかかわりなく、一律に保険者を免責することによって生命保険契約が不当な目的に利用されることを防止する考えによるものと解され、個別の保険契約者の動機・目的により、その適用が左右されることは相当ではない。

◆ H24.07.05東京地裁判決

2012年7月5日 公開

平成22年(ワ)第33711号消費者契約法12条に基づく差止請求事件
消費者庁HP(PDF)消費者機構日本HP(判決写しあり)、金融商事判例1409号54頁、判例時報2173号135頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 谷口安史、日置朋弘、川勝庸史
適格消費者団体 消費者機構日本
事業者 三井ホームエステート株式会社
控訴審 H25.03.28東京高裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が,不動産賃貸業者に対し,①更新料の支払を定めた条項及び②契約終了後に明渡しが遅滞した場合の損害賠償額の予定を定めた条項が9条1号及び10条に規定する消費者契約の条項に当たると主張して,12条3項に基づき,その契約の申込み又は承諾の意思表示の停止及び契約書用紙の破棄並びにこれらを従業員に周知・徹底させる措置をとることを求めた事案。

【判断の内容】
●更新料条項について
① 賃貸借契約の更新料は,契約期間が満了し,賃貸借契約を更新する際に賃借人と賃貸人との間で授受される金員であるところ,これがいかなる性質を有するかは,賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情,更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し,具体的事実関係に即して判断されるべきであるが(最高裁昭和59年4月20日第二小法廷判決・民集38巻6号610頁参照),更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に賃借物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当(最高裁平成23年7月15日第二小法廷判決・民集65巻5号2269頁参照)。
② このような更新料の一般的性質に加え,被告が,平成24年3月1日以降,本件更新料について,契約期間の満了時に契約の継続を選択する権利を行使する対価として支払われるものであることを契約書に明記していること(7条1項)に照らせば,事業者である被告は,本件更新料を,主として,賃貸借契約を継続するための対価として賃借人が賃貸人に支払うものであることを予定して契約書の条項に記載しているものと解するのが相当。
③ 本件更新料は,主として賃貸借契約を継続するための対価として支払われるものとされているから,継続後,その期間満了前に賃貸借契約が終了したとしても,その性質上,当然に賃借人に返還されるべきものであるとはいえない。そうすると,本件更新料支払条項において,更新後の契約期間の途中で賃貸人の責に帰すべからざる事由によって契約が終了した場合でも本件更新料が返還されない旨が定められているからといって,同条項をもって,契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項であると解することはできない。
④ 本件更新料は,主として,賃貸借契約の継続の対価としての性質を有するものとされているところ,賃借人は本件更新料の支払により円満に賃貸借契約の継続を受けられる地位を取得するのであるから,本件更新料の支払におよそ経済的合理性がないなどということはできない。また,一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料の支払を約する条項が公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料の支払を約する条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料の支払を約する条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
 そうすると,本件更新料支払条項についても,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載されていると認められ,かつ,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当。(以上につき,前掲最高裁平成23年7月15日判決参照)
 本件更新料支払条項は,契約の継続をしようとする場合に更新料を支払うべきこと及びその金額の算定方法が契約書に一義的かつ明確に記載されている上に,その内容は,被告が取り扱う賃借物件につき,当該賃貸借契約が更新される期間を2年間としつつ,一律に更新料の額を賃料の1か月分とするものであり,本件更新料の性質が主として契約を継続するための対価であることを踏まえても,その額が高額に過ぎるものと認めることはできない。そして,賃借人としても本件更新料を上記のとおり理解することに特段の支障があるものとは認められないから,上記特段の事情が存するとはいえない。
 したがって,本件更新料支払条項は消費者契約法10条後段の要件を充足しない。
●倍額賠償予定条項について
① 9条1号は,事業者が消費者契約の解除に伴い高額な損害賠償の予定又は違約金の定めをして消費者に不当な金銭的負担を強いる場合があることに鑑み,消費者が不当な出捐を強いられることのないように,消費者契約の解除の際の損害賠償額の予定又は違約金の定めについて,一定の限度を超える部分を無効とする規定である。
② 本件倍額賠償予定条項は,約定解除権又は法定解除権が行使されて契約が終了する場合のみならず,契約が更新されずに期間満了により終了する場合も含め,賃貸借契約が終了する場合一般に適用されるものであり,その条項上の文言としても,契約の解除ではなく契約が終了した日以降の明渡義務の不履行を対象としていることからすれば,本件倍額賠償予定条項は,契約が終了したにもかかわらず賃借人が賃借物件の明渡義務の履行を遅滞している場合の損害に関する条項であって,契約の解除に伴う損害に関する条項ではないと解すべき。
③ 建物賃貸借契約書に記載された契約終了後の目的物明渡義務の遅滞に係る損害賠償額の予定条項については,その金額が,上記のような賃貸人に生ずる損害の填補あるいは明渡義務の履行の促進という観点に照らし不相当に高額であるといった事情が認められない限り,消費者契約法10条後段にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。本件は当たらない。

◆ H24.04.23東京地裁判決

2012年4月23日 公開

平成23年(レ)第774号不当利得返還請求控訴事件
LLI/DB、ウエストロー・ジャパン
裁判官 戸田久、大野昭子、中野雄壱

【事案の概要】
結婚式のドレス等のレンタル契約を締結し、同日レンタル料を支払ったものの、翌日に解約し、レンタル料の返還を求めた事案。解約料条項として、申込日より5日以内は0%,申込日より6日目以降から挙式日よりさかのぼり125日前までは内金全額,挙式日よりさかのぼり91日前までは衣装総額の80%,それ以降は100%,仮合わせ後,又は挙式日まで61日以内での申込みの場合は衣装総額100%との記載があり、さらに、特別セットプラン,キャンペーンの場合は申込み後(ご署名後)総額100%との約定があった。本件はキャンペーンのものだった。

【判断の内容】
 ドレス等のレンタル契約の成立後,契約を解除された事業者が被る平均的な損害(9条1号)は,当該契約が解除されることによって当該事業者に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうところ,契約成立の翌日にはこれを解約する意思表示がされた本件の場合,契約締結から解除までの実質1日の期間中に,解約による平均的な損害は発生しないとして,違約金条項が9条1号により無効であるとし、レンタル料の返還請求を認めた。

◆ H24.03.28京都地裁判決

2012年4月7日 公開

平成22年(ワ)第2498号、平成23年(ワ)第918号 解約違約金条項使用差止請求事件(甲事件)、不当利得返還請求事件(乙事件)
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、金融商事判例1402号31頁、判例時報2150号60頁、LLI/DB、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 吉川愼一、吉岡真一、高嶋諒
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
控訴審 H24.12.07大阪高裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が携帯電話会社に対し、解約金に関する条項が9条1号又は10条に該当して無効であると主張して、12条3項に基づき当該条項の内容を含む契約締結の意思表示の差止めを求め(甲事件)、同条項に基づく違約金を被告に対して支払った者が不当利得返還請求を行った(乙事件)事案。

【判断の内容】
① 契約の目的である物又は役務等の対価それ自体に関する合意については,当該合意に関して錯誤,詐欺又は強迫が介在していた場合であるとか,事業者の側に独占又は寡占の状態が生じているために消費者の側に選択の余地が存在しない場合であるとかといった例外的な事態を除き,原則として市場における需要と供給を踏まえた当事者間の自由な合意に基づくものであり、契約の目的である物又は役務の対価についての合意は,10条により無効となることはない。
② ある条項が契約の目的である物又は役務の対価について定めたものに該当するか否かについては,その条項の文言を踏まえつつ,その内容を実質的に判断すべきである。本件解約金条項は、契約の目的である物又は役務の対価について定めたものではない。
③ 消費者契約における「平均的な損害」を超える損害賠償の予定又は違約金を定める条項を無効とした法9条1号の趣旨は,特定の事業者が消費者との間で締結する消費者契約の数及びその解除の件数が多数にわたることを前提として,事業者が消費者に対して請求することが可能な損害賠償の額の総和を,これらの多数の消費者契約において実際に生ずる損害額の総和と一致させ,これ以上の請求を許さないことにあると解すべきである。
 このような法9条1号の趣旨からすれば,事業者は,個別の事案において,ある消費者の解除により事業者に実際に生じた損害が,契約の類型ごとに算出した「平均的な損害」を上回る場合であっても,「平均的な損害」を超える額を当該消費者に対して請求することは許されないのであり,その反面,ある消費者の解除により事業者に実際に生じた損害が,「平均的な損害」を下回る場合であっても,当該消費者は,事業者に対し「平均的な損害」の額の支払を甘受しなければならないということになる。
 したがって,法は,事業者に対し,上記のような「平均的な損害」についての規制のあり方を考慮した上で,自らが多数の消費者との間で締結する消費者契約における損害賠償の予定又は違約金についての条項を定めることを要求しているということができる。
④ 更新後においても基本使用料金の割引額(標準基本使用料金と割引後基本使用料金との差額)の平均額には何ら差がないと考えられるから,本件契約の更新後の中途解約による「平均的な損害」も,
被告と本件契約を締結した契約者につき,各料金プランごとの平成21年4月から平成22年3月までの月ごとの稼働契約者数(前月末契約者数と当月末契約者数を単純平均したもの)を単純平均し,それぞれに各料金プランごとの割引額(標準基本使用料金と割引後基本使用料金との差額)(税込)を乗じて加重平均した金額の,2160円に、
被告と本件契約を締結した契約者のうち,平成21年8月1日から平成22年2月28日までの間に本件契約(更新前のものに限る。)を解約した者について,本件契約に基づく役務の提供が開始された月からの経過月数ごとの解約者数に,それぞれの経過月数を乗じて加重平均した月数の,14か月を、
乗じた3万0240円であると認められ,原告らの主張するように更新後の中途解約に際して解約金を徴収することがその金額に関わらず法9条1号に該当するとはいえないし,本件更新後解約金条項に基づく支払義務の金額である9975円は上記の3万0240円を下回るものであるから,本件更新後解約金条項が法9条1号に該当するということはできない。
⑤ 法10条前段における,民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は,明文の規定のほか,一般的な法理等をも含む。本件は、前段要件は該当する。
⑥ 消費者は本件当初解約金条項に基づき解約権の制限を受けるものの,そのことに見合った対価を受けており,制限の内容についても何ら不合理なものではなく,しかも,被告と消費者との間には,本件当初解約金条項に関して存在する情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在するということはできないといえるから,本件当初解約金条項は,法10条後段には該当しない。
⑦ 消費者は,本件契約が更新された後に解約金の支払義務を負うとされることによって解約権の制限を受けるものの,そのことに見合った対価を受けており,制限の内容も不合理なものではないから,本件契約が更新された後における解約金の支払義務を定める条項が,金額を問わず一般的に法10条後段に該当するとはいえない。
 さらに,本件更新後解約金条項における9975円という金額は合理的なものであり,被告と消費者との間には,本件更新後解約金条項に関して存在する情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在するということはできないといえるから,本件更新後解約金条項もまた,法10条後段には該当しないと解するのが相当である。

◆ H24.03.16最高裁判決

2012年3月16日 公開

平成22年(受)第332号 生命保険契約存在確認請求事件
最高裁HP、最高裁判所民事判例集第66巻5号2216頁、裁判所時報1552号153頁、判例タイムズ1370号115頁、金融・商事判例1395号14頁、金融・商事判例1389号14頁、判例時報2149号135頁、判例時報2169号153頁、金融法務事情1948号75頁、金融法務事情1943号76頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 須藤正彦 古田佑紀 竹内行夫 千葉勝美
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性

【判断の内容】
生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。
(反対意見がある。)

◆ H24.03.05東京地裁判決

2012年3月5日 公開

平成22年(ワ)第47338号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン 判例秘書
裁判官 棈松晴子

【事案の概要】
 被告のマンション建築計画区内にある土地を賃借して,建物を所有し,きしめん屋を経営していた原告が,建物及び賃借権の売却合意をし,きしめん屋を廃業したが,その後,被告が売買契約の締結を拒否したため,廃業に伴う損害が生じたとして,契約締結上の過失を主張して,損害賠償を求めた事案。
 合意書の、マンション計画地の権利者との間の権利調整が不調に終わったときは,原告は損害賠償請求をしない旨の条項の効力が争いとなった。

【判断の内容】
 以下の理由から、損害賠償請求をしない旨の条項は無効であるとして、損害賠償請求を認めた。
① 原告が,消費者契約法2条1項にいう消費者に該当し,被告が,同条2項にいう事業者に該当すること,本件合意書の合意が,同条3項にいう消費者契約に該当することは明らか。
② 本件合意書の同条項は,事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項であるから,消費者契約法8条1項3号に該当する条項に当たる。したがって,同条項の被告の責任の全部を免除する合意は無効であるから,被告が,同条項を理由に損害賠償義務を免れるということはできない。

◆ H24.02.29京都地裁判決

2012年2月29日 公開

平成21年(ワ)第4696号更新料等返還請求事件
消費者法ニュース92号257頁、LLI/DB、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 松本清隆

【事案の概要】
貸室の賃貸借契約に際し締結した基本清掃料特約(退室時,賃借室の原状復帰における室内清掃料金2万6250円を支払うものとし,基本清掃料を敷金より差し引くものとする)及び更新料特約(期間終了2か月前までに原告被告協議の上更新しうるものとし,賃借人は,賃貸人に,次年度更新料15万円を支払うものとする)が消費者契約法10条により無効か否かが争われた事案。

【判断の内容】
 通常損耗に含まれる汚損の原状回復費用が賃料に含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるべき基本清掃料特約は,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するとはいえず,また賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が高額に過ぎるなど特段の事情がない限り,同法10条には該当しないが,本件賃貸借契約の更新料特約は,契約期間が1年であり,賃借人の負担などからすると,更新料の上限は年額賃料の2割が相当であり,これを超える部分の返還を求める限度で理由があるとした。

◆ H24.02.27大阪高裁決定

2012年2月27日 公開

平成23年(ラ)第1257号間接強制決定に対する執行抗告事件
判例時報2153号38頁
裁判官 前坂光雄 白井俊美 前原栄智
京都消費者契約ネットワーク

【事案の概要】
不動産会社に対する定額補修分担金条項の使用差し止めを命ずる判決に基づき、適格消費者団体が、不作為債務の履行と違反行為1回に付50万円の支払を命じる間接強制命令の申立をし、これを認めた決定に対して、不動産会社が不作為義務に違反するおそれがあるとの認定は誤りであると争った。

【判断の内容】
① 不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制を決定するには、債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り、債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はなく、かつ、この要件は、高度のがい然性や急迫性に裏付けられたものである必要はないと解するのが相当。
② 本件間接強制申立の時点で、不動産業者は、訴訟において消費者契約法に反しないと争って報道機関にも表明しており、判決確定後には見解表明をしていないこと、おそれがあるとした判決確定後、格別の状況の変化がない事からは、不作為債務に違反するおそれがあると認めるのが相当。
③ 抗告人が、すでに使用しておらず、今後使用することはないと表明したが、不作為債務の内容及び相手方(適格消費者団体)と抗告人(不動産会社)の関係からすれば、本件の不作為債務に違反し、又は違反している兆候があることを立証することは極めて困難であると考えられることを考慮すると、本件において、抗告人が不作為義務に違反するおそれがあることを否定するのは相当でない。

◆ H23.12.13京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成20年(ワ)第3842号解約金条項使用差止請求事件、平成21年(ワ)第3478号解約金請求事件、平成23年(ワ)第1094号解約金返還請求事件、平成23年(ワ)第2581号不当利得返還請求事件
消費者庁HP判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)、判例時報2140号42頁、金融商事判例1387号48頁、現代消費者法17号79頁
裁判官 瀧華聡之、奥野寿則、堀田喜公衣
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワークHP
事業者 株式会社セレマ、株式会社らくらくクラブ
控訴審 H25.01.25大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が冠婚葬祭の相互扶助や儀式設備の提供等を業とする株式会社セレマ及び旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する募集業務等を業とする株式会社らくらくクラブに対し、①被告セレマ及び被告らくらくが消費者との間で締結している互助契約又は積立契約において、それぞれ契約解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解約金を差し引くとの条項を設けていることに関し、同条項は消費者契約法第9条第1号又は同法第10条に該当するものであり、消費者に対し解約金を差し引くことを内容とする意思表示を行わないこと、②①が記載された契約書雛形が印刷された契約書を破棄すること、③従業員らに対し、①の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書の破棄を指示することを求めた事案。

【判断の内容】
いずれも、以下の理由から請求を認容した。
(被告セレマに対し)
① 9条1号にいう「平均的な損害」とは、契約の解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生じる損害の額の平均値をいう。
② 一人の消費者と被告セレマとの間で締結される消費者契約である本件互助契約にあっては、「平均的な損害」の解釈にあたっても、一人の消費者が本件互助契約を解約することによって被告セレマに生じる損害を検討する必要がある。
③ 本件互助契約に関して消費者から冠婚葬祭の施行の請求があるまでにされた解約によって、月掛金を1回振替える毎に被告セレマが負担した58 円の振替費用をもって被告セレマに損害が生じているというべきであり、その限度を超える解約手数料を定める解約金条項は9条1号により無効である。
(被告らくらくに対し)
④ 不特定多数の消費者との関係での被告らくらくの業務維持及び販売促進のための費用については、一人の消費者による契約の解約にかかわらず、常に生じるものといえるため、「平均的な損害」には含まれない。
⑤ その他の費用については、当該一人の消費者が契約し、又は当該契約を解約することがなければ被告らくらくが支出することがなかった費用といえるため、「平均的な損害」に含まれうるが、本件においては上記費用の正確な数値が算定できない。
⑥ 本件積立契約においては、事務手数料として月額150円が被告らくらくに支払われており、外交員の集金手当、振替費用等は上記費用をもってまかなわれているとみるべきであり、解約手数料を徴収するとする解約金条項は9条1号により無効である。

◆ H24.01.17京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成22年(ワ)第4222号更新料条項使用差止等請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 松本清隆、井川真志、千葉康一
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ジェイ・エス・ビー
控訴審 H24.06.29大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が、不動産業者である株式会社ジェイ・エス・ビーに対し、更新料条項が10条により無効であるとして、主位的に、更新料条項を含む意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求め、予備的に、更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍以上の更新料を支払う旨の条項につき、主位的請求と同様に、その意思表示の停止及び同行為に供する契約書用紙の破棄を求めた事案。

【判断の内容】
請求棄却。
① 更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものであり、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。
② 更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
③ 更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
④ 被告が現に使用していた更新料条項も、具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情にかかわらず高額に過ぎると直ちに断定できず、特段の事情があると認めることができないことから、法10条により無効であるということはできない。
⑤ 更新料条項が無効となる場合があることを理由とする全部差止請求の可否については、「具体的に一部の消費者については有効となりうるとしても無効となる場合があるときにはおよそ更新料条項の使用が差し止められるべきであるという原告の主張は採用することができない」とした。
⑥ 主位的請求について一部認容が可能との主張については、「裁判所において更新料の額が高額に過ぎるか否かの評価根拠事情を特定する必要があるが」「根拠事情は多様であるから、認容すべき範囲を確定することができないおそれがある」とともに、「原告の主位的請求につき一部認容を認めるとなると、防御対象となる前記の根拠事情の多様さゆえに、被告に対して不意打ちとなるおそれもある」ことから、認めることはできないとした。
⑦ 予備的請求について、「更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍の更新料を支払う旨の条項が個々の賃貸借に伴う個別具体的な事情を考慮することなく直ちに前記特段の事情に該当して法10条により無効となるとは認められないし、他の特段の事情の存在によりこれが無効となる場合があり得るとしても、このことを理由として、その条項の使用の全部の差止めを認めることはできない。また、裁判所において更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至る根拠となる事情を特定してその一部を認容することができないことも、主位的請求の場合と同様である。」として原告の請求をいずれも棄却した。

◆ H24.01.31旭川地裁判決

2012年1月31日 公開

平成23年(レ)第45号、平成23年(レ)第55号放送受信料請求控訴,附帯控訴事件
最高裁HP、判例時報2150号92頁
裁判官 田口治美、田中寛明、徳光絢子

【事案の概要】
NHKの受信料請求。「放送受信契約者が受信機を廃止することにより,放送受信契約を要しないこととなったときは,放送受信章を添えて,直ちに,その旨を放送局に届け出なければならない。」との規定が,受信契約の解約の方法を著しく制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるとして10条に反し無効であり、契約解約がなされているとの主張がなされた。

【判断の内容】
解約の意思表示が認められないと認定しつつ、なお書きで、同規定は10条の「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たるとはいえないとした。

◆ H23.11.24京都地裁決定

2011年12月3日 公開

平成23年(ヲ)第33号間接強制申立事件
決定写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 大島雅弘
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
第1審 H21.09.30京都地裁判決
控訴審 H22.03.26大阪高裁判決

【事案の概要、判断の内容】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止を認めた第1審判決に基づき、当該条項を含む意思表示をしたときは1回につき50万円の割合による金員を支払うとの内容の間接強制が認められた。

◆ H22.09.28東京地裁判決

2011年12月3日 公開

平成21年(ワ)第23889号入居金返還請求事件
判例時報2104号57頁
裁判官 綿引穣、佐藤重憲、金洪周

【事案の概要】
 介護付有料老人ホームの入居契約をしたところ、入居者(母)が1年10カ月後に死亡した。入居時に、入会金として105万円、施設協力金として105万円、入居一時金として1155万円を支払っており、入居一時金は20%を契約締結時に、残り80%は5年間で償却するとされていた。入居金、入居一時金が10条違反である等として、返還を受けた金額との差額の返還請求をした事案。

【判断の内容】
請求棄却。
① 本件入居金の額、使途及び償却基準等は、東京都の指針に従っており、都知事から事業者指定を受けている。入居金を徴収することや、契約締結時に20%を償却することは都の指針もこれを前提とする規定を置いている。
② 入居金の使途、額の算定の仕方、償却期間の設定状況、短期間で死亡した場合の定めがあり、その説明を受け署名していることなどからは、入居一時金の償却は民法、商法その他の規定が適用される場合に比して消費者の利益を害するものではなく、10条にはあたらない。

◆ H23.03.18大阪簡裁判決

2011年12月3日 公開

平成22年(ハ)第27941号不当利得返還請求事件
消費者法ニュース88号276頁
裁判官 篠田隆夫

【事案の概要】
 建物賃貸借契約で、礼金が10条違反であるとして不当利得返還請求をした事案。礼金12万円、期間1年の契約で1カ月と8日のみ使用し退去した。

【判断の内容】
 以下の理由から、礼金12万円のうち、3万円を控除した9万円の返還を命じた。
① 礼金は、実質的には賃借人に建物を使用収益させる対価(広義の賃料)であるが、その他にもその程度は気迫ではあるものの賃借権設定の対価や契約締結の謝礼という性質をも有している。一定の合理性を有する金銭給付であり、礼金特約を締結すること自体が「民法1条2項に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるとはいえない。
② 礼金は実質的に前払い賃料であるから、予定した期間が経過する前に退去した場合は、建物未使用期間に対応する前払い賃料を返還するべきことは当然。礼金は返還しないという合意は、契約基幹系構え退去の場合に前払い分賃料相当額が返還されないとする部分について消費者の利益を一方的に害するものとして10条により一部無効というべきである。

◆ H20.05.19大阪高裁判決

2011年11月12日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
第1審 H19.10.30大阪地裁判決

【事案の概要】
 本件団地の建替計画の共同事業予定者である不動産会社の被控訴人(原告)が、団地管理組合の一括建替え決議を踏まえて、建替え賛成者から区分所有権を取得した上で、区分所有者として任意に売り渡さないものに対して、区分所有法所定の売渡請求権を行使したとして、控訴人(被告)ら(居住者)に対して、同請求権行使によって売買契約が成立したと主張して、所有権に基づいて、所有権移転登記手続等を請求した。被告らは、手続違反等による一括建替え決議の無効、消費者契約法8条ないしは10条による無効等を主張したところ、原審は被控訴人の請求を全部認容したため、控訴人らが控訴した。

【判断の内容】
 (本件一括建替え決議の消費者契約法違反性について)控訴人らは、従前資産売買契約中の条項の消費者契約法違反をもって本件一括建替え決議の無効を主張するものであるが、従前資産売買契約は、本件一括建替え決議に基づく建替え計画実施の一部をなすものではあっても、本件一括建替え決議自体の内容をなすものではなく、現に控訴人らの主張によっても、従前資産売買契約者が締結されたのは平成17年10月だというのである。したがって、本件一括建替え決議において法定外決議事項として決議された「事業方式に関する事項」とは異なり、従前資産売買契約の法令違反が本件一括建替え決議の違反や無効を帰結する理由はないというべきである。控訴人らは、等価交換方式の場合には従前資産売買契約の内容が本件一括建替え決議の隠れた内容を構成するなどと主張するが、その時点で等価交換方式に基づく売買契約の内容を定めておくべき義務があるとは到底考えられず、控訴人らの主張は採用できない。
 更に消費者契約法に関する主張のうち同法8条1項1号については、不可分条項に基づく解除に基づく損害は事業者の債務不履行により生じた損害とはいえないから主張自体失当である。
 違約金等条項が消費者契約法10条の「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当するとの主張も、従前資産売買契約が団地の一括建替え決議の実行の一環として締結されており、一部の者の不履行を容認することが困難であることを考慮すれば、違約金等条項に定める内容が消費者契約法10条の定める民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認めがたい。
(なお、被控訴人の各請求を全部認容した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないとして、控訴を棄却した)

◆ H19.11.22大阪地裁堺支部決定

2011年11月11日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)

【事案の概要】
貸金業者である申立人(被告)との間で金銭消費貸借を繰り返していた相手方(原告)が申立人に対して、過払金が発生しているとして、不当利得変換請求権に基づいて過払金等の返還を求めた事案につき、申立人が金銭消費貸借契約上の専属管轄条項に基づいて、移送の申し立てをした。

【判断の内容】
「訴訟行為については、姫路簡易裁判所を以って専属的合意管轄裁判所とします」との本件条項があることが認められるから、本件に関する訴訟行為については、姫路簡易裁判所が専属的合意管轄であるというべきである。相手方は、本件条項は消費者契約法10条により無効である旨主張するが、本件条項を貸金返還請求訴訟や保証債務履行請求訴訟だけでなく、本件のような過払金返還請求訴訟に適用しても、社会的弱者である消費者の権利を制約し、不当な不利益を与えたりするものとはいえないから、相手方の消費者契約法10条違反の主張は採用することができない。(申立人と相手方との間には姫路簡易裁判所を専属的管轄とする合意が成立しているというべきであるが、民事訴訟法17条の趣旨に照らし、本件移送申立てを却下した)

◆ H19.11.30大阪地裁堺支部判決

2011年11月11日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)

【事案の概要】
原告は、被告に対して、放送受信契約に基づいて、衛星放送の受信設備を設置したことを要件とし、視聴の意思がない者にも一律に衛星カラー契約の締結を義務づけることは、契約自由の原則に反する、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する(消費者契約法10条)と主張して、カラー契約から衛星カラー契約に契約変更する債務が存在しないことの確認を求めた。

【判断の内容】
放送法32条及びこれに基づく放送受信規約は、被告の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対し、放送を視聴する意思の有無にかかわらず、その受信設備の種類に応じた契約を締結し、その契約の種別ごとに定められた受信料を負担することを義務づけており、これは、契約による法律関係の形成についての個人の自由を制限するものであるとともに、法律の任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重する消費者契約の条項(消費者契約法10条)を定めたものと解する余地がある。
しかし、衛星放送をカラー受信することのできる受信設備を設置した者に対し、衛星放送を視聴する意思の有無にかかわらず、カラー契約から衛星カラー契約への契約変更を義務づけることは、契約自由の原則の例外として許容されるというべきであり、また、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(消費者契約法10条)ではない。よって放送法 32 条及び放送受信規約は有効であり、原告に契約変更の義務があるとして、原告の請求を棄却した。

◆ H19.10.30大阪地裁判決

2011年11月11日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
控訴審 H20.05.19大阪高裁判決

【事案の概要】
本件団地の建替計画の共同事業予定者である不動産会社(原告)が、団地管理組合の一括建替え決議を踏まえて、建替え賛成者から区分所有権を取得した上で、区分所有者として任意に売り渡さない居住者(被告)に対して、区分所有法所定の売渡請求権を行使したとし同請求権行使によって売買契約が成立したと主張して、所有権に基づき、所有権移転登記手続等を請求した。被告らは、手続違反等による一括建替え決議の無効、消費者契約法8条ないしは10条による無効等を主張した。

【判断の内容】
(本件一括建替え決議の消費者契約法違反性について)被告らは、従前資産売買契約中の条項の消費者契約法違反をもって本件一括建替え決議の無効を主張するものであるが、従前資産売買契約は、本件一括建替え決議に基づく建替え計画実施の一部をなすものではあっても、本件一括建替え決議の内容をなすものではなく、従前資産売買契約の法令違反が直ちに本件一括建替え決議の違法や無効を帰結するものではないというべきであるし、従前資産売買契約が仮に法令違反で無効となったとしても、それが本件一括建替え決議の無効を帰結するものではないというべきである。また、消費者契約法8条ないし10条は、同条違反の条項を違反する範囲で無効とするものであって、当該消費者契約全体を無効とするものでないことは条文の文言に照らして明らかである。以上のとおりであるから、被告らの上記主張は採用することができない。
(なお、原告の被告らに対する本件各請求はいずれも理由があるとして、原告の被告らに対する所有権移転登記、明渡し請求を認めた)

◆ H16.07.08東京地裁判決

2011年11月10日 公開

平成16年(ワ)第997号
判例マスター
裁判官 綿引万里子

【事案の概要】
ペットの犬を業者から購入したところ、1年10ヶ月経過後に突発性てんかんと診断されたことを理由に、債務不履行、瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めた事案。業者の免責約款が8条1項1号、8条1項2号、10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
1 本件は債務不履行にはならないが、突発性てんかんが遺伝的要因によって発症したものであるとすれば、隠れた瑕疵を有していたものとして業者は瑕疵担保責任を負担する。
2 8条1項5号は有償契約の瑕疵担保責任による賠償責任をすべて免除する条項を無効とするものであり、本件では、病気治療保障(購入日より2週間以内に発病し48時間以内に指定医に持ち込まれたときに治療費を負担)、先天的欠陥保障(購入日より3ヶ月以内又は生後5ヶ月以内に申し出があった場合代犬を提供する)があり、それ以外の場合を免責するものであり、すべてを免除するものではないから、同条項により無効となると解する余地はない。
3 保障部分を本件条項の場合に限定することは合理的理由があるから、民法1条2項の基本原則に違反するものとして10条に該当し、もしくは民法90条により無効であり、又は免責主張が信義則に反するとはいえない。

◆ H23.04.27名古屋地裁判決

2011年11月10日 公開

平成21年(ワ)第4345号、第6059号不当利得返還等請求本訴、立替金請求反訴事件
最高裁HP、消費者法ニュース88号208頁
裁判官 長谷川恭弘

【事案の概要】
借家人が家賃支払を遅滞した場合に,保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新され,その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約における特約が消費者契約法10条により無効とされるとともに,保証会社が根拠不明の金銭を含め借家人に過分な支払をさせる行為や退去勧告を組織的に行っていたことが,社会通念上許容される限度を超えたもので,不法行為に該当するとされた事例

◆ H22.12.08神戸地裁判決

2011年10月7日 公開

平成21年(ワ)第802号不当条項使用差止等請求事件
消費者庁HP(PDF)ひょうご消費者ネットHP判決写し(PDF、ひょうご消費者ネットHP)
裁判官 角隆博、大森直哉、谷池政洋
適格消費者団体 ひょうご消費者ネット
事業者 株式会社ジャルツアーズ(現商号株式会社ジャルパック)
控訴審 H23.06.07大阪高裁判決
上告審 H24.10.23最高裁決定(上告不受理)

【事案の概要】
適格消費者団体が、旅行業を営む株式会社ジャルツアーズに対し、株式会社日本航空インターナショナル(JAL)の発行する企業ポイントにより旅行代金等が決済された後の契約の取消しないし変更があった場合に、同企業ポイントの返還をしない旨の条項が、被告と消費者との間で締結する企画旅行契約における契約条項となっており、消費者契約法第10条及び第9条第1号に違反して無効であるとして、本件条項を含む契約の締結の差止め等を求めた事案。

【判断の内容】
本件条項は被告と消費者との間の旅行契約の内容となっているとは認めることができず、その余について判断するまでもなく、原告の請求に理由がない。

◆ H23.06.07大阪高裁判決

2011年10月7日 公開

平成23年(ネ)第133号不当条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、ひょうご消費者ネットHP)
裁判官 安原清蔵、坂倉充信、和田健
適格消費者団体 ひょうご消費者ネット
事業者 株式会社ジャルツアーズ(現商号株式会社ジャルパック)
第1審 H22.12.08神戸地裁判決
上告審 H24.10.23最高裁決定(上告不受理)

【事案の概要】
適格消費者団体が、旅行業を営む株式会社ジャルツアーズに対し、株式会社日本航空インターナショナル(JAL)の発行する企業ポイントにより旅行代金等が決済された後の契約の取消しないし変更があった場合に、同企業ポイントの返還をしない旨の条項が、被告と消費者との間で締結する企画旅行契約における契約条項となっており、消費者契約法第10条及び第9条第1号に違反して無効であるとして、本件条項を含む契約の締結の差止め等を求めた事案の控訴審。

【判断の内容】
① JALが発行する企業ポイントである「本件JMB特典2は、JALの利用実績等に応じてJALが発行するマイルを基礎とするものであり、その使用条件については、JMB会員である旅行者とJALとの間の契約関係によって定められているのであるから、本件条項がマイルや本件JMB特典の発行主体ではないジャルツアーズとの間の旅行契約の条項に含まれていると解することはできない」として否定した。
② 仮に、本件条項がジャルツアーズと旅行者との間の旅行契約の条項に含まれるとみることが可能であるとしても、本件JMB特典は、JALもしくはその提携企業を繰り返し利用する旅行者に特典を与えることによって顧客を誘引しようという目的のもとでJALが発行するものにすぎず、現金化が確実な自己宛小切手に類似する金銭債権と同様のものとみることができない以上、本件JMB特典を旅行契約の代金支払に利用した後に旅行契約が失効したとしても、旅行者と被控訴人又はJALとの間で不当利得関係が生じる余地はないとして否定した。

◆ H23.03.24最高裁判決

2011年5月26日 公開

平成21年(受)第1679号敷金返還等請求事件
最高裁HP、民集65巻2号903頁、判例時報2128号33頁、2145号154頁、NBL952号10頁
裁判官 金築誠志、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇
原審 H21.06.19大阪高裁判決

【事案の概要】
 居住用マンション一室の賃貸借契約の保証金(敷金)の返還請求事案。敷引条項が10条に違反するかが争われた。

【判断の内容】
① 通常損耗部分を借り主の負担とするものであり、10条前段要件を満たす。
② 10条後段要件について
 敷引特約があり、金額が契約書に明示されている場合には,賃借人は,賃料の額に加え,敷引金額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって,賃借人の負担については明確に合意されている。
 通常損耗等の補修費用は,賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても,これに充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には,その反面において,上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって,敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。
 補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは,通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から,あながち不合理なものとはいえず,敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできない。
 もっとも,消費者契約である賃貸借契約においては,賃借人は,通常,自らが賃借する物件に生ずる通常損耗等の補修費用の額については十分な情報を有していない上,賃貸人との交渉によって敷引特約を排除することも困難であることからすると,敷引金の額が敷引特約の趣旨からみて高額に過ぎる場合には,賃貸人と賃借人との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差を背景に,賃借人が一方的に不利益な負担を余儀なくされたものとみるべき場合が多いといえる。
 そうすると,消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
③ 本件では、契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金から控除するというものであって,本件敷引金の額が,契約の経過年数や本件建物の場所,専有面積等に照らし,本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。
 賃料は月額9万6000円であって,本件敷引金の額は,上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて,借主は本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。
 そうすると,本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず,本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。

◆ H23.01.27京都地裁判決

2011年2月6日 公開

平成21年(ワ)第4688号更新料返還請求事件
未登載
裁判官 和久田斉

【事案の概要】
建物賃貸借契約の更新料返還請求。

【判断の内容】
次の理由から返還請求を認めた。
① 更新料の法的性質について、賃料の補充、更新拒絶権放棄の対価、空室損料の違約金のいずれも否定した。
② 10条前段、後段要件を満たす。

◆ H22.12.22京都地裁判決

2011年2月6日 公開

平成21年(ワ)第4691号更新料返還請求事件
未登載
裁判官 橋本眞一

【事案の概要】
建物賃貸借契約の更新料の返還請求。消費者契約法施行前の契約が施行後に更新された事案で、消費者契約法の適用があるかも争われた。

【判断の内容】
次の理由から、返還請求を認めた。
① 賃貸借契約において,目的物を使用収益できる期間は契約の重要な要素であって,本件契約の契約期間も明記されているから,その期間の満了により契約関係は一旦終了し,本件更新料特約に基づいて,本件賃貸借契約を2年間更新する(契約期間を2年間として再契約する)旨の黙示の意思表示がされたものと認めるのが相当。
② 更新料の法的性質について、更新拒絶権放棄の対価、賃借権強化の対価、賃料の補充のいずれも否定。
③ 10条前段、後段要件を満たす。
④ 契約の核心的な合意内容については当事者間の自由に委ねるべきであるから消費者契約法の規制にはなじまないとの被告の主張については、本件更新料の法的性質を合理的に説明することができない以上,自由意思による合意の前提を欠いており採用できない。

◆ H22.09.16京都地裁判決

2011年2月6日 公開

平成21年(ワ)第4702号更新料返還請求事件
未登載
裁判官 橋本眞一

【事案の概要】
建物賃貸借契約の更新料の返還請求。婚姻に伴って不要となった家を貸したことから「事業者」に当たるかも争われた。

【判断の内容】
次のとおり判断し、返還請求を認めた。
① 消費者契約法上の「事業」とは,「社会生活上の地位に基づき一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,その事業のために契約の当事者となる場合における個人は消費者契約法上の「事業者」となる。
② 本件建物の賃貸は,必ずしも原告との関の本件賃貸借契約に基づく1回限りのものと予定されていたものではなく,被告において,本件建物に居住する必要性が生じない間,本件建物を賃貸する意思を有していたと推認され,現
に,原告の本件建物退去後,本件建物の賃借人を募集していることに照らしても,被告は「事業者」に当たる。
③ 本件の更新料の法的性質については、賃料の一部、更新拒絶権放棄の対価、賃借権強化の対価の法的性質は認められない。
④ 10条前段、後段要件を満たす。

◆ H22.06.29東京高裁判決

2011年2月4日 公開

平成21年(ネ)第4582号,平成22年(ネ)第904号各受信料請求控訴,付帯控訴事件
LLI
裁判官 稲田龍樹,原啓一郎,近藤昌昭

【事案の概要】
NHKの受信料請求訴訟。受信機を廃止しない限り放送受信契約の解約を禁止している条項が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
放送法32条が,他の法律に別段の定めがある場合にあたり,11条2項により,10条が適用される余地はないとした。

◆ H21.12.16東京地裁判決

2011年2月4日 公開

平成21年(レ)第418号更新料請求控訴事件
LLI
裁判官 孝橋宏,安田大二郎,中澤亮

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,法定更新の場合にも更新料(1ヶ月分)条項が適用されるとして,更新料請求がされた事案。同条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から更新料請求を棄却した。
① 本件更新料条項は,合意により本件賃貸借契約を更新する場合を念頭に置いて締結されたものと解するのが自然であり,約定の記載から,双方が合意更新されるか法定更新されるかにかかわらず更新の際には更新料が支払われるとの意思を有していたものとは認め難い。
② 法定更新の制度は,賃借人が期間満了後に土地又は建物の使用を継続している場合に,賃貸人に更新拒絶の正当事由が備わらない限り賃借人による使用継続という事実状態を保護して賃貸借契約を存続させようとするものであり,賃借人に何らの金銭的負担なしに更新の効果を享受させようとするのが法の趣旨。
③ 賃貸人からの請求があれば,当然に賃借人に更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在することを認めるに足りる証拠はない。
④ 賃借人が司法修習生でありあえて合意更新を拒んだとしても,本件事情の下で信義則違反とまでは断じがたい。

◆ H21.10.21東京地裁判決

2011年2月4日 公開

平成20年(ワ)第5792号土地建物所有権移転仮登記抹消登記等請求事件
LLI
裁判官 佐藤英彦

【事案の概要】
有料老人ホームの入居契約における入居一時金の返還請求を含む事例。償却条項(償却期間60ヶ月,非返還対象分30%,返還対象分70%)が9条1号,10条に違反するかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から,9条1号,10条違反にはならないとして,返還請求を棄却した。
① 非返還対象分は,有料老人ホームの入居契約の性質上当然に必要とされるものであり,想定利用期間経過後も新たな賃料相当額を負担せずに施設(専用居室及び共用施設)を利用する権利の対価としての性質を有する。
② 施設開設に関わる費用は,施設を利用する入居者全員が負担するものであるところ,非返還対象分は,かかる施設開設に関わる費用の負担分の性質をも有し,合理性がある。
③ 入居契約締結に先立ち,施設のパンフレットを見せられており,これを見ながら契約内容(入居一時金及び償却に関する説明を含む。)の説明を受け,償却条項の内容を了知していた。

◆ H21.10.29東京高裁判決

2011年2月4日 公開

平成19年(ネ)第1353号,平成19年(ネ)第3025号各大学年金受給権確認請求控訴,同付帯控訴事件
判例時報2071号129頁,労働判例995号5頁
裁判官 青柳馨,小林敬子,大野和明

【事案の概要】
私立大学が年金規則(私的年金)を改定し年金を減額したことに対し,受給者(退職者やその遺族)である原告らが,改定前の年金額を受給する権利の確認請求をした事案。一方的な年金規則の改定で減額できることについて10条違反か等が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から10条違反ではないとされた。
① 本件年金契約は終身定期金契約に類似した契約であるが,本件年金規則には,本件年金制度が超長期にわたり継続することを考慮して,経済変動や本件年金基金の財政状況等により本件年金制度の維持・存続のために必要な合理的な変更を許容する定めが置かれているのであって,給付内容を含め契約内容の変更があり得ない契約でないことは明らか。
② 本件年金制度における大学の拠出は,教職員の福利厚生,功労報償としての性格が強いもので,積立不足が生じた場合に大学がこれを負担すべきものとはされていない。
③ 本件年金規則の改正により給付額の減額が可能であったからといって,大学が何らの制限も受けず,自由に本件年金規則の規定を改定することは許されず,本件年金制度の維持,存続のため,あるいは同制度の目的を達成するため,合理的な裁量の範囲に限って改定が許されるにすぎない。

◆ H22.04.26東京地裁判決

2011年2月4日 公開

平成21年(レ)第445号更新料支払等請求控訴事件
LLI
裁判官 澤野芳夫,大原純平,野中伸子

【事案の概要】
建物賃貸借契約における更新料請求。賃借人が外国語授業を業とする株式会社であり,連帯保証人が代表取締役となっていた。10条類推適用の有無が争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,類推適用を否定した。
消費者契約法は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ,一定の場合に消費者を保護することを目的とする法律である(同法1条)。確かに,事業者同士であっても,その事業の内容により,情報及び交渉力に格差が存在する場合がある。しかしながら,消費者契約法は,法人その他の団体や事業として又は事業のために契約の当事者となる個人は,その事業の内容にかかわらず,自らの事業を実施する上で行う取引に関しては,情報を収集し,また交渉力を備えることが十分に期待できることから,その事業の内容を特段考慮せず「消費者」と「事業者」を明確な基準により分け(同法2条),「消費者」を保護の対象とし「事業者」を保護対象から外したものと解される。そうすると,仮に契約の一方当事者である事業者が,他方当事者である事業者と比べ,相対的に当該契約締結に関し情報及び交渉力の点で劣っていたとしても,当該契約に同法は類推適用されないと解すべきである。

◆ H20.12.24東京地裁判決

2011年2月4日 公開

平成20年(ワ)第18864号建物明渡請求事件
LLI
裁判官 笠井勝彦

【事案の概要】
建物の定期借家契約が終了した後,明け渡しまでの明渡遅延使用料(賃料の倍額)の支払を求めた事案。
「賃借人が本件契約終了と同時に本件建物を明け渡さない場合,賃貸人の請求により,終了の翌日から明渡しに至るまで,賃料の倍額及び管理費に相当する額の使用料を支払わなければならない」との条項が9条1号,10条に反しないかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,9条1号,10条違反ではないとして,明渡遅延使用料の支払いを認めた。
① 9条1号は,消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定又は違約金を定める条項に関する規定であるところ,本件規定はそのような条項ではないから,同号の適用はない。
② 明け渡しのために債務名義取得,強制執行には時間と費用がかかること,賃借人が明渡義務を果たさない場合に備えておくために従前の対価等以上の支払をしなければならないという経済的不利益を予定することは合理的であり,賃借人が上記義務を履行すれば不利益は現実化しないのであるから賃借人の利益を一方的に害するものではなく合理性がある。
③ 賃借人が従前と同じ経済的負担をすれば目的物の使用収益を継続できるとするのは契約の終了と整合しない不合理な事態であり,賃借人に返還義務の履行を困難にさせる経済的事情等があるとしても,その事情等が解消するまで賃貸人の犠牲において同義務の履行を免れさせるべき理由はない。
④ 本件規定は,契約書上に明記されており,これが賃借人の明渡義務の適時の履行の誘引として定められたものであることは明らか。これによって賃借人が受ける不利益は,賃料相当額の負担増だけであり,しかもそれは賃借人が上記義務を履行すれば発生しないのであって,賃貸人が暴利を得るために本件規定が定められたものでないことも明らか。
⑤ 賃借人が本件建物を居所としていたとしても,本件契約が終了すればその使用収益ができなくなるのは当然。

◆ H22.10.29京都地裁判決

2011年2月4日 公開

平成21年(ワ)第4693号更新料返還請求事件
判例タイムズ1334号100頁
裁判官 大島眞一

【事案の概要】
マンションの一室について,過去3回にわたって支払った更新料30万円及び遅延損害金の返還を請求した事案。更新料特約が9条1号、10条に違反しないか争われた。

【判断の内容】
以下の理由から、更新料返還請求を棄却した。
① 従来,賃貸借契約においては,賃貸借契約が解約されることがないように賃借権の保護がされてきたが,本件のような居住用賃貸建物においては,賃貸人が賃貸借契約期間中に解約をすることはまず考えられず,賃借権を強化するよりも,賃借人において,転勤等の理由によって転居しなければならないことがあるので,いつでも賃貸借契約を解約できることを認め,解約した場合には,更新料が次の賃借人が見つかるまで空室となって賃料収入が入らないことのいわば補償(賃借人からみると違約金)として扱われ,期間が満了した場合には更新料は賃料として扱われることになると考えるのが,居住用賃貸建物における更新料の実態に最も適合する。
 したがって,更新料を授受した時点では,いまだ更新料の法的な性質は確定しておらず,期間が満了した場合には賃料に,賃借人が途中で解約した場合には既経過部分については賃料に,未経過分は違約金として扱われることになり,純粋に民法601条にいう「賃料」ではないので,賃貸人が賃借人に対し更新料の未経過分を返還しないことに問題はない。
② 10条前段には該当する。
③ 10条後段には該当しない。更新料は,賃貸借契約期間中の途中解約がない限り,賃貸期間全体に対する前払いの賃料に該当するものであるところ,賃料は必ず月額で定めなければならないものではなく,更新料名目で賃貸借契約の更新時に賃料の一部を一時払として支払を求めることは不合理なものではない。賃借人が賃貸借契約を期間途中で解約した場合には,既経過部分は賃料に未経過部分は違約金に相当するところ,合理性がある。
④ 9条1号には該当しない。次の入居人が決まるまでの賃料収入が途絶えることになるが、1カ月程度であれば賃借人に負担させることに合理性がある。

◆ H22.09.16神戸地裁判決

2011年1月27日 公開

平成22年(レ)第183号違約金請求控訴事件
未登載
裁判官 栂村明剛,木太伸広,藪田貴史
原審 神戸簡裁平成21年(少コ)第116号

【事案の概要】
結婚式及び結婚披露宴を開催する契約を締結し、同結婚式等で使用する予定であったウェディングドレスの売買契約(セミオーダー)もあわせて契約した。このドレス売買契約については、契約してから10日までは自由にキャンセルできるが、それ以降のキャンセルの場合、売買代金100%の違約金が発生するという条項があり、その点についての確認書が取られていた。
ところが、結婚式等当日の84日前,ドレス契約日から35日後に,消費者の申出により結婚式等の開催契約が解除された。
そこで、結婚式場が、主位的に売買代金請求、予備的に違約金請求として,売買代金(ないし違約金)31万5000円の支払を求めた。

【判断の内容】
結婚式場が、本件ドレスの製作代金としてメーカーに支払った金額は,11万3400円であり、それ以上の積極的損害を何ら具体的に主張していないことにも鑑みると,結婚式場に生じた本件ドレス契約の効力喪失に伴う積極的損害はそれに尽きているとみることができる。
本件ドレスの発注についても実質的にはメーカーと消費者との間を媒介しているにすぎないとみられることから,メーカーからの仕入代金と本件ドレスの代金との差額を逸失利益として結婚式場に生ずべき平均的な損害に算入することは相当ではないとし、本件ドレス契約の解除に伴い結婚式場に生ずべき平均的な損害額は,結婚式場がメーカーに対して支払った金額と同額の11万3400円であると認めるのが相当である。
したがって,本件取消料条項のうち11万3400円を超える額の違約金の部分は、9条1号により無効。

◆ H21.01.21神戸地裁判決

2010年7月31日 公開

平成20年(レ)第98号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 下野恭裕,齋藤大,桂川瞳
原審 神戸簡裁平成19年(ハ)第11981号

【事案の概要】
敷金返還請求。原審は敷引条項が10条違反であるとして返還請求を認めたが,控訴された。

【判断の内容】
原判決を取り消し,敷引条項が10条違反でなく有効とした。
① 民法は賃料以外の金銭負担を予定していないが,これと異なる合意を当事者間ですることが全て不当とまではいえない。
② 関西においては敷引の慣行が相当定着している。
③ 敷引特約があれば長く刈り続ければ賃借人にも一定のメリットがある。
④ 退去時の修繕費を巡る無用な争いを避けることができるなど一定の利点もある。
⑤ 後段要件については,賃借人が敷引特約の内容について認識していたかどうか,敷引特約があることによって,敷引額に相応して賃料が低額になっていたか どうか,敷引特約が存在しない賃貸物件を選択する可能性がどの程度あったか,原状回復費用の負担はどうなっていたのか等の諸般の事情を総合考慮して判断す べき。
⑥ 本件では,敷引条項は一義的に明確であり,賃借人は明確に認識していた。他のマンションを賃借する可能性もあった。敷引額も不当に高額とは言えない。 賃借期間が4年3ヶ月にわたった。修繕費が66万円かかっており,賃借人が負担を免れていること等から,後段要件は満たさない。

◆ H21.07.10横浜地裁判決

2010年7月9日 公開

平成19年(ワ)第2840号報酬契約金請求事件
判例時報2074号97頁、2111号154頁
裁判官 宮坂昌利

【事案の概要】
弁護士である原告が,依頼者である被告から委任の途中で解任されたことに関し,未払いの着手金残額及びみなし報酬特約または民法130条の規定によるみなし条件成就を主張して報酬の支払いを求めた事案。

【判断の内容】
みなし報酬特約は9条1号に反し無効であるとして請求を棄却した。
① 弁護士との委任契約は消費者契約にあたる。
② 委任者が受任者をその責めによらない事由によって解任したときは,委任の目的を達したものとみなし,報酬の全額を請求できるとするみなし報酬特約は,民法648条3項の特則にあたり,損害賠償額の予定または違約金の定めにあたる。
③ 平均的損害について,当該事件処理のために特別に出捐した代替利用の困難な設備,人員整備の負担,当該事件処理のために多の依頼案件を断らざるを得な かったことによる逸失利益については,通常の弁護士業務体制を想定した場合,本件遺産分割調停事件の受任のためにこのような損害が通常発生するとは言い難 い。
 当該事件にかかる委任事務処理費用の支出,当該事件処理のために費やした時間及び労力については,通常,着手金によってまかなうことが予定されている。
 本件委任契約の定める報酬を得ることができなかった逸失利益については,中途解約にかかる損害賠償額の予定を適正な限度に制限する9条1号の趣旨からは,民法130条の適用があり得ることは格別,平均的損害には含められない。

◆ H17.10.26東京地裁判決

2010年7月8日 公開

平成17年(レ)第149号更新料請求控訴事件
LLI
裁判官 井上哲男,桑原直子,西尾洋介

【事案の概要】
居室賃貸借契約の更新料請求。更新料特約が10条に違反するか否かが争われた。更新料は賃料1ヶ月分,期間2年。

【判断の内容】
更新料請求を認めた。
本件更新特約は,更新料という負担はあるが,期間満了後の使用継続状況をもって,期間の定めのあった建物賃貸借契約が期間の定めのない賃貸借契約になるこ とを防ぎ,2年間という契約期間は本件居室についての賃借権を確保するものであり,むしろ,本件更新特約は賃借人としての権利を実質的に強化するものとし た。

◆ H21.06.19大阪高裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ネ)第3256号敷金返還等請求控訴事件
未登載

【事案の概要】
敷引特約を有効とした。
判例時報2066号84頁(H21.09.25京都地裁判決(1)の解説)に記載あり。

◆ H21.03.27大津地裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ワ)第525号
判例時報2064号70頁
裁判官 阿多麻子
控訴審 H21.10.29大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
次の理由から,10条違反とはいえないとして請求を棄却した。
① 更新料は,京滋地域では慣行となっており,借りようとする者も一般的に認識しており,また,賃貸人賃借人とも,物件の使用収益の対価としてかかる一時金が設けられているという限度で認識は一致しており,賃料の補充の性質を有する。
② 更新拒絶権放棄の対価の性質,賃借権強化の機能は認められるが,本件では希薄。
③ 約款を用いた取引であっても,核心的合意部分については交渉過程及び契約内容に顧客の意向が反映されるのであるから,企業者が定型的処理のため一方的に定めた技術的事項や付随的条件とは異なり,解釈にあたって,約款の特殊性に応じた厳密な内容規制を及ぼす必要はない。
④ 10条前段要件は満たす。
⑤ 10条後段要件について,「消費者の利益を一方的に害する」とは,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者に判断の前提となるべき情報が提供されず条項の了知が期待できないこと,あるいは,市場における競争原理が有効に機能していないことから,私的自治の原則や契約自由の原則に修正を加えなければならないほどに,消費者の利益が不当に侵害されていることと解するのが相当。
⑥ 本件では,原告は更新料の内容を認識しており,自由な選択で契約したもの。格差につけ込んで押しつけたものとはいえない。中途解約の場合も返還されないことを認識した上で放棄したもの。

◆ H18.11.09東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成18年(ワ)第3471号不当利得返還請求事件
LLI
裁判官 村田渉

【事案の概要】
有料老人ホームの入居申込金等の返還請求。東京都の指針に反していることを告げないことが不利益事実の不告知となるか,入居申込金の追加支払条項,不返還条項が10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求を棄却した。
① 東京都の指針は重要事項には当たらない。
② 本件追加支払条項は10条違反ではない。
③ 本件不返還条項は,保証金の入居月数に応じた返還金の算定方式が明確にされており,かつ一時金のうち返還対象とならない部分の割合が不適切であると認めるに足りる証拠もない。
④ 本件入居申込金,施設協力費及び保証金がいずれも実質的に居住サービスの対価であると断定することはできず,また保証金の償却が解約による平均的損害額を超えるものであると認めるに足りる証拠もない。

◆ H21.05.19東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第7387号入居金返還請求事件
判例時報2048号56頁,現代消費者法7号92頁

【事案の概要】
介護付有料老人ホームの終身利用権金,入居一時金の返還請求。終身利用権金についての不返還合意,入居一時金の償却合意が9条1号,10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求棄却した。
① 本件終身利用権金は,入居予定者が原則として終身にわたって利用し各種サービスを受けうる地位を取得するための対価。違約金の定めではなく,10条違反でもない。
② 本件入居一時金は,老人ホームを維持運営するための重要な財源。償却合意は,入居者の入居のための人的物的設備の維持等にかかる諸費用の一部を補う目的,意義を有する。
③ 償却期間は設置者が経営に関する諸事情を踏まえて決定しうる。簡易生命表に照らして,2年6月,3年の期間で償却することも不当ではない。

◆ H21.12.15大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2154号保証金返還請求控訴事件,同第2551号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
原審 H21.07.30京都地裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H22.02.19京都簡裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(少コ)第194号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。
消費者が契約内容を理解するよう努めるとの3条は努力義務であり,仮に違反があっても消費者契約法が適用されないことにはならない。

◆ H22.02.24大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2690号更新料返還等,更新料反訴,保証債務履行請求控訴事件
金融商事判例1338号21頁,消費者法ニュース84号233頁
裁判官 安原清藏,坂倉充信,和田健
第1審 H21.09.25京都地裁判決(1)
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
更新料条項,定額補修分担金条項がいずれも10条違反で無効として返還請求を認めた。
更新料の収入を確保しようとするのであれば,端的に更新料相当分を賃料に上乗せした賃料の設定をして賃借人となろうとする者に提示し,賃借するか否かを選択させることが要請される。

◆ H22.03.11大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2691号定額補修分担金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,神山隆一
原審 京都地裁判決平成20年(ワ)第3152号

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,定額補修分担金条項は10条に反し無効であるとして,契約締結時に支払った定額補修分担金25万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」には,民法等の解釈に関する最高裁判所の判例も含まれる。
② 定額補修分担金条項が「射幸契約」であり10条後段要件に該当しないとの点は,情報格差のない対等な立場にある当事者が互いに駆け引きをしながら具体的な分担金額を決定するのであればよいが,本件ではそうではない。

◆ H22.03.26大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2692号定額補修分担金条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 三浦潤,中村昭子,森宏司
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
第1審 H21.09.30京都地裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案

【判断の内容】
① 41条1項の事前の書面による請求は,事業者等に対し早期に取引の実情を把握して自ら是正する機会を与えるとともに,これにより紛争の早期解決と取引の適正化を図る観点から,訴訟に先立ち請求することを義務づけたものであり,同項及び同法施行規則32条1項に定められた事項以外の事項が記載されていたからといって事前の書面による請求にあたらないとはいえない。
② 定額補修分担金条項は10条に反して無効。
③ マスコミを通じて使用しないことを表明していても,経営判断が状況に応じて変転する可能性も高く,また,10条違反性を強く争っている以上,使用する恐れがあるといえる。
④ 合意更新の際には,定額補修分担金条項を含んだ契約の申し込みまたは承諾の意思表示があるものとは認められない。
⑤ 従業員への指示を求める請求は,特定として欠けるところはない。
⑥ 2年近く使用していないこと等から,従業員らへの指示の必要性はない。

◆ H22.03.30最高裁判決(1)

2010年6月27日 公開

平成21年(受)第1232号学納金返還請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号148頁,判例タイムズ1323号102頁,判例時報2077号44頁、国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 田原睦夫,藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,近藤崇晴
第一審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
控訴審 H21.04.09大阪高裁判決

【事案の概要】【判断の内容】
専願等を資格要件としない大学の推薦入試の合格者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入試の補欠者とされた者につき 4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があるなどの事情があっても,授業料等不返還特約は有効であるとされた事案

◆ H21.04.09大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ネ)2706号学納金返還請求控訴事件
法ニュース速報1043
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
第1審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
上告審 H22.03.30最高裁判決(1)

【事案の概要】
医大における推薦入学合格者の前期授業料の返還請求

【判断の内容】
4月1日以降(4月5日)に入学辞退した場合についても,4月7日まで補欠合格をする取り扱いがされているとの特段の事由があり,平均的損害を生じていないとして,返還請求を認めた。

◆ H22.05.27大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2548号更新料支払請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,宮武康
第1審 H21.09.25京都地裁判決(3)

【事案の概要】
居室賃貸借契約における更新料請求。更新料条項が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,更新料請求を棄却した原判決を維持した。非常に詳細に検討がなされている。
① 更新料がいかなる性質のものであるかは,当該賃貸借契約成立後の当事者双方の事情,当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考慮したうえ,具体的事実関係に即して判断されるべきもの。
② (更新料発生経緯からの検討)昭和30年代末ころ以降地価の高騰が激しかった当時においては,長期間の賃貸借契約の場合に賃料に反映させることができ ず更新料として回収がはかられ,高騰が続いていた当時においては合理性がないとまでは言えないが,地価の高騰がおさまりむしろ賃料の横ばい,下落が認めら れるようになった平成18年時点においては合理性はなく,賃貸人の利益確保を狙った不合理な制度である。
③ (更新料の性質からの検討)賃料の補充,更新拒絶権の放棄の対価,賃借権強化の対価の性質も認められない。
④ 更新料が社会的承認を得ているとは言えない。生活保護において更新料が扶助されているとしても,それは更新料を合理的な制度と認めているものではない。
⑤ 本件更新料条項は,10条前段,後段を満たす。更新料条項はいわゆる中心条項ではない。

◆ H21.10.29大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第1211号更新料返還等請求控訴事件
判例時報2064号65頁
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.03.27大津地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を棄却した。
① 本件更新料支払条項は10条前段を満たす。
② 礼金の趣旨は,賃貸借期間を2年とする賃借権の設定を受けた賃借人としての地位を取得する対価。
③ 更新料の支払により,期間の定めのある賃貸借契約として更新されることや,更新料を含めた負担額を事前に計算することが特段困難とはいえないこと,更新料が比較的低額であることなどから,10条後段を満たさない。

◆ H21.12.03大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第2005号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.07.02京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,保証金から一定の金額を解約引金として控除して返還するとの特約が10条違反であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
解約引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H21.06.04名古屋簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(少コ)第438号敷金等返還請求事件(通常訴訟手続に移行)
最高裁HP
裁判官 佐藤有司

【事案の概要】
建物賃貸借契約において,敷引条項を無効として返還請求を認めた事例。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 敷金は一般に賃貸借契約から生ずる賃借人の債務を担保するために賃借人から賃貸人に差し入れられたものであるから,賃借人に未払家賃,修繕費等の債務 がない場合には,他に合理的な理由がない限り,賃貸人は賃借人に返還する義務を負い,これと異なる定めは10条により無効になる。
② 本件で合理的理由はない。

◆ H21.07.02京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第2307号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.03大阪高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。借主が司法修習生であり法律的知識があるとして,10条違反にはならないと貸し主から主張された。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等守株の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 借り主は法律知識を有していたことは認められるが,建物賃貸借上の諸条件に関する情報について一般の消費者以上の情報を有していたとは認められない。また,借り主は当該条項について交渉の余地がほとんどない。

◆ H21.07.23京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3224号敷金返還請求事件
最高裁HP,判例時報2051号119頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項,更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項,更新料条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引,更新料の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.07.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3216号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.15大阪高裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.08.07東京簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(少コ)第998号敷金返還請求本訴事件(通常手続移行),平成21年(ハ)第23060号解約違約金等請求反訴事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金返還請求に対し,貸主が修理代,及び,1年未満での解約を理由として2ヶ月分の違約金を請求した事案。2ヶ月分の違約金の定めが9条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,2ヶ月分の違約金の定めが9条1項違反として,1ヶ月分を超える部分の請求を棄却した。
① 中途解約の場合の違約金の定め自体は,直ちに10条違反となるとはいえない。
② 違約金については,一般の居住用建物の賃貸借契約において途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の1ヶ月分とする例が多数であり,相当。これを超える部分は9条1号により無効。

◆ H21.08.27大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ネ)第474号更新料返還等請求控訴事件,平成20年(ネ)第1023号賃料請求反訴事件
判例時報2062号40頁
裁判官 成田喜達,亀田廣美,高瀬順久

【事案の概要】
居室の更新料返還請求。更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件更新料条項は10条違反であるとして,更新料の返還請求を認めた。
① 更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充という賃借人側の主張を詳細に検討していずれも否定し,特に性質も対価となるべきものも定められ ないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかないとし,10条前段に該当するとした。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,契約当事者の情報収集力等の格差の状況及び程度,消費者が趣旨を含めて契約条項を理解できるもので あったかどうか等の契約に至る経緯のほか,消費者が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたかどうかなど諸 般の事情を総合的に検討し,あくまでも消費者契約法の見地から,信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきである。
③ 本件更新料条項の10条後段該当性についても詳細に検討し,不合理性,不当な顧客誘因性,強行放棄の存在から目をそらせる役割を果たしているとして,該当するとした。
④ 主たる給付の対価に関する条項は,取引の本体部分となり,それは基本的に市場の取引により決定されるべきであるから10条の適用対象とならないのが原 則であるが,対価を理解すべき情報に不当な格差があり,又は理解に誤認がある場合には上記原則のように言うことができないことは自明であり,上記原則が適 用されるためには,その前提として,契約当事者双方が対価について実質的に対等にまた自由に理解しうる状況が保障されていることが要請されるとして,本件 ではこれを満たしていないとした。

◆ H21.09.25京都地裁判決(1)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第947号更新料返還等請求事件,同第1287号更新料反訴請求事件,同第1285号保証債務履行請求事件
最高裁HP,判例時報2066号95頁
裁判官 瀧華聡之,佐野義孝,梶山太郎
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,更新料,定額補修分担金の返還請求を認めた。
① 更新料について,賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価の性質を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 更新料条項について,賃貸借契約締結の際の考慮要素になっており中心条項であり10条前段違反にならないという考えは,寄るべき法的基準がなく私的自 治にゆだねられている場合であって,更新料条項については民法601条の規定が存在し,全く私的自治にゆだねられているわけではない。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情から,10条に反して無効。
③ 定額補修分担金についても,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(2)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第558号保証金・更新料返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項は10条に反し無効であるとして,賃貸借契約期間中に支払った更新料11万4000円の返還及び被告が原告のプライバシーを侵害したとして,不法行為に基づき10万円の損害賠償を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を認めた。
① 更新料を賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情も考慮して,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(3)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第1286号更新料支払請求事件
最高裁HP
裁判官 佐野義孝
控訴審 H22.05.27大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,賃貸借契約の更新に際して更新料10万6000円の支払を求めたところ,更新料条項は10条に反して無効であると主張した事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の請求を棄却した。
① 更新料を賃料の補充とみることは困難であって,更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価ということもできない。
② 更新料の額や原告と被告との間の情報量の格差等の事情を考慮して,更新料条項が10条に反して無効。

◆ H21.09.30東京高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第207号生命保険契約存在確認請求控訴事件
消費者法ニュース82号214頁
裁判官 大坪丘,宇田川基,尾島明
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,無催告失効条項が10条違反であるとして,契約の存在を確認した。
① 本件無催告失効条項は,民法540条1項及び541条の場合に比べて消費者である保険契約者の権利を制限しており,10条前段を満たす。
② 保険料の自動引き落とし特約があるが,ささいな不注意による振替不能の危険があり,これによって直ちに失効するとすることは契約者にとって酷。
③ 振替不能,再請求の通知を出していることは,本件保険約款自体の有効性を判断する際に考慮すべき事項ではない。

◆ H21.09.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第871号定額補修分担金条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)京都消費者契約ネットワークHP(PDF)判決写し(京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2068号134頁、判例タイムズ1319号262頁,消費者法ニュース84号237頁
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
控訴審 H22.3.26大阪高裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案。

【判断の内容】
① 定額補修分担金条項は10条に反して無効であるとした上で,同条項を含む意思表示をすることの差止めを認めた。
② 被告が,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結し,又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うための事務を行わないことを指示することを求める部分は、作為を求める給付の訴えであり、一義的に明らかでなく執行にも問題を生ずるとして、却下した。
③ 契約書雛形の廃棄、従業員への周知については、すでに廃棄済みで、周知がなされているとして、請求を棄却した。

◆ H21.10.23大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第1437号契約条項使用差止等請求控訴事件
消費者庁HP(pdf)消費者支援機構関西HP
裁判官 永井ユタカ,上田日出子,谷口安史
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
第1審 H21.04.23京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.03.10大阪高裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ネ)第2700号敷金返還等請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安原清蔵,樋口英明,本多久美子

【事案の概要】
建物賃貸借契約に付随した定額補修分担金特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反であるとして,返還請求を認めた。

◆ H21.03.31大阪地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第10436号建物明渡請求事件
消費者法ニュース85号173頁
裁判官 藤倉徹也

【事案の概要】
 建物賃貸借契約で,家賃等を3ヶ月以上滞納したときは、貸主は催告によらないで契約を解除することができ、契約解除後も本件建物を明け渡さないときは、契約解除の翌日から本件建物明渡しの日まで家賃相当額の1.5倍の損害賠償金を貸主に支払うという条項の効力が争われた。

【判断の内容】
① 賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞を原因とする損害賠償における損害は、当該不動産の有する使用価値それ自体が侵害されたことによる積極的損害であると解されるところ、賃貸借契約においては当該不動産の使用価値をもって賃料とするのが通常であるから、賃料相当損害金の算定については、特段の事情がない限り、従前の賃料を基準として算定するのが相当と解される。
 そうすると、不動産賃貸借契約において、賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞が生じた場合における「平均的損害」は、原則として、従前の賃料を基準として算定される賃料相当損害金を指すものと解するのが相当。
② 家賃等相当額の1.5倍の賠償金の支払いに関する規定は、家賃等損害金相当額の支払いを求める部分をこえる部分について、9条1号に反し、無効。

◆ H21.04.23京都地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第1079号契約条項使用差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)消費者支援機構関西HP,判例時報2055号123頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,波多野紀夫
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
控訴審 H21.10.23大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.06.04最高裁判決

2010年6月14日 公開

平成19年(受)第1987号保険金請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1306号229頁,金融商事判例1334号9頁,判例時報2054号144頁,金融法務事情1884号48頁
裁判官 涌井紀夫,甲斐中辰夫,宮川光治,櫻井龍子,金築誠志

【事案の概要】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき 他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における,同条項にいう「他の保険契約」の意義

【判断の内容】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款の解釈について,一定の限定をした判決である。
宮川光治裁判官は補足意見で,保険約款が複雑で容易に理解し難いこと,損害保険料率算出機構作成の標準保険約款が保険実務に浸透していないこと,契約者で ある市民の合理的意思と乖離しない,分かりやすい約款の作成と保険実務における消費者保護の精神に沿った約款の解釈・運用が望まれると指摘した。

◆ H20.09.30京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(レ)第4号礼金返還請求控訴事件
最高裁HP
吉川愼一,上田卓哉,森里紀之

【事案の概要】
控訴人は,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない 旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が10条により全部無効であるとして,被控 訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた(1審では請求棄却)。これに対し,礼金約定が信義則に反して消 費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,礼金約定が10条に反し無効であるということはできないとした事例

【判断の内容】
以下の理由から,10条後段の要件を欠くとして返還請求を認めなかった。
① 礼金は,賃貸人にとっては賃貸物件を使用収益させることによる対価として,賃借人にとっては賃貸物件を使用収益するに当たり必要となる経済的負担とし て,それぞれ把握されている金員であり,かかる当事者の意思を合理的に解釈すると,賃料の一部前払としての性質を有するというべきである。また,礼金が返 還されないことについては説明があったもので,何らの根拠もなく,何らの対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されているとはいえない。
② 礼金は賃料の前払としての性質を有しており,これを契約時に徴求したとしても被控訴人が不当な利益を得ることにはならない。また,控訴人は自由な意思に基 づき礼金約定が付された賃貸物件を選択したというべきであり,控訴人に交渉の余地がなかったことは特段問題とするに足りない。
③ 「賃貸借住宅標準契約書」の体裁や政府委員の答弁,公営住宅法や旧国庫法などが礼金を禁止していること,本件礼金の額などから,礼金約定が非難に値するということはできない。

◆ H20.10.17東京地裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ワ)第3751号卒業認定等請求事件
判例時報2028号50頁
裁判官 佐久間邦夫,石原直弥,中依子

【事案の概要】
私立高校の生徒が,退学処分の効力を争うとともに,予備的に納付済みの授業料等は理由のいかんを問わず返還しない旨の学則(学費不返還特約)の効力は9条1号等に反して無効であるとして,退学処分日以降の学費の返還を求めた。

【判断の内容】
年度途中の退学処分は高校にとって予測困難であったところ,一般に在学契約に基づく生徒に対する給付は4月1日から翌年3月31日までの1年を単位として 準備されており,新年度開始日(4月1日)には当年度における教育役務等の給付の準備がされていたことに鑑みれば,在籍予定期間の授業料等に相当する金員 は,平均的な損害額に該当するものというべきであり,不返還特約は平均的な損害額を超えるものではない,学費の返還請求を認めなかった。

◆ H20.11.27東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少エ)第25号敷金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中島寛

【事案の概要】
マンション居室賃貸借契約終了による敷金返還請求。未払賃料の遅延損害金が日歩70銭(年利73%)とされていたのが10条違反か否かが争われた。

【判断の内容】
未払賃料についての遅延損害金の約定は損害賠償額の予定または違約金の定めであり,利率の上限は14.6%に制限されるとして,これを超える部分は無効としてその範囲内で相殺を認めた。

◆ H20.11.28大阪高裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ネ)第1597号定額補修分担金・更新料返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報2052号93頁
裁判官 安原清蔵,八木良一,本多久美子
原審 H20.04.30京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
控訴人(賃貸人)からの,契約締結時において原状回復額を定額で確定させて,賃貸人と賃借人の双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたもので あり10条にはあたらないとの追加主張に対し,多くの賃貸借契約を締結している賃貸人側がリスクの分散を図るに過ぎず賃借人にはメリットがあるかどうかは 疑問として,控訴を棄却した。

◆ H20.12.02大阪地裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ワ)第8639号賃料等請求事件,平成19年(ワ)第8639号保証金返還反訴請求事件
未登載
裁判官 深見敏正

【事案の概要】
敷引特約につき,その一部を無効とする判決

【判断の内容】
本件敷引特約全体が信義則に反していると判断するには困難な面があるとしつつ,建物の使用期間に関わらず保証金の71.4%を控除するのが過酷だとして,30%を超える部分を10条違反とした。

◆ H20.12.04横浜地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第721号生命保険契約存在確認請求事件
未登載
裁判官 小林正,志田原信三,安部利幸
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由から,無催告失効条項は10条違反ではないとして契約の失効を認めた。
① 本件無催告失効条項は10条前段を満たす。
② 他の条項により契約を簡単には失効させず存続させるように一定の配慮がされていることから,10条後段は満たさない。

◆ H20.12.17東京高裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ネ)第141号設備費用請求控訴事件
金融商事判例1313号42頁
裁判官 藤村啓,佐藤陽一,岸日出夫

【事案の概要】
顧客らがそれぞれ取得した各建物に業者があらかじめ設置しておいたLPガス消費設備及び給湯器に関して顧客らとの間で締結した各貸与契約に定められた中途 解約の場合の補償費支払に関する合意に基づき,顧客らに対し,各補償費の支払を求めた事案。同条項が9条1号にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
① 建物に設置された機器類が附合あるいは即時取得により建物所有者である顧客らの所有に属することとなるとした上で,補償費の支払いが機器類の売買代金の支払い又は利益調整であるとの業者の主張を排斥し,結局違約金条項と解するほかないと判断した。
② 平均的損害を超える額についても認められないとして,結局9条1号により同条項は無効であるとして,業者の請求を棄却した。

◆ H21.01.28京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第2498号敷引条項使用差止請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者ネットワークHP)
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,向健志
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
控訴審 H21.06.16大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
請求の趣旨は,「被告は,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結又は合意更新をするに際し,当該消費者から受領する敷金又は保証金に関して,当該消費者との建物賃貸借契約終了時において,その名目の如何にかかわらず,当該消費者に返還すべき敷金又は保証金より無条件に一定額を控除する旨の条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示せよ。」というものであるところ,差止命令とは別に,その命令の実現過程に介入して,事業者に対して,別途義務を課すことができる行為は,不当行為の停止又は予防の実効性を確保するために必要な具体的に特定された措置に限られるというべきであり,このように解しなければ,事業者としてはどのような措置をとれば義務を履行したことになるのか明らかでなく困難を強いられるし,強制執行にも困難が生じるとし,本件では請求の特定ができていないとして,訴えを却下した。

◆ H21.02.20東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少コ)第3509号解約予告不足金請求事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸人が,中途解約をした賃借人に対し,解約予告不足金を請求した事案。解約予告不足金条項が10条,9条違反,民法90条違反となるとして争われた。

【判断の内容】
下記のように判断し,1ヶ月分の賃料・共益費相当額及び年14.6%の遅延損害金のみ認め,その余を棄却した。
① 解約予告不足金を定めること自体は,民法上でも期間の定めのある場合でも解約権の留保が認められていることから,一律に無効としなければならないものではない。
② 一般に,解約予告期間及び予告に代えて支払うべき違約金額の設定は1ヶ月分とする例が多数であり,解約後次の入居者を獲得するまでの一般的な所要期間 として相当と認められるので,解約により原告が受けることがある平均的な損害は賃料・共益費の1ヶ月分相当額であると認めるのが相当(民事訴訟法248 条)。
③ 遅延損害金は,9条2号により年14.6%を超える部分は無効。

◆ H20.07.24京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)第3565号定額補修分担金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 田中義則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項(月額賃料の3.25倍)について,10条で無効とし,返還請求を認めた事例

【判断の内容】
下記の理由から,定額補修分担金条項につき,10条により無効とした。
① 賃貸人は,損害賠償請求権の事前放棄ではあるが,全体としては定額補修分担金の額を採算が取れるように設定していると考えられる。
② 賃借人は定額補修分担金の額について賃貸人の定める額に従うほかなく,交渉による変更の余地が考えられない。また,賃借人にとって退去は1回限りのこ とであり,賃借人にとって利益となるか否かは退去時にならないとわからないことであるから,あらかじめ不利益の生じるリスクを他に転嫁したり分散すること はできない。
③ 分担金の額は,被告の賃貸業の経営上の観点から被告があらかじめ決定した者であるが,その具体的根拠は明らかでなく,賃借人にはこの金額の適否を判断することは不可能である上,交渉により金額の変更を求めることができたとも考えられない。

◆ H20.08.27京都簡裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ハ)第10984号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(50万円のうち40万円を敷引)は10条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 2条2項にいう「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,個人がその所有不動産を継続して賃貸することは,不動産業者ではなく一つの部屋を貸す場合であっても「事業」にあたる。
② 敷引特約につき,信義則に反し消費者の権利を制限するものであり,解約引率8割が慣習であると認めるに足りる証拠もないから,10条により無効である。
③ 契約締結から5年後に敷引特約の無効を主張したとしても,信義則に違反するものではない。

◆ H20.09.26京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成20年(ワ)第1469号敷金返還等請求事件
未登載
裁判官 吉川愼一

【事案の概要】
定額補修分担金特約,日割計算に関する特約,早期退去特約が10条に違反しないとされた事例

【判断の内容】
①  定額補修分担金特約は,賃借人(消費者)にとってもメリットのある特約であって,「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。
② 賃料の計算方法,支払方法については,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合」を明らかにする任意規定が存在せず,退去月において賃料の日割計算をしない特約も有効である。
③ 早期退去特約は「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。

◆ H18.12.15大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第137号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 山下郁夫,横路朋生,矢野紀夫

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(45万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引をする趣旨が合理的なものと認められ,かつ,敷金契約締結の際に敷引の趣旨が賃借人に説明されて賃借人もこれを了解しているなど特段の事情のない限り,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害すると解すべき。
② 本件では,説明がなされこれを賃借人が認識したことを認めるに足りる証拠はないから,合理性の有無を検討するまでもなく,10条違反となる。

◆ H18.12.22最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1762号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号69頁,判例タイムズ1232号84頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋

【事案の概要】
いわゆる鍼灸学校の入学試験に合格し,同学校との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度の始まる数日前に同契約を解除した場合において,同特約が9条1号により無効とされた事例

【判断の内容】
"鍼灸学校であっても,在学契約の性質,学納金の性質,不返還特約の性質及び効力については,大学に関する平成18年11月27日の判例の説示が基本的に妥当する。
3月31日より前に辞退しているのであれば平均的損害は損しないのであり,不返還特約は無効である。

◆ H19.01.11大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第176号敷金返還請求控訴事件,同第251号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 塚本伊平,府内覚,烏田真人

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(全額敷引の合意)は10条,民法90条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 転勤により空室になるため賃貸したものであること,当該建物以外の物件につき賃貸しているという事実も認められないことなどから,賃貸を反復継続的に行っていたということはできず,「事業者」(2条2項)には該当しない。
② 敷引特約は契約書,重要事項説明書に明記されており,賃借人が敷引特約を押しつけられたといった事情もうかがえないことから,敷金全額(90万円。なお,賃料月額14万円,管理費月額2万3940円。)であっても直ちに公序良俗に反するとはいえない。

◆ H19.02.06西宮簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ハ)第108号敷金返還請求事件
消費者法ニュース72号211頁
裁判官 西田文則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
① 法人は「事業者」(2条2項)にあたる。
② 原告が学者であっても,事業としてまたは事業のために契約したものでないことは明らかであり「消費者」(2条1項)にあたる。
③ 本件敷引特約は10条違反である。

◆ H19.03.30長崎地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第453号生命保険金請求事件
消費者法ニュース72号207頁
裁判官 上拂大作

【事案の概要】
生命保険契約の保険金請求に対し,保険料の支払いが猶予期間を2日過ぎてなされたとして,失効約款の適用により失効しているとして争われ,生命保険契約の 失効約款の適用に関し,未払保険料の支払が猶予期間を2日も経過しないうちに行われている場合は,消費者契約法・消費者基本法等の消費者保護の理念に基づ き,保険契約の失効を主張することは信義則上相当ではないとされた事例

【判断の内容】
次の理由から,原告の請求を認めた。
① 本件保険約款は,一応,有効。
② しかし,信義則や当事者間の衡平の見地,消費者契約法等,消費者と事業者との格差に鑑み,約款の規制を検討する必要がある。
③ 本件失効約款は,民法の原則よりも消費者に不利益になっている。
④ 保険ではわずか2日の遅れで,それまでは継続して払われていたし,自動振替制度で引き落としがなされない場合には取立債務に準じた債務の履行ということになり,実際に預金があった場合には不履行を認めることができず,原告に帰責性がない。軽微。
⑤ よって,本件失効約款を適用することは信義則上相当ではなく,失効を主張することはできない。

◆ H19.03.30大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第196号損害賠償請求控訴事件,平成18年(レ)第239号損害賠償請求附帯控訴事件
判例タイムズ1273号221頁
裁判官 横山光雄,高木勝己,小川清明

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条により一部無効であるとして,賃借人の賃貸業者に対する敷金返還請求が一部認容された事例

【判断の内容】
次の理由から,25万円について請求を認めた。
① 敷引金の性質は,契約成立の謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,終了後の空室賃料,賃料を低額にすることの代償などの様々な要素を有するものが渾然一体となったものである。
② 本件敷引金のうち,契約更新の際賃料を下げる代わりに敷引金を5万円上げたことが明らかであり,この部分は賃料減額の代償である。残りの25万円については元々予定されていた敷引金であり,①の性質を有する。
③ 5万円の部分は賃料低額の代償として賃借人に一方的に不利益ということはできず有効であるが,25万円の部分は一方的に不利益である。
④ 敷引特約は,賃借人の交渉努力によって特約自体を排除することは困難であり,事業者が一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。本件敷引特約についても,25万円については交渉の余地がなかったと認められる。

◆ H19.04.03最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1930号解約精算金請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集61巻3号967頁,判例時報1976号40頁,判例タイムズ1246号95頁,金融商事判例1275号17頁,1277号8頁
裁判官 那須弘平,上田豊三,藤田宙靖,堀籠幸男,田原睦夫

【事案の概要】
外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の精算について定める約定が,特商法49条2項1号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効であるとされた事例

【判断の内容】
① 本件使用済ポイントの対価額も,契約時単価によって算定されると解するのが自然。
② 契約時よりも常に高額となる精算規定は,実質的には,損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので,受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない。

◆ H19.04.20京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第79号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP,消費者法ニュース73号214頁
裁判官 山下寛,森里紀之,衣斐瑞穂

【事案の概要】
控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金 35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,敷金残金30万円などの返還を求 めたところ,上記敷引特約は10条により無効であると判断された事例

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 賃貸借においては賃借人に債務不履行があるような場合を除き,賃借人が賃料以外の金銭の支払を負担することは法律上予定されておらず,また,関西地方 において敷引特約が事実たる慣習として成立していることを認めるに足りる証拠はないから,本件敷引特約は,民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合 に比し,消費者の権利を制限するものである。
③ 自然損耗についての必要費は賃料により回収され,更に敷引特約によりこれを回収することは,契約時に敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとして も,賃借人に二重の負担を課すことになる。また,敷引特約は関西地区における不動産賃貸借において付加されることが相当数あり,賃借人が交渉でこれを排除 することは困難であって,消費者が敷引特約のなされない物件を選択すればよいとは当然にはいえない状況にあることなどを総合すると,本件敷引特約は,信義 則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H19.04.20大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(レ)第274号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 角隆博,伊藤佑子,伊藤正晴
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
上告審 H19.09.13大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を請求し,原審は10条違反として請求を認めたが,控訴審でこれを否定した事例

【判断の内容】
① 本件自動更新条項による更新の際には賃貸借の条件について協議がなされて合意が成立する事情はない。
② 消費者契約法施行後に賃貸借契約を締結する場合には賃貸人は同法の適用があることを前提として契約条件を定めることができるが,本件に同法を適用すると,更新拒絶に正当事由が要求されている関係から,賃貸人に不測の損害を与えかねない。
③ 本件敷引特約は,民法90条違反とは認められない。

◆ H19.05.23東京高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第5683号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 石川善則,倉吉敬,徳増誠一
第1審 H16.03.30 東京地裁判決
控訴審 H17.03.10 東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)

【事案の概要】
推薦入学の解除の場合,特段の事情がない限り,初年度授業料等に相当する平均的な損害が生ずるとした上告審(H18.11.27最高裁判決)を受けて,特段の事情の有無を審理した学納金事件差戻審判決

【判断の内容】
学生が在学契約を解除した時期を平成14年3月13日と認定した上で,当該解除の時点においては,推薦入試はもとより一般入試に至るすべての入学試験およ び合格発表も完了していたことから,大学が代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情が存在すると認めること はできず,学納金不返還特約のうち授業料等相当額部分についても大学に生ずべき平均的損害を超えるものとは認められず有効とした。

◆ H19.06.01京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第94号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 田中義則,阪口彰洋,溝口優

【事案の概要】
賃借人(被控訴人)が清掃代,原状回復費用,解約手数料(解約した場合家賃2ヶ月分の解約手数料を支払う約定がある)の控除により返還されなかった保証金20万円を請求し,賃貸人(控訴人)は過去の更新料を反訴請求した訴訟の控訴審判決。

【判断の内容】
控訴棄却。
① 原状回復特約のうち通常損耗分を賃借人に負担させる部分は10条で無効である。本件では通常損耗を超える汚損を生じさせたと認めるに足りる証拠はない。
② 解約手数料の定めは9条1号により無効。
③ 平成14年6月1日更新の際の更新料の請求については,更新料特約の締結が消費者契約法施行前であり,消費者契約法の適用がない。本件更新料の特約は 公序良俗には反しないが,すでに契約終了時にも請求していなかったこと等からは,現段階で請求するのは信義則に反し許されない。

◆ H19.06.15大阪簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第70073号賃貸借契約更新料請求事件
未登載
裁判官 山本晃與

【事案の概要】
賃貸人が,賃借人に対して過去の4回分の更新料を請求した事案

【判断の内容】
建物賃貸借契約が法定更新された場合に,更新料を定める約定は法定更新には適用されないとして,過去4年分の更新料の請求を棄却した。

◆ H19.06.19大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第20号敷金返還請求上告,同附帯上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
控訴審 大阪地裁平成18年(レ)第176号,251号

【事案の概要】
転勤に伴って自宅を貸した賃貸人に対し賃借人が敷金返還請求をした事例。敷金90万円を預託する際の合意内容が敷引特約か否かが争われた。

【判断の内容】
本件敷金合意の内容は全額敷引を内容とするものとしたうえで,貸主は自宅を転勤にともなって賃貸したもので消費者契約法にいう「事業者」にはあたらないとして,消費者同士の契約であり,消費者契約法の適用はないとして,請求を棄却した原審判断を是認した。

◆ H19.07.13日向町簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第65号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
建物賃貸借の保証金に関して,解約時に全額を控除して返還しないとする解約引き条項の効力が争われた事例

【判断の内容】
保証金は,本来全額を賃借人に返還すべきものであり,賃貸借契約から生じた賃借人の債務の不履行がある場合にその額を差し引くことができるに過ぎないもの であるところ,本件解約引き条項は,退去時に全額を返還しないとするものであるから,これが10条により無効であることは明らかとした。

◆ H19.09.13大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第42号保証金返還請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
控訴審 H19.04.20大阪地裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を10条により請求したが否定した事例

【判断の内容】
本件賃貸借契約は,双方異議がなければ自動的に更新されるという内容であり,更新に際しても賃貸借条件について協議がなされて合意が成立したり,新たに書 面が作成されたといった事情はないまま自動的に更新されてきたというのであるから,更新後の賃貸借契約は消費者契約法施行後に締結された契約と認めること はできない。

◆ H19.11.09奈良地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第824号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 坂倉充信

【事案の概要】
敷金40万円から控除された,敷引部分20万円と原状回復費用のうち19万8425円の返還を求めた(賃貸人からの反訴あり)。

【判断の内容】
一部認容。
① 賃借人は原則として故意・過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化などについてのみ原状回復義務を負う。
② 敷引特約は,10条により無効として賃借人に責任ある修繕費用(13万7271円)のみ敷金からの控除を認めた。

◆ H20.01.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第1793号更新料返還等請求事件
最高裁HP,判例時報2015号94頁,判例タイムズ1279号66頁,金融商事判例1327号45頁,消費者法ニュース76号268頁
裁判官 池田光宏,井田宏,中嶋謙英

【事案の概要】
賃貸借契約における更新料を支払う旨の約定が,民法90 条及び消費者契約法10条により無効であるとはいえないと判断された事例

【判断の内容】
① 本件更新料は,主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しており,併せて,その程度は希薄ではあるものの,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質を有している。
② (民法90条について)本件更新料が主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しているところ,その金額は10万円であり,契約期間(1年間)や月払いの賃料の金額(4万5000円)に照らし,直ちに相当性を欠くとまでいうことはできない。
③ (10条について)任意規定による場合に比し消費者の義務を加重する条項にはあたるが,金額,期間に照らして過大ではなく,更新料約定の内容は明確で 説明を受けていることから不測の損害を与えるものでもなく,また,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質をも有していることからは,消費 者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H20.02.19福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第3937号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 伊藤聡

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金家賃3ヶ月分,敷引家賃3ヶ月分とした敷引特約を無効とし,敷金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 本件敷引特約は,任意規定に比して消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重するものである。
② 本件敷引特約には,合理性が認められず,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H20.03.28福岡高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第202号手付金返還,損害賠償請求控訴事件
判例時報2024号32頁
裁判官 丸山昌一,川野雅樹,金光健二

【事案の概要】
マンション売買契約締結後,買主が代金を支払わないために契約解除となったことから,宅建業者である売主が売買代金の2割とする違約金条項に基づき違約金を請求した事案。違約金条項が9条1号,10条に違反するか否かが問題となった。

【判断の内容】
次のように判断し,消費者契約法の適用がないとしつつ,信義則により違約金の額を制限した。
① 宅建業法38条により,違約金の額は代金の10分の2を超えてはならず,これに反する特約は無効としているから,本件違約金特約は宅建業法38条には違反しない。
② 宅建業法38条があるので,消費者契約法11条2項により,9条1号,10条は適用されない。

◆ H20.04.25東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第23907号不当利得返還等請求事件
未登載
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
セクハラ発言を受け,プロダクションとの所属タレント契約を解除したタレントが,契約金(25万円)の返還を求めるなどしたのに対し,契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項の効力が争われた。

【判断の内容】
契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項につき,解除に伴い当該事業者に発生する平均的損害を超える部分は9条1号により無効と解す べきところ,事実関係に照らし,プロモートのために撮った写真代(1万2600円)のほかに合理的な出費の存在を認めることはできないとし,これを差し引 いた残金につき返還請求を認めた。

◆ H20.04.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第2242号定額補償分担金・更新料返還請求事件
判例時報2052号86頁,判例タイムズ1281号316頁,金融商事判例1299号56頁,最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中村哲,和久田斉,波多野紀夫
控訴審 H20.11.28大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
16万円の定額補修分担金条項につき,下記のとおり判示した。
建物賃貸借の場合はその使用に伴う物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているから物件の通常損耗の回収は通常賃料の支払を受けることで行われる。 そうすると,原則として,賃借人に通常損耗についての回復義務を負わせることはできない。賃貸人は通常修繕費用にどの程度要するかの情報をもっているが賃 借人はこれらの情報をもっていないので,賃借人がこれらの点について賃貸人と交渉することは難しく定額補修分担金額は賃貸人が一方的に決定している。軽過 失損耗の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情がない限り賃借人に有利とはいえない。分担金額は月額賃料の2.5倍程度で一般的な回復費用に 比べて高額である。これらの事情からは消費者の不利益を負わせるもので,10条により無効である。

◆ H20.06.10大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第5823号損害賠償請求事件
判例タイムズ1290号176頁
裁判官 西岡繁靖

【事案の概要】
自動車販売会社からインターネットオークションで中古車を購入した者が,メーターの巻き戻しによって実際の走行距離が表示の8倍以上であったとして瑕疵担保責任,不法行為責任を追及した事例。現状のまま引き渡し,保証なしとの約定の有効性が争われた。

【判断の内容】
販売業者が,本件契約が業者向け販売であるから,消費者契約でないと主張したのに対し,情報・交渉力の格差が事業に由来することから,消費者と事業者の概 念を区別して消費者契約の定義で用いているのであるから,本件契約が業者向けの価格,内容で締結されたことをもって,消費者契約であることを否定すること はできないとして,消費者契約法の適用を認め,8条1項5号により免責条項を無効として,瑕疵担保責任を認めた。

◆ H20.07.16東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第22625号損害賠償請求事件
金融法務事情1871号51頁,消費者法ニュース78号203頁,国民生活センター消費者問題の判例集
裁判官 澤野芳夫,荻原弘子,長井清明

【事案の概要】
FX業者側のシステムの不具合により直ちに決済できなかったとしても一切賠償責任を負わないとの約款について,8条の趣旨からは,限定的に解釈すべきとした事例

【判断の内容】
① 原告のロスカット・ルールへの期待は合理的で法的保護に値し,被告は有効証拠金額が維持証拠金額を割り込んだ時にロスカット手続に着手する義務を負っていた。
② 被告は不十分なコンピューターシステムしか用意しておらず,そのシステムの不具合により,本件ロスカット時においてカバー取引の注文を出せなかったのであって(①の義務違反),これにより原告が受けた損害につき不法行為又は債務不履行の責任を負う。
③ コンピューターシステムの不具合によるカバー取引の遅延に関する被告の免責約款は,8条1項1号,同条項3号の趣旨に照らし,真に予測不可能な障害や 被告の影響力の及ぶ範囲の外で発生した損害といった被告に帰責性の認められない事態によって顧客に生じた損害について,被告が損害賠償の責任を負わない旨 を規定したものと解するほかなく,本件はこれに該当しない(被告は免責されない)。

◆ H20.07.17亀岡簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成20年(少コ)第3号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 藤野美子

【事案の概要】
保証金35万円から30万円を差し引いて返還する旨の解約引特約が10条により無効とされた事例

【判断の内容】
契約成立の謝礼や新規賃借員募集の費用,空き室損料等は,賃借人が当然に支払わなければならない性質の金員ではないにもかかわらず,その趣旨を明示せずに 解約引という形で支払強要するのは不当であり,また,賃料先払であるとしても,解約引特約により賃料が低額に抑えられたと認めるに足りる証拠はなく,賃貸 借期間が判然としない契約時に固定金額を賃料先払として受領する合理性もなく,本件解約引特約は合理的な趣旨・目的に基づくものとは認められない。解約引 率も約85.7%と高く,本件解約引特約は10条により無効というべきである。

◆ H18.11.27最高裁判決(4)

2010年6月6日 公開

平成16年(受)2117号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3732頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H16.09.10大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
① 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の公序良俗違反該当性。
② 私立医科大学の平成13年度の入学試験に合格し,同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同契約を解除した場合において,同特約は公序良俗に反しないなどとして,授業料等の返還請求が棄却された。
③ 【滝井反対意見】不返還条項は公序良俗には反しないが,追加合格により現に定員割れを起こしていない場合には,信義則上返還を拒むことは許されない。

◆ H18.11.27最高裁判決(5)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1437号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3597頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 中川了滋,滝井繁男,津野修,今井功
控訴審 H17.04.22大阪高裁判決

【事案の概要】
学納金返還請求。入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載があった場合で,入学式の無断欠席した場合,在学契約の解除の意思表示をしたことになるか,なるとしても,その場合の平均的損害が問題となった。

【判断の内容】
1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契 約の解除の意思表示に当たる。
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場 合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。

◆ H18.11.27最高裁判決(6)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1283号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第1審 H16.04.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.30東京高裁判決

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
② 入学手続要項等に4月2日の就学手続日に就学手続を行わなければ入学許可が取り消される旨記載がある大学について,手続を行わなかった者について,4月2日の解除を認め,大学に平均的損害は存しないとして,授業料の返還請求を認めた。

◆ H18.11.27最高裁判決(3)

2010年6月4日 公開

平成18年(受)第1130号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号62頁,判例タイムズ1232号89頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H18.03.23東京高裁判決平成17(ネ)第5282号

【事案の概要】
学納金の返還請求。大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため3月31日までに在学契約を解除することなく入学式に欠席することにより同契約を解除した場合であった。

【判断の内容】
大学の入学試験に合格し,納付済みの授業料等の返還を制限する旨の特約のある在学契約を締結した者が,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられ,入学式に欠席した場合において,同大学が同特約が有効である旨主張することは許されない。

◆ H18.11.27最高裁判決(1)

2010年5月31日 公開

平成17年(受)第1158号不当利得返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3437頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H16.03.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約は有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約。
② 在学契約は,特段の事情がない限り,学生が要項等に定める入学手続の期間内に学生納付金の納付を含む入学手続を完了することによって成立する。双務契約としての在学契約における対価関係は4月1日以降に発生する。
③ 入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情がない限り,学生が当該大学に入学しうる地位を取得するための対価としての性質を有する。
④ 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
⑤ 入学金については,その納付をもって学生は上記地位を取得するから,その後に在学契約が解除されても返還義務を負わない。
⑥ 授業料の不返還特約部分は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
⑦ 9条1号については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には平均的損害を超えて無効であると主張する学生が主張立証責任を負う。
⑧ 4月1日には,学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されるから,それ以前の解除については大学側は織り込み済みと解され,原則として平均席損害は存しない。
⑨ 4月1日以降の解除の場合は,授業料等はそれが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り大学に生ずべき平均的な損害を超えず不返還特約は有効。
⑩ 推薦入学の場合,解除は大学にとって織り込み済みではないので,特段の事情のない限り平均的損害が生じ不返還特約は有効。

◆ H18.11.27最高裁判決(2)

2010年5月31日 公開

平成17年(オ)第886号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号61頁,判例タイムズ1232号82頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
9条1号は,憲法29条に違反しない。

◆ H18.02.28大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(レ)第●号敷金返還請求控訴事件,平成17年(レ)第●号原状回復費用反訴請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,湯浅徳恵
上告審 H18.07.26大阪高裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.03.10右京簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第212号損害賠償請求請求事件
兵庫県弁護士会HP

裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
中古車買取業者が中古車を117万円で買い受けたところ,約2週間後までに接合車であることが判明したとして,代金の返還請求をした。「本契約締結後,売 主の認識の有無に係わらず,契約車両に重大な瑕疵(盗難車,接合車,車台番号改ざん車など)の存在が判明した場合には,買主は本契約を解除することができ る」との条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
①民法570条にいう「隠れた瑕疵」とは,買主が瑕疵のあることを知らず,かつ,知らないことについて過失のない瑕疵をいい,買主に過失がある場合には解除することはできないし,瑕疵の存在を発見したときから1年以内にしか解除権を行使できない。
②本条項は買主が瑕疵の存在を知らなかったことについて過失がある場合も解除でき,解除権の行使期間の定めがないから解除権行使による原状回復請求権の消滅時効(10年と解される)完成までは解除することができることになる。
③したがって,消費者(売主)の瑕疵担保責任を加重する条項であり,民法1条2項の信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するから,10条により同条項は無効である。

◆ H18.03.27福岡簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第60340号敷金等返還請求事件
未登載

【事案の概要】
マンションの居室賃貸借契約で,中途解約をした借主が,敷金及び違約金の返還を求めた。敷引特約(家賃3ヶ月分,15万6000円)及び中途解約違約金特約(家賃1ヶ月分)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認め,違約金特約は有効であるとして違約金については返還請求を認めなかった。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。
② しかし,敷引には合理性がない。
③ 賃貸借期間1年以内の借主による一方的解約は,貸主に不測の損害を与えること,1ヶ月前の予告があったとしても,新たな借り主を見つけるには2ヶ月程度を要することから,本件特約は9条1号,10条には反しない。

◆ H18.04.14松山地裁西条支部決定

2010年5月30日 公開

平成18年(モ)第25号移送申立事件(基本事件平成18年(ワ)第61号不当利得返還請求事件)
兵庫県弁護士会HP
裁判官 中嶋功

【事案の概要】
貸金業者に対し,不当利得返還請求訴訟を提起したところ,「訴訟行為について松山簡易裁判所を以て専属的合意管轄とします。」との条項を根拠に松山簡裁への移送申立をされた。

【判断の内容】
以下の理由から,専属的合意管轄は生じておらず,仮に合意をしたとしても10条違反であり無効となるとした。
①貸金請求とは訴訟物が異なる。
②借りる際に,業者側の違法行為による不当利得返還請求の訴訟について管轄の合意をすることは考えにくく合理的意思解釈に反する。
③約款が業者側の利益を考慮して定型文書で作成され,そのまま署名しなければ借入自体ができなかった。
④業者が全国展開する企業で,法律及び訴訟の理解度や経済力の点で借主とは比較にならないほど優位に立っている。

◆ H18.04.28木津簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第170号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 根本正彦
控訴審 H18.11.08京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。阪神地区においては慣行として存在するのも事実。
② しかし,まだまだ賃貸人,賃借人間においては対等の立場で契約することは困難である。
③ 敷引には合理性がない。

◆ H18.05.19枚方簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(少コ)第89号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 矢野隆

【事案の概要】
建物賃貸借における,保証金の返還請求。保証金45万円の内30万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について,賃貸物件の価値を高めるものではなく,また,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用(例えば不動産 業者の仲介手数料)については有効であるが,それ以外については10条違反により無効であるとしてその部分について返還請求を認めた。
① 民法に,賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の明文がないから,賃借人の義務を加重する条項である。
② 賃貸人側,賃借人側の事情を検討すると,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用については,賃借人に負担させることも合理性があり,消費者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H18.05.24大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第13号敷金返還請求上告事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
控訴審 H17.12.22京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとの原審判断を維持した。
また,仮に合意が成立していたとしても,このような合意は許されないとも付言している。

◆ H18.06.06大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第5号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 堀正博,武部知子,湯浅徳恵
原審 大阪簡裁平成17年(ハ)第70334号

【事案の概要】
建物賃貸借契約における保証金返還請求。保証金35万円の内25万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
敷引特約は特段の合理性,必要性がない限り10条違反により無効であり,本件でも合理性を認められないとした。
 なお,原審では保証金の3割相当額の敷引を有効としていたものを全部無効としたが,借主側の控訴・附帯控訴がなかったため,控訴棄却となっている。

◆ H18.06.12東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第22799号契約金返還請求事件
未登載
裁判官 田中俊行

【事案の概要】
建物建築請負契約を建築開始前に解約し,支払済みの契約金300万円から10万円を差し引いた金額の返還請求をした。「請負代金総額の3分の1または請負人に生じた損害額のどちらか高い方を賠償する」との条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について9条1項に違反し,10万円を超える限度で無効とし,返還請求を認めた。
① 9条1号の「平均的な損害」とは,当該損害賠償額の予定条項において設定された解除の事由,時期等により同一の区分に分類される多数の同種契約事案の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する。
② 「平均的な損害」の立証責任は事業者側にある。
③ 本件条項は,解除の事由,時期を問わず一律に契約金の3分の1以上が平均的損害となるというものであるが,その合理性について立証はなく,本件解除の時期ではむしろ10万円を超えないことが明らか。
④ 民訴法248条による損害額の認定は,損害が生じたことが立証されたがその額を立証するのが困難な場合の規定であり,本件では損害の立証がそもそも10万円を超えない範囲でしかされていないので,適用の前提を欠く。

◆ H18.06.27高知地裁判決

2010年5月30日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
学納金不返還特約は,9条1号,10条,民法90条に反し無効であるとして,学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
社会人特別選抜入学試験を受験しながら年度末になって入学を辞退したからといって,学納金の返還を請求することが信義則に違反するとまではいえない。
入学金は,入学手続事務の諸経費に要する手数料的なものという性質を一部有しているほか,入試合格者ないし入学者が当該大学に入学し得る地位を取得するこ とについての対価(一種の権利金)の面を有するものである。原告は入学手続を完了しており,その後に原告が自己の都合で入学を辞退したとしても被告が入学 金を返還すべき義務は負わない。
本件不返還特約は9条1号に該当するとして,授業料等については返還を認めた。

◆ H18.06.27東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成16年(ワ)第7327号不当利得返還請求事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判例時報1955号49頁,判例タイムズ1251号257頁
裁判官 永野厚郎,西村康一郎,佐野文規

【事案の概要】
学納金の不返還合意は民法651条2項但書の趣旨に反すること,9条1号の平均的損害を超えること,あるいは10条ないし民法90条に該当することから無効であるとして,不当利得に基づき学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を納入することによって,大学との間の在外契約を締結し得る地位を得たものであり,既履行部分の対価たる入学金を保持することが不当利得となる余地はない。
授業料等については,不返還合意が9条1号に違反するとして返還を認めた。

◆ H18.06.28大津地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第701号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 阿多麻子

【事案の概要】
建物賃貸借契約における敷金返還請求。敷引特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約について10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 1条の趣旨からは,10条は,民法の一般条項によっては無効とはならない条項でも,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者の利益が不当に侵害されているものと評価される場合にはこれを無効とするとして消費者の利益を擁護する趣旨。
② したがって,民商法の規定に比べて過大な負担を負わせる条項がある場合には,事業者の側において(1)消費者が法的に負担すべき義務の対価であるこ と,(2)契約締結時までにその旨の情報が提供され,格差が是正され,消費者が契約締結後になって初めて契約締結時に予定していたよりも不利益な状態に 陥ったとはいえないことを立証すれば,10条違反にはならない。
③ 賃料の一部前払い,更新料免除の対価,礼金という性質については,合理性がなく,説明もない。

◆ H18.07.26大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第28号敷金返還請求・原状回復費用反訴請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森野俊彦,大島雅弘
第1審 H18.02.28大阪地裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金 60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.09.08大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ネ)第466号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 渡邉安一,矢延正平,川口泰司
第1審 H18.01.30京都地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払 金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効であ る。

◆ H18.11.08京都地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第37号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 田中義則,阪口彰洋,大橋弘治
第1審 H18.04.28木津簡裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引の目的,敷引金の性質,敷引率が合理的なものであり,かつ,賃借人がこれを十分に理解・認識した上で敷引特約に合意をした場合は,賃借人の利益を一方的に害するということはできない。
② しかし,賃貸人の主張(賃料の一部前払い,契約更新時の更新料免除の対価,賃貸借契約成立の謝礼)は,合理性がない。敷引率も高い(85.7%)。

◆ H17.07.12京都簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(少コ)第184号敷金返還本訴(通常移行),同年(ハ)第10763号原状回復費用反訴請求事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
控訴審 H17.12.22京都地裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決 

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,賃貸人が賃貸の当初における優越的地位を行使して賃借人に過大な義務を設定するものであるから,特約中通常損耗の原状回復費用を賃借人の負担とする部分は民法90条により無効と解すべきであるとし,自然損耗部分についての返還請求を認めた。

◆ H17.07.13大阪高裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ネ)第2721号保険金請求控訴事件
自動車保険ジャーナル1622号3頁
裁判官 竹中省吾,竹中邦夫,矢田廣高
上告審 H17.11.17最高裁上告不受理決定

【事案の概要】
自動車の盗難の損害200万円について保険金請求した。譲渡後名義変更前に盗難にあった事案であり,保険会社は自動車保険約款一般条項5条(免責条項)を主張した。同条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,10条違反ではないとした。
① 本件免責条項は,商法650条の適用を排除したものであるが,自動車保険の特殊性を考慮して定められたもので合理性があり,消費者の利益を一方的に害する内容のものとはいえない。
② 本件免責条項の「譲渡」の意義について,消費者が明確,平易に理解できるように,本件約款の文言の改訂について検討されることが望ましいとは考えられるが,不明確で信義則等に反するとまではいえない。

◆ H17.07.14神戸地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(レ)第109号保証金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1901号87頁,消費者法ニュース65号161頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡泰行,三井教匡,山下隼人
第1審 H16.11.30神戸簡裁判決

【事案の概要】
敷金30万円のうち25万円(83.3%)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約は,民法にない義務を負担させるものであって,民法の適用による場合に比して消費者の義務を加重する条項であるとし,また,信義則に反し消費 者の利益を一方的に害するかどうかについては,敷引特約はさまざまな要素を有するものが渾然一体となったものとの立場(いわゆる渾然一体説)に立ちつつ, 賃貸借契約成立の謝礼(礼金),自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室損料,賃料を低額にすることの代償,といった要素について分析をし,いずれも その合理性を否定し,敷引特約は「賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にある」として,信義則に反し消費者の利益を一 方的に害するものであると判断し,10条に違反し無効であるとし,25万円の返還請求を認めた。

◆ H17.07.20東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第1333号解約精算金請求控訴事件
消費者法ニュース65号163頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 雛形要松,都築弘,中島肇
第1審 H17.02.16東京地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.07.21東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第21104号
LLI
裁判官 杉山正己,瀬戸口壯夫,大畠崇史

【事案の概要】
大学入学を辞退した原告らが入学金・授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,授業料の返還請求を認めた。
① 入学金の法的性質について,それ以外の趣旨を含むとの特段の事情のない限り,学生としての地位を取得する対価であるから,その返還を請求することはできない。
② 授業料について,4月1日以降の入学式前の時点で辞退した原告も含めて,平均的損害が生じたことをうかがわせる証拠はないから,その返還を要しないとする規定は全部無効であり,その返還を請求することができる。

◆ H17.09.07富山簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第48号キャンセル料請求事件
消費者法ニュース65号164頁,66号93頁
裁判官 大西守

【事案の概要】
ペンション経営者がインターネット広告掲載申込契約を締結し13日後にキャンセルをしたところ,約款に基づき70パーセントのキャンセル料を請求された。キャンセル料について合意が成立しているか否かが争われた。
事業者であり消費者契約法の適用がない事案。

【判断の内容】
被告にとって極めて不利益な条項であるにもかかわらず,キャンセル料について十分に説明を行ったと認めるに足りる証拠はなく,被告が書面上承諾したとの外 形事実があることをもって,被告の真摯な承諾があったと認めることはできない,として,合意があったと認められないとし,請求を棄却した。

◆ H17.09.09東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号不当利得返還請求控訴事件
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判時1948号96頁
裁判官 藤山雅行,大須賀綾子,筈井卓矢

【事案の概要】
挙式予定日から1年以上前に結婚式場の予約をし,その数日後に予約を取り消した場合において,予約金10万円の返還を認めない条項は10条,9条1項により無効であるとして,不当利得による返還請求をした。

【判断の内容】
挙式予定日の1年以上前から得べかりし利益を想定することは通常困難であり,仮にこの時点で予約が解除されたとしてもその後1年以上の間に新たな予約が入 ることも十分期待し得る時期にあることも考え合わせると,その後新たな予約が入らないことにより被控訴人が結果的に当初の予定どおりに挙式等が行われたな らば得られたであろう利益を喪失する可能性が絶無ではないとしても,そのような事態はこの時期に平均的なものとして想定し得るものとは認め難いとして,本 件取消料条項は9条1号により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.27京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第2571号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 水上敏

【事案の概要】
敷金20万円余りの返還を求めた。原状回復条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件賃貸借契約が消費者契約法施行後に合意更新されていることから同法の適用を受けるとし,自然損耗分を借主負担と定めた部分を10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.30大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第72号受講料等返還請求控訴事件
消費者法ニュース66号209頁
裁判官 三代川俊一郎,金田洋一,三芳純平
第1審 H17.01.27東大阪簡裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
次の理由から,入学金2万円を除く既払い金25万円の返還請求を認めた。
① 本件受講契約は準委任契約である。
② 不解除条項は10条違反であり無効である。
③ 不返還条項は9条1号の趣旨に反する。
④ 入学金2万円は約定のクーリングオフ期間中申込者の受講枠を確保する対価(権利金)の性質を有する。
⑤ 入学金部分について平均的損害を超えることの立証がない(9条1号の「平均的な損害」の立証責任が消費者にあることを前提)。

◆ H17.10.14枚方簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第181号敷金返還請求事件,第665号同反訴請求事件
消費者法ニュース66号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 淵脇洋

【事案の概要】
敷金25万円の返還請求に対し,敷引特約(敷金25万円,敷引25万円)が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件敷引特約が,賃借人の故意過失によらない損耗までその費用を負わせるものであること,賃借人には敷引特約のない物件を自由に選択できる状況にないのが 現状であること,いわば賃借人の無知を利用して賃貸人の有利な地位に基づき一方的に賃借人に不利な特約として締結されたものであり賃借人の真の自由意思に よったものとはいえず,信義に反する等として,10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.10.18佐世保簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)412号求償金請求事件
未登載
裁判官 大家嘉朗

【事案の概要】
この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになる,併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げられ,提携ローンにより化粧 品と青汁を購入した者に対する,信販会社からの求償金請求に対し,不実告知,不利益事実の不告知等を理由として取消を主張した。

【判断の内容】
①この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになるとの説明について,表示自体が一義的でなく,主観的要素を多分に含むので不実告知にあたらないとした。
②健康食品に医薬品的効能があるなど医薬品等との混同が生ずるような広告,表示は,それ自体事実でないというべきであるとし,化粧品と併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げたことが不実告知にあたるとして取消を認めた。
③契約から約11ヶ月後に取消の意思表示をした点について,誤認に気づいてから起算すればまだ6ヶ月を経過していないとして,信販会社の時効主張を排斥した。
④信販会社からの4条5項の「第三者」にあたるとの主張を排斥して,抗弁の対抗(割賦販売法30条の4)を認めた。

◆ H17.10.21大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第5920号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 瀧華聡之,堀部亮一,芝本昌征

【事案の概要】
ファッションに関する専門学校に入学した原告が,入学申込手続にあたり被告から受講課程の内容が実際とは違っていた点や,卒業生の就職率が100%であると説明を受けた点が不実告知,不利益事実の不告知にあたるとして4条1項1号,2項による在学契約の取消を主張した。
また,入学後に退学をしたことにより,学納金の返還を請求し,不返還条項が9条1号,10条に反するかどうかが争われた。

【判断の内容】
①不実告知,不利益事実の不告知については事実が認定できない。
②本件専門学校の在学契約は無名契約である。
③入学金は,在学契約を締結できる資格を取得し,これを保持しうる地位を取得することに対する対価とし,かかる地位をすでに取得した以上返還を求めることはできない。
④「平均的な損害の額」(9条1号)とは,同一事業者が締結する多数の同種契約事案について,類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいう。
⑤本件では,ひとつながりのカリキュラムの部分について平均的損害が認められるとして,授業料,教育充実費,施設・設備維持費の1カリキュラム分(半年分)を超える部分について,9条1号に違反するとして,返還請求を認めた。
⑥10条違反は否定した。

◆ H17.10.24福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第36号敷金返還等請求控訴事件
未登載
裁判官 野尻純夫,川﨑聡子,森中剛

【事案の概要】
敷金22万5000円他の返還を求めた。入居期間の長短を問わず75%を敷金から差し引くとの敷引条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
敷引について,新たなる賃借人のために必要となる賃貸物件の内装等の補修費用の負担等について,賃貸人と賃借人との間の利害を調整し,無用な紛争を防止す るという一定の合理性があることは否定できないとしつつ,自然損耗部分について賃借人に二重に負担させることになってしまうとし,実際に補修工事費用とし て賃貸人が挙げているものについて目的物の通常の使用に伴う自然損耗を超える損耗の補修に要する費用であると直ちに断定しがたいこと等からは,75%もの 敷引には正当な理由がないとし,前述の一定の合理性があることに鑑みて,敷金の25%を超えて控除するとの部分を10条に反して無効であるとして,その 75%の部分について返還請求を認めた(一部無効)。

◆ H17.11.28明石簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第392号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 神吉正則

【事案の概要】
解約引(敷引)された25万円の返還を求めた。敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,全額の返還請求を認めた。
本件敷引条項は,賃借人に対し賃料以外の金銭的負担を負わせるものであること,敷引が関西地方で長年の慣行になっている,その他,敷引の合理性として主張 する点(謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室補償,賃料を低額にすることの代償)について,いずれも合理性を認めがたいこと等より,本件敷 引特約は10条違反である。

◆ H17.11.29東京簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求(本訴,通常手続移行),同年(ハ)第19941号損害賠償請求(反訴)
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 行田豊

【事案の概要】
敷金返還請求。自然損耗部分の修繕費用を借主の負担とする条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件原状回復条項が10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは,借主に二重の負担を強いることになり,信義則に反する。
② 本件原状回復条項は,自然損耗等に係る原状回復についてどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,借主に適切な情報が提供されておらず,貸主 が汚損,破損,あるいは回復費用を要すると判断した場合には,借主に関与の余地なく原状回復費用が発生する態様となっている。このように,借主に必要な情 報が与えられず,自己に不利益であることが認識できないままされた合意は, 借主に一方的に不利益であり,この意味でも信義則に反するといえる。

◆ H17.12.06大阪簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第70334号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 堤秀起

【事案の概要】
敷金35万円の返還を求めた。25万円を敷金から差し引くとの敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,24万5000円の返還請求を認めた。
① 敷引について,賃貸借契約成立の謝礼,更新料の免除の対価,空室損料の要素に関しては敷引金の負担を強いることに正当な理由はない。
② 賃料を低額にすることの代償との主張について,関西地方での敷引が長年の慣習となっており慣習自体不合理なものであるとは言えず,関西地方では敷引があることを前提に賃料が低く設定されていると見ることができる。
③ 敷引特約は,保証金の額,敷引金額や控除割合,契約期間等を総合考慮して,敷引金の額が適正であればその限度で有効であり,適正額を超える部分についてのみ10条違反となる。
④ 本件では,保証金の約71%(賃料の約4ヶ月分)を控除していること,契約期間が1年との事情から,適正な敷引金はせいぜい保証金の3割の10万5000円である。

◆ H17.12.22京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号敷金返還請求控訴事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとして,敷金返還請求を認めた。

◆ H18.01.30京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第784号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 衣斐瑞穂
控訴審 H18.09.08大阪高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効である。

◆ H18.02.28東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4805号授業料返還請求控訴事件
未登載
裁判官 西田美昭,犬飼眞二,小池喜彦

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
役務提供事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者から中途解約がなされ,その受領済みの前払金の中から既提供役務の対価に相当する部分 を控除して返還するという場合において,前払金の収受に際して役務の対価に単価が定められているときは,その単価に従って既提供役務の対価を計算するのが 精算の原則となるものと解すべきであるとして,本約款規定が特定商取引法49条2項1号の趣旨に反し無効であるとして,精算金の返還請求を認めた。

◆ H17.02.24東京高裁判決(1)

2010年5月27日 公開

未登載
第1審 H16.03.22東京地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。4月22日に辞退を申し出た者については,授業料の返還義務を否定した。

◆ H17.02.24東京高裁判決(2)

2010年5月27日 公開

東京高裁平成15年(ネ)第6002号
未登載
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じ た。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し た。一般入試以外の場合には,当該学部・学科を第1志望とすることが出願資格であり,学納金等の返還を求めることは信義則違反とし,返還請求を認めなかっ た。

◆ H17.03.01千葉簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(少コ)第77号敷金等返還請求事件
消費者法ニュース63号97頁
裁判官 伊藤みさ子

【事案の概要】
敷金等の返還請求に対し,賃貸人が,賃貸借契約書に,賃借人が原状回復をし賃貸人がその原状回復を承認した時を明け渡し日時とする旨,及び,前記承認まで賃借人は賃料の倍額相当の損害金を支払う義務がある旨の条項があることを主張した。

【判断の内容】
社会一般に通常行われている賃貸借契約に比し賃借人に特に義務を負担させる条項が有効であるためには,賃借人に対しその義務の内容について説明がなされ て,賃借人がその義務を十分に理解し,自由な意思に基づいて同意したことが必要であるとし,これを認めるに足る証拠はないとして,同条項について賃借人の 意思を欠き無効であるとして,返還請求を認めた。また,原状回復条項について,自然損耗についてまで賃借人に負担させるものと定めたものではないとして, 適用を制限した。

◆ H17.03.10東京高裁判決

2010年5月27日 公開

未登載
第一審 H16.03.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち 4月1日以降に辞退を申し出た者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H17.03.25佐野簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ハ)第150号敷金返還等請求事件
特優賃住宅敷金返還訴訟(HP)
裁判官 畑山明則

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,自然損耗部分も賃借人の負担とするという原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,自然損耗部分については賃貸人の負担とするのが合理的意思であり,これに反する内容で合意したとの特段の事情が窺われないの で,賃借人の意思を欠き無効とした。また,消費者契約法施行前の契約であっても,施行後に更新されている場合には同法の適用があるとし,本件原状回復特約 は10条により無効であるから,いずれにせよ自然損耗部分についての返還請求を認めるべきとした。

◆ H17.03.25京都地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第1622号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 楠本新

【事案の概要】
入学金35万円,運営協力金35万円の合計70万円の学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件納付金(入学金,運営協力金)の法的性質について,募集要項と過去5年間の決算内容を検討し,結局学校は本件納付金を経常的な運営費として取り扱って いることが明らかとし,入学者に負担させるべきであり,入学辞退者に負担させるには特段の事情が必要であるとして,入学辞退者が生ずることにより空きが増 えることは特段の事情には当たらないとして,10条により不返還条項を無効とした。

◆ H17.03.30東京高裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ネ)第3109号不当利得返還請求事件
未登載
第1審 H16.04.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。
② 入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。
③ 原審の平均的損害額であることの主張立証責任は事業者が負うという部分は削除され,消費者にあるとされた。
④ 消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H17.04.20大阪地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第10347号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース64号213頁
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
敷金の80%(40万円)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約の趣旨を通常損耗部分の補修費に充てるものであるとして,敷金の額,敷引の額,賃料額,賃貸物件の広さ,賃貸借契約期間等を総合考慮して,敷 引額が適正額の範囲内では本件敷引特約は有効とし,超える部分は無効として,本件では2割(10万円)の敷引は有効とした。

◆ H17.04.28横浜地裁判決

2010年5月27日 公開

平成14年(ワ)第3573号,平成15年(ワ)第1179号,第3452号不当利得返還請求事件
判例時報1903号111頁,金融商事判例1225号41頁
裁判官 河邉義典,太田雅之,小林元二

【事案の概要】
学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の法的性質について,「学生としての地位」の対価(推薦入学の場合は推薦合格の対価としての性質も併有)とし,現実にその地位を取得するのは4月1 日であるから,それ以前に入学を辞退した場合には返還すべきとし,不返還条項については,平均的損害を超える部分について返還すべきとした。
平均的損害の主張立証責任は原告にあるとしつつ,立証が困難であることから,民事訴訟法248条により損害を認定した(入学事務手続のための費用として徴収している『諸経費』と同等額と認定)。
授業料については,返還すべきとした。

◆ H17.06.24盛岡地裁遠野支部決定

2010年5月27日 公開

平成17年(ワ)第12号不当利得返還等事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 神山千之

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について専属的合意管轄条項に基づき移送の申立がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして移送しないように求めた。

【判断の内容】
本件専属的合意管轄条項は10条により無効とし,貸金業者の移送申立を一部却下した。

◆ H17.01.27東大阪簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第608号受講料等返還請求事件
消費者法ニュース63号137頁
裁判官 中島嘉昭
控訴審 H17.09.30大阪地裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
「一度ご入金頂いた費用は,ご自身のご都合による返金はできません。」という不返還条項は,民法651条1項の解除権を排除するもので,消費者の権利を制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるから,消費者契約法10条により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.01.28大阪高裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ネ)第2217号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 柳田幸三,磯尾正,金子修
原審 H16.06.11京都地裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H17.01.31大阪高裁決定

2010年5月25日 公開

未登載
抗告審 H16.09.15大阪地裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていた ことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条 項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H17.02.03東京簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第11333号貸金請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 山本正名

【事案の概要】
約定利息を年29%とする貸金業者の貸金返還請求において,契約書面に記載された「元金又は利息の支払いを遅滞したとき,(略)催告の手続を要せずして債 務者は期限の利益を失い直ちに元利金を一括して支払います。」との期限の利益喪失条項との関係で,貸金業規制法43条1項の適用の有無が争われた。

【判断の内容】
本件期限の利益喪失条項を記載した契約書面は,信義則上,もはや例外規定たる貸金業法43条1項の適用の特典は受けられず,本則規定の利息制限法が適用される。
資金需要者(債務者)も広い意味で消費者であること等も考慮する必要があり,かかる観点からは,事業者には契約締結に必要かつ正確な情報の提供と説明義務 が求められ,消費者契約法4条では,不実告知,不利益事実の不告知等により消費者が誤認して契約を締結した場合契約の取消ができるとされているのであり, 金銭消費貸借契約においてもその法の精神は,信義則の適用として及ぼされなければならない。貸金業者には,信義則上,債務者の利益のために,必要かつ正確 な情報を提供する義務があり,重要事項につき事実と異なる不正確な内容を記載したり,債務者の利益を害する契約条件を記載した場合には,貸金業法43条1 項の適用は受けられない。本件の期限の利益喪失条項は,実際の効力以上の無効な内容が表記された不適正,不正確な内容であり,債務者の誤解を招き,債務者 にとって不利益な条項と認められるとし,本件契約書面は貸金業法17条の要件を充さず,したがって,貸金業法43条1項の適用はないものとして,利息制限 法による残債務のみの請求を認めた。

◆ H17.02.16東京地裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ワ)第25621号解約精算金請求事件
最高裁HP,判例時報1893号48頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 水野邦夫
控訴審 H17.07.20東京高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.02.17堺簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第2107号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 小林七六

【事案の概要】
敷金の約83%を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
敷引特約は10条により無効とし,全額返還を命じた。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(1)

2010年5月24日 公開

未登載
原審 H15.11.27京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(2)

2010年5月24日 公開

未登載
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以降間もない期間内(遅くとも入学式以前)に在学契約を解除した場合においては,特段の事情がない限り,大学には具体的な損害(平均的損害)は発生しないとして,授業料について返還を命じた。

◆ H16.10.22大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第295号学納金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行前に在学契約を締結した原告を含めて,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 4月1日以降間もない時期(遅くとも入学式以前)に在学契約が解除された場合には,実質的には4月1日以より前の入学辞退と異なるところはなく,特段 の事情がない限り,平均的損害は存在しないと推認するのが相当であるところ,この推認を覆すに足りる特段の事情は認められず,授業料不返還特約は9条1号 に反し無効である。
③ 授業料不返還特約は暴利行為の要件を満たし,公序良俗に反し無効である。

◆ H16.11.12福岡高裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ネ)第752号不当利得返還等請求控訴事件
最高裁HP,判例タイムズ1187号231頁
裁判官 簑田孝行,駒谷孝雄,岸和田羊一

【事案の概要】
手形貸付を反復継続して受ける方法で長期間にわたって高利での借入をしていた者からの貸金業者に対する不当利得返還請求。

【判断の内容】
過払い金の充当方法について,当事者間における情報の質及び量並びに交渉力の格差という1条の趣旨をあげて借主にもっとも容易に検算ができる後払計算方式を借主が指定充当したものと推認した。

◆ H16.11.18大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第13395号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 中本敏嗣

【事案の概要】
コンピュータ専門学校に入学した後,2学年の授業料の内金を支払ったが,その後2学年に進級する前に退学したとして,不当利得返還請求権に基づき支払った内金の返還を求めた。

【判断の内容】
①一般に在学契約は,準委任契約の性質を有しつつも,施設利用契約等の性質を併せ持つ複合的な無名契約であり,学生はいつでも将来に向けて在学契約を解約できる。
②「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は,学納金不返還特約の効力を否定する消費者の側にある。
③本件では,在学契約の解除が年度を超えた6月21日であると認定しつつ,退学の意思を表明したのが2月10日であり,2学年次の初めから休学扱いとさ れ,2学年次の授業を全く受けていないこと,学校側が入学定員を設定している以上,定員割れがあるかどうかにかかわらず,それだけの設備は当然に備えてお かなければならないことなどから,退学者が出ても学校側に損害が生じたとは言い難いとし,既に納付した授業料相当額全額が平均的な損害を超えるものとし て,全額の返還請求を認めた。

◆ H16.11.18大津簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第317号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 清野住和

【事案の概要】
専門学校合格後,入学式前に入学を辞退した受験生が,納付した入学金及び運営協力金のうち運営協力金の返還を求めた。

【判断の内容】
①運営協力金は,入学後の教育施設の利用及び教育的役務の享受に対する対価であり,入学金のように入学し得る地位を保持することの対価としての性質を有するものではない。
②損害賠償義務の一部について無効という利益を受ける消費者が「平均的な損害の額を超える」ことの立証責任を負う。
③在学契約を完全に履行した場合に得られる利益額が平均的損害に含まれるとする学校側の主張を斥け,被告の主張以外に損害及び損害額を認め得る証拠は存在しないとして,運営協力金全額の返還を命じた。

◆ H16.11.19佐世保簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第7号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 久保正志

【事案の概要】
敷金として差し入れた家賃4ヶ月分の金員のうち,3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
賃貸借契約締結時に十分な説明のないまま敷金4ヶ月分のうち一律に3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であり,また,建物につき自然損耗を超えた損害についての原状回復費用を認定する証拠もないとして,敷引特約にかかる金員全額について返還を命じた。

◆ H16.11.30大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

未登載

【事案の概要】
「保証金」として差し入れた家賃5.3ヶ月分の金員のうち,4.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
建物賃貸借契約に伴う保証金の返還について,敷引特約あるいは類似の契約に関する民法,商法上その他の法規上の任意規定はなく,また,賃借人の転居は自己 都合であることなどから敷引特約は信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものということはできないとして,返還を否定した。

◆ H16.11.30神戸簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第10756号保証金返還請求事件
未登載
控訴審 H17.07.14神戸地裁判決

【事案の概要】
賃貸借契約終了時には賃借人から預託を受けた保証金から一定額を控除した残額を返還する約束をしたが,賃借人は,その約束は10条により無効として保証金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は10条に違反しないとして,請求を棄却した。

◆ H16.12.17大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第1308号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1894号19頁,消費者法ニュース63号92頁
裁判官 若林諒,三木昌之,島村雅之
第1審 H16.03.16京都地裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20 万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
原審と同じ
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。

◆ H16.12.20東京地裁判決

2010年5月24日 公開

平成14年(ワ)第20658号,第24250号,第28684号不当利得返還請求事件
判例タイムズ1194号184頁
裁判官 野山宏,酒井正史,出口亜衣子

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。
(施行後の契約について)
② 入学金は入学資格を取得するための権利金又は予約完結権の対価の性質を有するとして返還義務を否定した。
③ 授業料等入学金以外の学納金については,学校側が最終的な入学者数が定員を若干上回るように補欠・繰上含めて合格者数を定め,毎年最終の入学者数とこ れに伴う授業料収入をある程度の幅をもって予測し,これに必要な人的・物的手当を準備すると共に,人件費,物件費の支出見込額を計上していること,入学手 続完了後の入学辞退者の全体に占める比率も小さいこと等から,予測した入学者数の加減を下回ることは通常考えられず,学校側に生じる平均的な損害はないも のとして,9条1号により返還を認めた。

◆ H17.01.12大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第10259号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 岡原剛

【事案の概要】
通学定期乗車券の不正使用について,旅客鉄道規則の規定に基づき,乗車区間の往復の旅客運賃を基準に有効期限の翌日から不正使用が発覚した日までの全期間を乗じた運賃に2倍の増運賃を加算した損害賠償金等の支払いを求めた。

【判断の内容】
旅客鉄道規則の規定が増運賃を定めた趣旨は,不正使用に対する違約罰であり,多数の案件を画一的に取り扱う普通取引約款の性質上,定型的に不正使用に対す る徴収金を定める規定の一般的合理性は是認でき,規定自体が消費者契約法10条に違反するとの主張は採用できない。しかしながら,旅客鉄道規則の規定は不 正使用の蓋然性の高いことが前提となっており,不正使用の蓋然性が認められない期間にまで機械的に適用して増運賃を請求することは10条の法意に照らして 許されないとして適用を制限した。

◆ H16.07.28大阪地裁判決

2010年5月23日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.08.25大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H15.07.16京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.03大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H16.01.20大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.08東京地裁判決

2010年5月23日 公開

未登載

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。施行後の契約については,入学金以外の学納金は,9条1号により返金を認めたが,入学金は入学しうる地位の対価として返還義務を否定した。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(1)

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3707号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁,消費者法ニュース62号139頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,神山隆一
上告審 H18.11.27最高裁判決(4)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(2)

2010年5月23日 公開

平成16年(ネ)第21号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,大島雅弘
上告審 H18.11.27最高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.15大阪地裁決定

2010年5月23日 公開

未登載
再抗告審 H17.01.31大阪高裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていたことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H16.07.13大阪高裁判決

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.13東京地裁判決

2010年5月22日 公開

平成15年(ワ)第24336号損害賠償請求事件
消費者法ニュース61号158頁,国セン暮らしの判例集HP2004年11月
裁判官 原敏雄

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
特定商取引法49条2項の規定の趣旨や勧誘事情からすると,約款により,実際に提供されていないレッスンポイントを有効期間の経過等を理由に消化済みのものとみなして精算することは許されない(但し,精算金全額を供託したため,請求棄却となった。)

◆ H16.07.15京都地裁判決

2010年5月22日 公開

平成16年(ワ)第750号不当利得金請求事件
未登載
裁判官 山下寛

【事案の概要】
建物賃貸借契約の解約に際し,賃借人が賃貸人に保証金全額の返還を求めた事案で,賃貸人の事業者性や敷引特約の不当性が争われた。

【判断の内容】
自ら居住目的で購入した建物を転居を余儀なくされたため賃貸したもので反復継続性を欠くとして,賃貸人の「事業者」性(2条2項)を否定した。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(1)

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H16.01.21大阪地裁判決

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
原審と同じ
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(2)

2010年5月22日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.28千葉地裁判決

2010年5月22日 公開

平成14年(ワ)第1550号違約金等請求事件
消費者法ニュース65号170頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子

【事案の概要】
建築業者が,建物工事請負契約を契約直後に解除した消費者に対し,「請負代金の20%に相当する額の違約金を支払う」との契約条項に基づき違約金の支払いを求めた。

【判断の内容】
① 9条1号の「平均的な損害」の主張立証責任は事業者側にある。
② 建築業者が契約条項があることのみを主張立証し,他に平均的損害につき主張立証しない以上,平均的損害は既に支出した費用相当の損害を超えないとして,当該金額を超える部分の違約金条項は9条1号により無効である。

◆ H16.06.29大阪地裁判決

2010年5月21日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.05東京簡裁判決

2010年5月21日 公開

平成16年(少コ)第325号敷金返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 松田雅人

【事案の概要】
建物賃貸借契約を締結した賃借人が,当該賃貸借契約の始期に先立ち,賃貸人に対し,賃料・共益費1ヶ月分や敷金及び礼金等の預入金を支払うとともに当該建 物の補修を求めていたが,賃貸人がこれに応じなかったことから当該賃貸借契約の解約を申し入れ当該預入金の返還を求めたところ,解約の要件及びいったん支 払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定があることから返還を拒絶された。

【判断の内容】
賃借人の都合により解約するときには解約日の3ヶ月前に書面により賃貸人に解約届けを提出しなければならず,これに従った解約をしない場合には賃料・共益 費合計額の6ヶ月分を賃貸人に保証する旨の約定及びいったん支払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定は,公の秩序に関するものではないが, 著しく原告の権利を制限し,又は原告の義務を加重する条項であり10条の趣旨に照らし無効とした。

◆ H14.03.25東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(レ)第12号営業保証料請求控訴事件
判例タイムズ1117号289頁,1149号73頁,金融商事判例1152号36頁,私法判例リマークス27号38頁,NBL753号72頁
裁判官 難波孝一,足立正佳,笹川ユキコ
上告

【事案の概要】
パーティーの予約を解約すると営業保証料として一律1人当たり5,229円徴収すると定めた規約は,「平均的損害」を超える請求であるとして,消費者が,平均的な損害を超える請求を不服と主張した。

【判断の内容】
① 「平均的損害」は,契約の類型毎に合理的な算出根拠に基づき算出された平均値であり,解除の事由,時期の他,当該契約の特殊性,逸失利益,準備費用・ 利益率等の損害の内容,契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らして判断するのが相当,とした。
② その上で,民事訴訟法248条を適用して「平均的損害」を認定した。

◆ H14.07.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第9030号損害賠償請求事件
最高裁HP(別紙略)
,判例タイムズ1114号73頁,金融商事判例1162号32頁,NBL761号77頁,消費者法ニュース57号
裁判官 曳野久男
確定

【事案の概要】
中古車販売の解約において車両価格の15%の損害賠償金と作業実費を請求するとの条項に基づき,販売会社が支払いを求めて提訴したのに対し,消費者が,本件では「平均的な損害」が発生していないと主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 注文から2日後の撤回であること等から損害が発生しうるものとは認められないとして販売会社の請求を棄却した。

◆ H14.12.12広島高裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ネ)第232号 貸金等請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 竹中省吾,廣永伸行,河野清孝

【事案の概要】
貸金請求に対し,債権保全を必要とする相当の事由があるときには,貴行の請求によって貴行に対するいっさいの債務の期限の利益を失い,直ちに債務を弁済しますという約款が,10条の直接適用又は同条の準用ないし類推適用により無効と主張した。

【判断の内容】
当事者において債務者の期限の利益喪失にかかる合意をすることは契約自由の原則上有効であるというべきであるから(最高裁判所昭和39年(オ)第155号 同45年6月24日判決・民集24巻6号587頁参照),消費者契約法の趣旨や民法1条2項に照らしても,本件約款の効力を否定することはできないものと いうべきであるとして,排斥した。(傍論)

◆ H15.03.26さいたま地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第2347号違約金請求事件
金融商事判例1179号58頁,私法判例リマークス29号50頁
裁判官 豊田建夫,松田浩養,菱山泰男
確定

【事案の概要】
消費者が,LPガスの切り替え工事,ボンベ交換の契約後1年未満で販売会社を変更した場合には,88,000円の違約金を支払う旨の違約金条項は,9条1号により無効であると主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 本件においては,平均的な損害について事業者から具体的な主張立証がない以上,「平均的な損害」やそれを超える部分を認定することは相当ではないとし,88,000円の返金を命じた。

◆ H15.04.22東大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第234号損害賠償請求事件
消費者法ニュース56号148頁
控訴審 H15.09.26大阪地裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,消費者が,売買代金の返還を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,1条及び10条に照らして無効であるとして消費者からの請求を全面的に認めた。

◆ H15.07.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1789号学納金返還請求事件,平成14年(ワ)第1832号入学金返還請求事件,平成14年(ワ)第2642号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1825号46頁,消費者法ニュース56号165・167頁
裁判官 水上敏,福井美枝,尾河吉久
控訴審 H16.08.25大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学納金の法的性格について,特段の事情がない限り,その名目にかかわらず,広い意味ではすべて大学等が提供する狭義の教育活動その他の役務,施設利用 の対価であるとし,そのうち,入学金の法的性格について,学生としての地位を取得するについて一括して支払われるべき金銭であって入学に伴って必要な学校 側の手続き及び準備のための諸経費に要する手数料の性格を併せ有するとした。
② 「平均的な損害の額」(9条1号)の主張立証責任は事業者が負うとした。
③ 在学契約の始期となっている4月1日以降に入学を辞退した者については,学生としての身分を取得した以上,大学は入学金に対応する契約上の義務を履行 済であるとして,入学金の返還は認めず,それ以外の学納金の返還を認めた。4月1日より前に入学を辞退した者については入学金と授業料の返還を命じた。い ずれも,平均的損害の主張立証が不十分,またはないとして,学納金不返還特約全体が無効とした。

◆ H17.08.18郡山簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第2248号授業料請求事件
未登載
裁判官 坂井和雄

【事案の概要】
高校を卒業した浪人生が予備校に入学後2,3日でやめたところ,予備校から授業料等不返還特約に基づき授業料等70万5000円の支払を求められた(まだ支払っていなかった)事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の主張立証責任は事業者が負う。
② 本件では,平均的損害の立証がなされたとはいえない。
として,9条1号により予備校の請求を棄却した。

◆ H15.09.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9615号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1838号104頁,判例タイムズ1143号276頁
裁判官 中村次,宮武康,藪崇司
控訴審 H16.5.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例であり,不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 入学金は,大学に入学しうる地位ないし資格の対価(一種の権利金)としての性質を有する。いったん地位を取得した以上返還する義務はない。
② その他の学納金については,本件大学が定員100名で,ほぼ毎年正規合格者のうち実際に入学する者が30%未満であり,学納金納付後に入学を辞退する 者が20名以上いること,欠員補充のため繰り上げ合格させた者で納付後に辞退する者もいること,例年3月30日ころまで10回程度も繰り上げ合格を実施し ていること等から,欠員補充が困難となる一定時期以降,学納金不返還によって欠員が生じること及び欠員が生じた場合に発生する損害を可及的に回避しようと 試みることは,全く不合理とは言い切れず,いまだ公序良俗に反するとまでは言えないとして,不返還条項を有効とした。

◆ H15.09.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第178号損害賠償請求控訴事件
消費者法ニュース57号157頁
裁判官 谷口幸博,阪口彰洋,辻井由雅
原審 H15.4.22東大阪簡裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,売主の瑕疵担保責任に基づき売買代金,葬儀費用等の賠償を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,そもそも売主の瑕疵担保責任を排除するものではないとして,同条項により瑕疵担保責任免除の合意があったとの売主の主張を排斥し,瑕疵担保責任を全面的に認めた。

◆ H15.10.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6374号,第9624号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1148号289頁,判例時報1838号104頁,国セン暮らしの判例集HP2004年4月
裁判官 佐賀義史,永谷幸恵,神原浩
控訴審 H16.05.19大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H15.10.16大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6377号学納金返還請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号212頁
裁判官 田中俊次,朝倉佳秀,小川紀代子

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約類似の無名契約とした。
② 在学契約が消費者契約となることについて,1条の趣旨(交渉力の格差からの消費者の保護)が妥当することを指摘した。
③ 入学金について,入学し得る地位を取得することの対価であり,入学事務手続等の対価たる性格をも有するとして返還義務を否定した。
④ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者にあるとした。

◆ H15.10.16大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(少コ)第261号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 原司

【事案の概要】
6ヶ月間入居した物件を解約したところ,本件賃貸借契約の特約に基づき,敷金40万円のうち30万円を差し引かれた賃借人が,敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
入居の長短にかかわらず一律に保証金を差し引くこととなる敷引特約は,民法等他の関連法規の適用による場合に比し,消費者の利益を一方的に害する条項であるといえ,10条により無効であるとし,敷金の返還を命じた。

◆ H15.10.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9600号学納金返還請求事件
判例タイムズ1148号214頁
裁判官 塚本伊平,金子隆雄,小山恵一郎

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び制服代金等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,学生が被告に対して,教育の提供等という事務を委任することを本質的要素とする有償双務契約であり無名契約であるとした。
② 入学金について,その入学手続を完了した時点において,被告学校に入学できることとなった資格ないし地位の対価として支払われるもので,いわば権利金的性質を有するものとして,返還義務を否定した。
③ 制服代金について,在学契約と制服の売買契約とは別個独立の契約であり,独立の解除事由が主張されていないとして,返還を認めなかった。

◆ H15.10.23東京地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20642号,23679号,24245号,平成15年(ワ)第1738号各不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1846号29頁
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
③ 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
④ 大学が2条2項の「法人」にあたるかについて,情報の質及び量並びに交渉力に格差のある大量的契約の当事者については公益性を問うことなく規制の対象とするのが同法の趣旨であると指摘し,法人に含まれるとした。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は事業者側にあるとした。
⑥ 授業料を返還しないとの特約について,4月1日より前に入学を辞退した者について,9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H15.10.23東京地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第22807号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士

【事案の概要】
私立中学入学手続後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。学納金不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
③ 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
④ 授業料の不返還合意は,在学契約を締結した受験生の窮迫・軽率・無経験などに乗じて,はなはだしく不相当な財産的給付を約束させる行為に該当すると認 められる場合に限り公序良俗に反するものとして無効になると解すべきであるとし,本件不返還合意については公序良俗に反しないとして返還義務を否定した。

◆ H15.10.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9603号学納金返還請求事件
判例タイムズ1147号213頁
裁判官 森宏司,横山巌,三輪睦
控訴審 H16.05.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.10.30東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
納入した留学斡旋費用の不返還特約の無効を主張し,納入した50万円の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は,9条1号により「平均的な損害の額」を超える部分は無効となると判示した。その上で損害額を民事訴訟法248条に基づき10万円とした。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9633号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
公募推薦入試方式及び外国人留学生編入学・転入学試験利用方式による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任に ついて,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた

◆ H15.11.07大阪地裁判決(3)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9608号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①入学金は「入学資格を得た対価」であり,反対給付は既に付与されており,②授業料等については,不返還特約は公序良俗に違反しないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.11.10東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第10908号授業料返還等請求事件
判例時報1845号78頁,判例評論547号14頁,判例タイムズ1164号153頁,消費者法ニュース61号161頁,NBL785号72頁
裁判官 齋木教朗

【事案の概要】
大学医学部専門の学習塾において講習を受けていた受講生が,申し込んでいた同塾の①冬期講習を冬期講習開始前に,②年間模擬試験を中途で,それぞれ解約して,冬期講習受講料全額と模擬試験の未実施分受講料の返還を求めた。塾側は,受講契約を解除できないとの合意が成立しており解除は認められないなどと主張した。

【判断の内容】
契約の一部について,契約解除を制限する特約の成立を否定した上で,特約の成立部分について,実質的に受講料の全額を違約金として没収するに等しく,信義則に反する等として,法10条により無効であるとして,受講料の返還請求を認めた。

◆ H15.11.27京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1815号,第2661号,平成15年(ワ)第990号学納金返還請求事件
最高裁HP

裁判官 八木良一,飯野里朗,財賀理行
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.13大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(2)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.01大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.11大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日に入学を辞退しており,前納金の返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6376号,9605号,9628号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,相澤聡
控訴審 H16.10.22大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行後に在学契約を締結した原告のうち,3月31日までに入学を辞退した者について,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 授業料等の入学金以外の学納金は教育役務の対価である。
③ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にある。
④ 4月1日が到来するまでになされた入学辞退について大学に平均的損害はなく,授業料不返還特約は9条1号に反して無効である。しかし,4月1日以降の入学辞退については特約に係る学納金の額が平均的損害を超えるものは認められないから同条には反しない。
⑤ 授業料不返還特約は信義則違反とまで言えず10条無効にならない。また公序良俗にも反しない。

◆ H15.12.24京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1814号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 山下寛,鈴木謙也,梶浦義嗣

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.24神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1409号,1717号,2168号各学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 田中澄夫,大藪和男,三宅知三郎

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日までに退学願いの提出又はこれに代替しうる客観的に明確な方法で通知したことの主張立証がなく,4月1日の到来によって授業料等の返還を求めうる地位を失ったとして,返還義務を否定した。
また,入学金については「入学し得る地位を得たことの対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6375号等学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 角隆博,井上直哉,長田雅之

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以前に入学を辞退した者に対して授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.08大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.14神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.20大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.09.03大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.21大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

判例MASTERⅡ
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.01.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の返還については否定。授業料等についても,学校年度の開始(4月1日)後に契約を解除した場合には,不返還特約は9条1号及び10条によっても無効ではないとし,返還を否定した。

◆ H16.02.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.05東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第28402号求償金請求事件
判例タイムズ1153号277頁,金融法務事情1717号76頁
控訴審 H16.05.26東京高裁判決

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。

◆ H16.02.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.13大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金及び授業料とも在学契約に伴う大学の種々の義務に対する対価として同じ性質であることを前提に,授業料を返還しないことは9条1号にいう平均的な損 害の額を超える部分に該当するとして返還を命じたが,入学金は平均的な損害の額を超える部分には該当しないとして返還義務を否定した。

◆ H16.02.18岡山地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1058号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 小野木等,政岡克俊,永野公規

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
得べかりし利益は,9条1号の平均的損害には含まれない。本件特約のうち,授業料を返還しない部分は9条1号により無効であるとして返還を命じ,入学金に ついては「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し,入学金の返還を認めない部分は,10条にも民法90条にも該当しないとした。

◆ H16.02.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9604号,10840号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,入学金のみを支払った者は入学金を,入学金及び初年度授業料等を支払った者はこれら双方の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料等を納めた者の退学は入学式(4月5日)及び学科ガイダンス(4月8日)を受けた後の4月8日であったが,授業料等を返還しないとの特約は9条1号 に該当する条項であり,被告には平均的損害は認められず9条1号により無効であるとして全額の返還を認め,入学金については「入学しうる地位の対価」とし て返還義務を否定した。

◆ H16.03.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6380号,9634号学納金返還請求事件,平成15年(ワ)第434号学納金返還請求事件
消費者法ニュース60号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡寛,小堀悟,小川暁

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は在学契約申込み資格を保持し得る権利取得の対価及び入学手続事務に関する諸費用に充当されるもの。所定の書類を入学式以前の期日までに提出していなかったり,入学式欠席で何の連絡もしていない者はこれらによって在学契約を黙示的に解除したものである。
退学については保証人との連署で退学届を提出する旨の学則があっても民法の準委任規定の趣旨等に照らして契約関係からの離脱の自由を制約することはできないから,この学則は障害となるものではなく解除は有効。
学友会費等は代理徴収だから,返還請求は学友会等にすべきである。公募推薦入学試験についても入学辞退による不当利得返還請求権をあらかじめ,放棄するま での意思を認めることはできない。平均的損害の立証責任は消費者にある。この損害は民法651条2項に基づく損害賠償であるから解除が不利益な時期になさ れた結果の損害を指す。
3月31日までに解除した場合,被告には損害はなく,4月1日以降の解除は春学期の授業料等相当額の限りで保護すべき利益がある。
なお,平均的損害については他の同種大学における前期(春学期)授業料の平均値について原告が立証していないから,被告大学等の初年度春学期の授業料等の 額をもって平均的損害と解するほかない。以上のことより,授業料等の返還については,3月31日までに解除した者については,返還しない旨の特約は9条1 号により無効であるとして返還を命じ,4月1日以降の入学辞退者については,春学期授業料等の返還を否定し,入学金については返還義務を否定。

◆ H16.03.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第162号敷金返還請求事件,第1214号損害賠償請求事件,第2075号損害賠償請求反訴事件
最高裁HP兵庫県弁護士会HP国セン暮らしの判例集HP2004年6月
裁判官 田中義則
控訴審 H16.12.17大阪高裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。消費者契約法に基づき自然損耗分を借主負担と定めた特約自体を無効とした全国で初めての判決である。

◆ H16.03.22大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9601号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 西川知一郎,木太伸広,山本陽一

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した合格者が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を払った時点で双方の間に在学契約関係を成立させることを内容とする法律関係が成立しており,所定の期限までにその他の学納金を納入するなど所定の 手続を完了することにより,在学関係を成立させることができる地位を合格者は得ていたとし,入学金は入学に向けての人的,物的設備の整備や事務手続き等の 経費を賄うものとしての性格に加えて,入学しうる地位の対価であるとして返還義務を否定した。

◆ H16.03.22東京地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6381号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
大学合格後,3月10日ごろ学納金返還システムの問い合わせをし,4月1日入学式を欠席した合格者が3月10日または遅くとも4月1日に入学を辞退したことにより,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日の入学式欠席について大学からその理由の確認があり,この時に入学辞退の意思表明が認められるが,入学辞退が4月1日になされていることによって 大学には少なくとも平均的損害として,半年分の授業料及び施設費等の損害が生じているとして,春期授業料等の返還を否定した。入学金については「学生とし ての地位の取得の対価」であるとともに「入学の手続等の手数料又は費用である」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9620号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
4月1日より前に入学を辞退した合格者が,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
平均的損害について立証責任は消費者にあるとし,被告が平均的な損害額を4年分の授業料相当額としたのに対しては,在学契約は準委任又はこれに準ずる性質 を有する無名契約であり,ここにいう損害とは,契約が存続・継続することを想定していたため,他の収入を得る機会を失ったことなど,解除が不利な時期にさ れたことから生ずる損害に限定すべきであり,受け取るはずであった授業料の逸失をもって平均的損害ということはできないとし,また,被告が非財産的損害が 生じたとしたのに対しては,9条1項にいう「平均的損害」には非財産的損害が含まれるとは解することができないとした。そして,入学辞退が4月1日より前 であったことから,4月1日までの入学辞退による平均的な損害の発生はないから,入学金を除く春期授業料等については返還すべきであり,春期授業料等を返 還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「学生としての地位の取得の対価」であり,「入学手続及び受入準備に要 する手数料又は費用」「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.30仙台地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第343号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 髙木勝己

【事案の概要】
合格者が3月22日入学を辞退し,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学手続上の諸費用」であるとともに「入学できる地位を取得することへの対価」であるとして返還義務を否定した。
なお,平均的損害については,事業者たる被告がその情報,証拠を保有しているのであるから被告が主張,立証責任を負うとした。また,被告が4年間の学納金 全額が平均的損害になるとしたのに対し,入学辞退者が相当数あることを予測しており,定員を大きく上回る数の学生が入学している事実が認められ,事前に予 測できた範囲内の辞退者から4年間の学納金が得られなかったとしても,それは平均的損害とはいえず,原告の入学辞退が被告の予測の範囲を超えていると認め られず,むしろ定員を大きく上回る入学者がおり,平均的損害は発生しているとは認められないとした。
なお,代理徴収している後援会費等については預り金的性格であり,教育役務等の提供に密接に関連するものであるから,授業料と一体として検討されるべきものとしている。

◆ H16.03.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20640号不当利得返還請求事件
未登載
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち授業が開始される前に在学契約を解除していない者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.20名古屋地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
除籍の日の翌日から当該会計年度の末日までの期間に対応する授業料等の額をもって9条1号にいう「平均的な損害の額」と解するのが相当とし,授業料を返還 しないとの特約は同号によっても無効とならないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.22大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第2237号立替金請求控訴事件
消費者法ニュース60号156頁
裁判官 井上正明,中村哲,久保田浩史

【事案の概要】
一般市場価格として41万4000円と表示された値札を付けて陳列されていたファッションリングを29万円で購入した購入者に対し,信販会社が立替金の支払いを求めた。

【判断の内容】
一般的な小売価格は4条4項1号に掲げる重要事項に該当し,これに不実告知があったとして,購入者による売買契約の取消しを認めた。

◆ H16.04.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20659号,第26683号,平成15年(ワ)第4440号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 宇田川基,室橋秀紀,岡部純子
控訴審 H17.03.30東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
①入学金は,在学契約により取得する地位及び利益に対する対価であり,返還を求めることはできないとした。
②平均的損害の立証責任は事業者側にあるとした。
③消費者契約法施行前の契約については返還を認めなかった。
④消費者契約法施行後の在学契約につき,3月31日までの入学辞退者については授業料の返還を認めた。
⑤不返還合意は消費者契約法10条に該当しないとした。

◆ H16.05.19大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第3268号学納金返還請求控訴事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 小田耕治,山下満,下野恭裕
第1審 H15.10.06大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H16.05.20大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
原審 H15.10.28大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H16.05.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ネ)第1432号求償金請求控訴事件
判例タイムズ1153号275頁,金融法務事情1717号74頁
第1審 H16.02.05東京地裁判決
裁判官 雛形要松,山崎勉,浜秀樹

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。
事業者と「個人」との間で契約を締結したことについては消費者契約法の適用があると主張する側に主張立証責任があるが,「事業として又は事業のために契約の当事者となったこと」については,その不適用を主張する側に主張立証責任があることを前提として判断した。

◆ H16.06.04大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.06.11京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第2138号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース61号157頁
裁判官 福井美枝
控訴審 H17.01.28大阪高裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H16.06.25神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第335号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 岩谷憲一

【事案の概要】
通信機器のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,当該リース契約の締結に際し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして,リース契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
取扱店とリース会社との密接な関係を前提に,当該従業員による勧誘が「NTTの回線がアナログからデジタルに変わります。今までの電話が使えなくなりま す。この機械を取り付けるとこれまでの電話を使うことができ,しかも電話代が安くなります。」と虚偽であったことに関し,4条1項1号によるリース契約の 取消しを認めた。

◆ H13.11.29札幌簡裁判決

2001年11月29日 公開

平成13年(ハ)第5333号和解金請求事件
消費者法ニュース60号211頁
確定,欠席判決

【事案の概要】
平成11年2月に借り入れた20万円の返済についての平成13年6月にした和解契約(遅延損害金年率 26.28%)に基づく事業者からの貸金返還請求訴訟。

【判断の内容】
遅延損害金の率を9条2号により年14.6%に制限した。



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