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「2014年」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H25.04.19東京地裁判決

2014年12月14日 公開

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
ジュリスト1462号128頁,判例秘書
裁判官 三角比呂,足立堅太,高畑桂花
控訴審 H25.09.18東京高裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起した事案。スイスの裁判所を専属管轄とする国際的専属的裁判管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについて争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,本件管轄の合意について10条該当性を判断しつつ,無効とならないとして,訴えを却下した。
① 国際裁判管轄の合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である日本法であると解するのが相当であり,法例7条は適用されない。
② 原告らは一個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,被告は法人であるから,本件管轄合意は,消費者契約に該当し,10条が適用されるというべき。
③ 本件管轄合意の内容は,確かに原告らに常居所国における訴訟追行を認めないという点で,原告らに不利益を被らせるものではあるが,原告らの資力からすれば,チューリッヒで訴訟追行をすることが著しく困難で,看過し難い損害を受けるとは認められないこと,また,本件管轄合意は,その内容,成立経緯などに照らし,被告が,原告らとの間の情報や交渉力の格差を利用して,殊更原告らに一方的に不利益な内容の合意をさせたなどの事情も認められない。
④ 以上の本件における一切の事情を総合すると,本件管轄合意は,消費者契約法の趣旨に照らし,なお原告らの利益を一方的に害し,信義則上原告らと被告との間の衡平を損なう程度に原告らの保護法益を侵害するとはいえず,10条に違反しない。

◆ H26.04.24大分地裁判決

2014年12月14日 公開

平成24年(ワ)第499号違約金条項使用差止等請求事件
大分県消費者問題ネットワークHP(判決文あり,PDF)
消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 大分県消費者問題ネットワーク
事業者 北九州予備校(学校法人金澤学園)

【事案の概要】
 中途退学時の学費返還は原則として行わないとした契約条項が9条1号により無効となる等として,大学受験予備校に対し当該条項の差し止めを求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から,当該条項の使用の差し止めを命じた。
① 当該予備校では,年度途中の入学を予定しており,現に途中で入学する者もいて,その際の入学試験もない。
② 当該予備校では,定員に達していない校舎も,定員に達した校舎も,定員数に縛られることなく新入生を受け入れている。
③ したがって,一人の希望者との間で在学契約を締結したために別の一人の希望者との在学契約締結の機会が失われたといった関係はおよそ認められない。
④ そうすると,いったん在学契約を締結した者が後にこれを解除した場合,これによりいくらかの損害を受けることはあり得るとしても,中と入学者を受け入れること,その他の対策を講じることは十分に可能であり,少なくとも,本件不返還条項が定めるような,当該消費者が納付した解除後の期間(いまだ役務を提供していない機関)に対応する授業料の全額について,一般的客観的に損害を被ることにはならないというべき。

◆ H26.08.07京都地裁判決

2014年12月14日 公開

平成23年(ワ)第3425号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
ウエストロー・ジャパン,京都消費者契約ネットワークHP(判決あり,PDF)消費者庁HP(PDF)
裁判官 栂村明剛,武田美和子,阿波野右起
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社Plan・Do・See

【事案の概要】
 婚礼及び披露宴に関する企画及び運営等を業とする会社に対し、結婚式場のキャンセル料を定める条項が9条1号により無効となるとして,キャンセル料条項の使用差止め及び同条項が記載された契約書用紙の破棄を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から,原告の請求を棄却した。
① 本件申込金の不返還条項は9条1号の対象となる。
② 「平均的損害」には,逸失利益が含まれる。
③ 90日前以前に解除されたとしても,逸失利益は生じ,その後の再販売により代替的な利益を確保できたとしてもそれは損益相殺の問題。
④ 本件平均的損害は,以下の計算式により算定するのが相当。
  本件平均的損害=本件逸失利益ー損益相殺すべき利益
   =(解除時見積額の平均×粗利率)ー(解除時見積額の平均×粗利率×再販率)
   =解除時見積額の平均×粗利率×(1ー再販率)
   =解除時見積額の平均×粗利率×非販売率
  これによると,本件キャンセル料は,損益相殺後の本件逸失利益を下回っている。したがって,平均的損害額を超えない。

◆ H19.07.25東京地裁判決

2014年4月2日 公開

平成18年(ワ)21381号,25722号報酬金請求事件、着手金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 笠井勝彦

【事案の概要】
 税理士である原告に相続した遺産の相続対策業務を委任した後、業務遂行に不信感を抱いて契約を解除した被告に対し、原告が契約に基づく報酬を請求したところ(第1事件)、被告が原告に契約解除に基づく原状回復請求として着手金の返還を求めた事案(第2事件)。被告が,被告の事情により,委任業務の着手前に本件契約を解除したときは既払報酬の返還を請求せず,着手後に解除したときは原告の請求した報酬全額を支払うとの条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 原告からの報酬請求について,原告が行った業務遂行の内容等は安直で契約の主目的・内容に沿うものではない上、契約上の報酬金の定めも民法648条3項より消費者の義務を加重するもので、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するから10条により無効であるとして,報酬請求を棄却した。

◆ H18.01.31東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成16年(ワ)第14344号学納金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 石井浩、間部泰、川原田貴弘

【事案の概要】
 被告が設置する大学に合格し、入学金や授業料等を納入した後、他大学への合格を理由に入学を辞退した原告が、不当利得返還請求権に基づき、被告に対し、入学時納入金の返還等を求めた事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の立証責任は消費者が負うが,平均的な損害に関する情報及び証拠の多くは事業者側にあるものと認められるところ、消費者と事業者との間の情報の質及び量の格差を是正し、消費者の利益を擁護することを目的とする消費者契約法の趣旨にかんがみれば、平均的な損害の額を超えることが一応の合理的理由に基づいて認められた場合には、事業者において必要な反証がされない限り、消費者の立証責任は尽くされたものとして、立証された金額が平均的な損害の額であると事実上推定されると解するのが相当。
② 入学金は大学に入学し得る地位を取得することなどの対価であり、大学はその返還をすることを要しない。
③ 授業料・教育充実費については,入学予定者の入学辞退により何らかの平均的損害はないものと認めるのが相当であるから、授業料及び教育充実費を返還することを要しない旨の合意は9条1号により無効であり、被告大学はこれを返還することを要する。

◆ H18.05.25東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成17年(ワ)第16768号入学金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 松本明敏

【事案の概要】
 原告が、被告設置の大学の入学試験に合格し、入学時納付金として入学金及び授業料その他の費用を納付した後、入学を辞退したことにより在学契約は解除されたとして、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、未返還の学納金及びその遅延損害金の支払を求めた事案。

【判断の内容】
① 入学金は、入学し得る地位または学生たる地位取得の対価であり、入学事務手続の手数料としての性格を併せ有する。被告に対し入学金を納付したことにより、被告の原告に対する入学事務手続が履践されて本件在学契約を成立させることができ、本件大学に入学し得る地位を取得したのであるから、原告としては、納入した入学金の対価的利益を享受したのであり、原告から納付された入学金を取得することについて、被告に法律上の原因があるというべき。
② 授業料については,本件不返還特約は9条1号により無効であり,返還すべき。

◆ H19.01.29東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成18年(ワ)11115号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 永野厚郎

【事案の概要】
 被告から未公開株式を購入した際に、被告従業員から株式が上場されることにより値上がりすることは間違いないとの断定的判断の提供を受けたとして、4条1項1号及び2号に基づく売買契約の取消しと代金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 被告による断定的判断の提供があったとして,4条1項2号により売買契約の取消を認め,代金の返還を命じた。

◆ H17.03.15東京地裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ワ)第13205号貸金請求本訴,不当利得返還等請求反訴事件
判例時報1913号91頁,ウエストロー・ジャパン
裁判官 工藤正

【事案の概要】
 特定の法律事務所の弁護士らが主体となり、報酬を得る目的で、業として、債務整理を受任した依頼者のうちから大手消費者金融業者甲に対して不当利得返還請求権を有している不特定多数の者から甲に対して貸金債務を負担している不特定多数の者に同請求権を譲渡させ、これらの権利実現を訴訟等の手段を用いて実行している場合において、このような債権譲渡は、公序良俗に反し無効であるとされた事例。
 金銭消費貸借契約の債務不履行に基づく返済債務に関する債務弁済契約における賠償額の予定の定めには、利息制限法4条が適用されるか、消費者契約法9条2号が適用されるかが争われた。

【判断の内容】
 11条2項は、「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しているところ、利息制限法が、消費貸借契約の場合における相当な利得の利率及び遅延損害金の割合の上限を定めることを目的としていることに鑑み、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」については、利息制限法の規定が優先して適用されるものと解するのが相当である。そして、このことは、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」についての和解契約についても同様であると解するのが相当である。

◆ H17.04.22大阪高裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ネ)第1083号学納金返還請求控訴事件
民集60巻9号3698頁,ウエストロー・ジャパン
上告審 H18.11.27最高裁判決(5)

【事案の概要】
 学納金返還請求。①在学契約及び学納金の法的性格,入学辞退の法的効果,②在学契約に消費者契約法が一般的に適用されるか,③本件特約が9条1号により無効となるか,本件特約が10条により無効となるか,等が争われた。入学手続要綱等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものと見なす」などの記載があった。

【判断の内容】
① 学生からの在学契約解消については民法651条の類推適用を認め,同条1項により,いつでも在学契約を将来に向かって解除することができるものと解するのが相当であり,学生からの入学辞退の意思表示はこの在学契約解除の意思表示と理解するのが相当。
② 授業料等の不返還を定める部分は,9条1号に当たる。
③ 平均的損害の額の立証責任は,消費者が負う。
④ 3月31日までに在学契約を解除した場合,授業料部分は平均的な損害を超えるものとなる。
⑤ 4月1日以降に在学契約を解除した場合,学部・学科の授業内容,定員数,発生すると考えられる損害の内容,等の事情を考慮し,大学,各部,学科ごとに,20万円から30万円の範囲で平均的損害を算定した。
⑥ 本件特約には10条は適用されない。

◆ H15.11.26東京地裁判決

2014年3月15日 公開

平成14年(ワ)第27108号契約金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 遠山廣直

【事案の概要】
 被告らとの間で国際結婚仲介契約を締結したとするコンサルタント会社(原告)が、中国人女性を紹介したにもかかわらず、被告らが中国への渡航を中止したとして、違約金等の支払を求めた事案。損害賠償額の予定が9条により無効となるか,契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨、及び提出されたパスポートは一切返却しない旨の定めが10条により無効となるか等が争われた。

【判断の内容】
① 契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨の条項は,本来意思表示をもって足りる解約の意思表示について消費者である被告の利益を害する条項というべきであり,10条により無効となる。
② 提出されたパスポートは一切返却しない旨の条項は,消費者の海外渡航の自由を制限するものであって10条により無効というべきである。
③ 10条により当該条項が無効となるとしても,本件契約全体が無効ということは出来ない。

◆ H16.03.25山口簡裁判決

2014年3月15日 公開

平成15年(ハ)第406号,第411号貸金等請求事件,不当利得返還請求事件
消費者法ニュース60号109頁,兵庫県弁護士会HP
裁判官 德丸哲夫

【事案の概要】
 貸金業者である原告が、原告と訴外Aとの間の金銭消費貸借契約の連帯保証人である被告に対し、貸金残金等の支払を求めた(甲事件)のに対し、被告が、過払金が生じているとして、原告に対し、不当利得返還請求権に基づき過払金等の支払を求めた(乙事件)事案。約定利息の支払を遅滞することにより、当然に期限の利益を失う旨の条項と支払いの任意性について争われた。

【判断の内容】
 貸金業規制法43条の適用要件については厳格に解釈すべきこととあわせ,消費者契約法の消費者保護の精神を総合的に考慮すれば,契約証書等の内容については,債務者に弁済を強要することになるようなあいまいな表現を避けて,明確な記述をし,債務者に不利益を与えないようにすべきであると判示して,貸金業者の主張を排斥し,みなし弁済の適用を否定した。

◆ H25.09.18東京高裁判決

2014年3月12日 公開

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
判例秘書
裁判官 下田文男,橋本英史,脇由紀
第1審 H25.04.19東京地裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起したところ,スイスの裁判所を専属管轄とする合意があるとして訴えを却下されたことに対する控訴審。この管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについても争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,被控訴人の消費者契約法10条が適用される余地はないとの主張を排斥し,10条該当性を判断した(なお,本件については無効とはならないとした)。
① 本件各申込書には,本件各口座開設契約の準拠法をスイス連邦法とする旨の条項があるが,国際的専属的裁判管轄合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である我が国の国際民事訴訟法であると解される。被控訴人が主張するように法例7条を適用し,あるいは類推適用してスイス連邦法が準拠法となると解するのは相当でない。
② 国際的専属的裁判管轄合意の効力は,我が国の国際民事訴訟法の見地から,公序法違反の有無のほかに,契約(意思表示)の効力に関する我が国の民法その他の成文法の規定の趣旨(法意)を参酌して判断される場合がある。
③ 控訴人らは個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,一方,被控訴人は法人であるから,両者の間に成立した本件管轄合意の効力について,消費者契約法10条の規定の趣旨を参酌して判断する余地があるというべきであって(同法1条,2条1項ないし3項参照),同法10条の適用が問題となることはない旨の被控訴人の主張は,採用することができない。

◆ H25.08.26東京地裁判決

2014年3月12日 公開

平成23年(ワ)第4089号預託金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 亀村恵子、坂本雅史、吉田徹

【事案の概要】
 証券会社から仕組債を購入した顧客が,当該契約について瑕疵があると主張して預託金の返還や損害賠償を請求した事案。不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供の有無が争点の1つとなった。

【判断の内容】
 不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供について,以下の理由からこれを否定した。
① (仕組債の組成に要する費用や被告が仕組債を販売することによって得る利益が4条1項にいう「重要事項」に該当するか否かについて)
 本件各仕組債は,日経平均株価の変動に従って損益が確定する金融商品であり,適用利率決定の条件や早期償還の条件,満期償還金額の計算式等を理解すれば本件各仕組債のリスクとリターンの具体的な内容を知ることができ,投資の適否の判断に必要な情報は与えられているといえるのであって,本件各仕組債の組成に要した費用や被告がその販売により得る利益の額を知らなければ,本件各仕組債のリスクとリターンとが見合っているかを判断することができないとはいえない。本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的内容は,将来日経平均株価がどのように推移するかという点に左右されるのであって,これは個々の投資家が現在・将来の経済情勢に関する認識・見通し,各々の相場観に基づいて判断すべき事項であり,一般的な投資判断と異なるところはなく,殊更困難な予測・判断を要求されるものではない。
 確かに,抽象的には,本件各仕組債の組成に要する費用その他発行体及び販売者側に生じた費用が投資家に転嫁されることによって,投資家が得る利得がその分だけ減少しているものと考えられるが,そこで生じた費用の額を知ったからといって,本件各仕組債のリスクとリターンに関する投資判断に直ちに影響が及ぶことになるともいえない(換言すれば,その費用にかかわらず,将来の日経平均株価に関する見通しと本件各仕組債の発行条件とを照らし合わせることで,本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的な内容について認識・予測することができ,本件各仕組債のリスクとリターンに関する一応の投資判断は可能なものといえる。)。
 したがって,仕組債の組成に要する費用や金融商品取引業者が仕組債を販売することによって得る利益の存否やその多寡が,一般投資家が当該仕組債を購入するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものということはできず,法4条にいう重要事項に当たるとはいえない。
② (不利益事実の不告知について)被告が本件各仕組債の販売により利益を得ている旨やその組成に費用を要したことを告知しなかったとしても,通常の投資家が,被告が本件各仕組債の販売によって利益を得ておらず,その組成に費用を要しなかったと考えるとはいえない。
③ (断定的判断の提供について)販売担当者の説明によって,原告が将来にわたり日経平均株価が60パーセントまで低下することは確実にないと誤信したものと認めることはできない。

◆ H24.09.12東京地裁判決

2014年2月15日 公開

平成23年(ワ)第19923号保険金請求事件
判例タイムズ1387号336頁
裁判官 畠山稔,高瀬保守,瀬戸信吉

【事案の概要】
 生命保険契約に基づく保険金請求事件。保険契約者が払込期月までに保険料を支払わず,その後1か月の猶予期間内に保険料の払込がないときは,本件保険契約が履行の催告を要することなく効力を失う旨の条項(無催告失効条項)が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,10条により無効とはならないとして,請求を棄却した。
① 民法541条の定める履行の催告は,債務者に債務不履行があったことを気付かせ,契約が解除される前に履行の機会を与える機能を有する。無催告失効条項は,保険料の支払を遅滞した場合に直ちに保険契約が失効するものではなく,民法541条により求められる催告期間よりも長い1か月以内に債務不履行状態が解消されない場合に初めて失効する旨を明確に定めている。
② 保険会社は,契約締結時に,保険料の支払状況を把握するシステムを構築し,保険契約者が保険料を予定どおりに支払わない場合には,原則として未入通知を送付する態勢を整えるとともに,全国的に多数の支社及び営業オフィスを有し,営業職員が保険契約者に対して電話,訪問等の方法で注意喚起を行う態勢を整えており,実際に原告に対して未入通知の送付や営業職員による注意喚起が行われており,上記態勢に沿った運用が確実に行われていた。
③ 以上によれば,無催告失効条項は10条にいう「信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しない。

◆ H25.07.03大阪地裁判決

2014年2月15日 公開

平成24年(レ)第1005号不当利得返還請求控訴事件
消費者法ニュース97号348頁
裁判官 黒野功久、浦上薫史、札本智広
第1審 東大阪簡裁平成24年(ハ)第521号

【事案の概要】
 消費者が、飼い犬を亡くなるまで施設に預けるという契約をしたが、その約1カ月後に当該契約を解約して費用の返還を求めたところ、契約書に「契約後の返金はできません」との不返還条項があることを根拠に返還を拒んだ事例。不返還条項が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,9条1号により無効となるとして,請求を認めた。
① 本件不返還条項は,本件終身預かり契約解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めに当たる。
② 平均的損害の主張立証責任は消費者側にある。
③ 本件代金の算定は,犬の大きさ,年齢,健康状態が考慮され,余命から預かる期間を想定していたところ,期間満了前に代金を返還する場合,利潤の一部を失ったり,解除の有無にかかわらず支出を避けられない経費の財源を失うことにはなるが,他方,えさ代等の支出を免れるし,新たな取引も十分可能。
④ この他,本件契約の他の定めを考慮すれば,本件代金の一部については平均的損害の額を超えるものと認められ,この範囲で本件不返還条項は無効。

◆ H25.10.17大阪高裁判決

2014年2月15日 公開

平成24年(ネ)第3565号,平成25年(ネ)第590号契約解除意思表示差止等請求控訴,同附帯控訴事件
消費者法ニュース98条283頁,消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF,消費者支援機構関西)
裁判官 河邉義典,大澤晃,山下寛
第1審 大阪地裁平成23年(ワ)第13904号
適格消費者団体 消費者支援機構関西

【事案の概要】
 適格消費者団体が、不動産賃貸業者に対し、①破産、後見開始、保佐開始等を理由とする解除権を賃貸人に付与する条項、②契約終了後の明渡しの履行遅滞による損害として家賃2か月分に相当する賠償額を予定する条項、③滞納家賃を督促する手数料を賃借人が1回あたり3,150円支払う条項、④自然損耗を超える汚損の有無にかかわらず賃借物件の補修費用(面積に応じた一定額)を賃借人に負担させる条項などが、9条各号又は10条に該当するとして、同契約書による意思表示の差止め、契約書用紙の廃棄等を求めた事案の控訴審。
 第1審では,①のうち賃借人に対する後見開始又は保佐開始の審判や申立てがあったときに直ちに契約を解除できる旨の条項に係る部分についてのみ10条に該当するとして差止め等を認めたが、その余を棄却していた。

【判断の内容】
 以下の理由から,①の賃借人が破産等の決定又は申立てを受けた場合に解除を認める部分についても10条により無効であるとして差止請求を認めるという内容に変更したが、その余は差止等を認めなかった。
① 破産等の決定又は申立てを受けたことは,一般的には賃借人の経済的破綻を徴表する事由であるが、賃借人の賃料債務の不履行の有無や程度は個別事案によって異なるものであり、上記事由が発生したからといって直ちに賃貸借契約から発生する義務違反があり信頼関係が破壊されていると評価するのは、相当ではない。
② 賃貸人は、特約において解除事由としている一定の要件を満たせば、催告の上、
本契約を解除できるのであるから、本件解除条項が無効とされた場合に賃貸人が被る不利益も、本件解除条項が有効とされた場合に賃借人が被る不利益に比して、大きいものとはいえない。
③ 後見・保佐について、後見開始や保佐開始の審判がされれば、成年後見人や保佐人が付され、同人らによって財産管理がされ、近隣紛争の解決が期待できるから、成年被後見人、被保佐人の宣告や申立てを受けたことは、賃貸借契約の信頼関係破壊の徴表に当たるとはいえない。
④ ②については、10条前段に該当するが、原審での理由に加えて、賃貸人の損害の填補や賃借人の明渡義務の履行を促すという観点に照らし、あらかじめ賃料以上の一定の額を損害賠償額の予定として定めることは、合理性を有しており、賃料の2倍という額は、高額過ぎるとまではいえない。
⑤ ③については、10条前段に該当するが、原審での理由に加えて、賃貸人は、単に普通郵便で催告するのみでなく、内容証明郵便を送ったり、場合によっては、現地に従業員を赴かせて直接督促したりするなど相応の費用を要することが少なくないこと、実際に要した費用が定められた金額を超える場合でも賃借人は定められた金額を支払えば足りるという点では賃借人に有利な面もあること等から、同条後段には該当しない。
⑥ ④については、10条前段に該当するが、原審での理由等から同条後段には該当しない。



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